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「コロナ禍にも悲観せず」笑いと自虐の『シルバー川柳』、前向きさ失わない高齢者の強さ

川柳に秘められた夫婦のドラマ、「生きていたら、給付金も管理してくれたんだろうなぁ」

  • 『シルバー川柳』入選作(ポプラ社)

    『シルバー川柳』入選作(ポプラ社)

 確かに入選作を見ると、コロナ禍という未曽有の事態をテーマにしながらも、それを笑いや自虐に変え、逞しく乗り越える高齢者たちの様子が伺える。『要請を される前から 日々休み』(福井県・55歳男性)、『円満の 秘訣ソーシャル ディスタンス』(北海道・77歳男性)など、なんとも秀逸な作品ばかりだ。そして、一見クスッと笑えてしまうような句に、じつは秘められたドラマがあるのも、『シルバー川柳』の特徴であるという。単行本を担当するポプラ社の浅井四葉さんは、川柳の背景をこう明かす。

 「『ばあさんの 手作りマスク 息できず』はとても人気の高かった句なんですが、作者の方は『裁縫好きな奥さんが作ってくれたんだけど、生地が厚すぎて呼吸が苦しい。これを付けてると、逆にヤバいかも』とお話しされていて。奥様はご主人のことを心配して頑丈なマスクを作り、ご主人はぶつぶつ言いながらも使っている。結局仲良しなんだなというのが、すごく愛らしくてステキだなと思いました。『武勇伝 俺の話は 無観客』は、毎年応募してきてくださる50代女性からの投稿。島根にある絵画教室での一コマだそうです。『教室に来ているおじいちゃんが、それぞれ武勇伝を話しているんですが、誰も聞いてないんです』と。あちこちで、無観客状態で武勇伝が語られているというのを想像したら、いっそう面白く感じました」(浅井さん)

 そして、中にはホロリとくるような裏話を聞くこともあるそう。

 「『妻が言う ひとまず預かる 給付金』(大阪府・70歳男性)という句。じつは作者の方の奥様は、去年お亡くなりになったそうなんです。『自分がサラリーマンだったとき、給料も奥さんに全部任せていたから。生きていたら、給付金も管理してくれたんだろうなぁと思いながら詠んだ』と、教えてくださいました。川柳を始めたのも、闘病中だった奥様に聞かせるためだったそうです。聞いてみないとわからないドラマが裏側にあるんだなと、毎年実感します」

 楽しく笑える言葉の中に、その人の生き方や日常のわびさびまでもが潜んでいる。それこそが、『シルバー川柳』の醍醐味なのかもしれない。

記念すべき20回目、シルバー世代の“芯の強さ”表す

 そんな『シルバー川柳』も、今回で記念すべき20回目を迎えた。コロナ禍という状況下で、はからずもシルバー世代の“芯の強さ”が表れた、真骨頂ともいえる内容となった。

 「当初はこんなに続くとは思っていなかったんです。題材や言葉の制限はなく、とにかく楽しんでもらうことを目的にやってきました。今回のコロナもそうですが、世相が詠まれているぶん、過去の作品を振り返ると時代背景も見えてくるのではないでしょうか。高齢者の方はインターネットやSNSで繋がることも少ないと思いますし、川柳を詠むことで共感を得たり、人と繋がっていることを感じてほしいと思います。若い世代の方々にも、ぜひ楽しんでいただきたいですね」(古川さん)

 コロナ感染防止のための制約が続くなか、世代を問わず、不便や不安を感じる人も多いだろう。そんなときこそ、壁を乗り越える強さや笑い飛ばす前向きさに満ちた『シルバー川柳』から、生き方のヒントを見つけてみるのもいいだろう。

(文:川上きくえ)

『シルバー川柳10 スクワット しゃがんだままで 立てません』

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