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若月佑美の「心の教科書」 三度の飯より愛する『キングダム』から教わったこと

『キングダム』で印象に残る言葉は? まさかの『東京喰種』に……

――2020年7月現在、単行本が58巻まで出ていますが、「この巻のここが好き」というのを挙げるならどこでしょうか?
若月佑美うわぁ〜悩む(笑)。やっぱり16巻の王騎の“最期”かな。信と王騎の関係よりも、副官である騰がグッと耐えるように拳を握っていて、その手に血がにじんでいるところに胸が詰まりました……。あの一瞬でわかるいろんな思いがありますよね。一番近くにいたからこそ一番悲しいのに、泣いたりせずにいつもの涼しい顔のままでいて……。あそこはすごくカッコいいなと思いました。

――あの名場面、信と王騎の関係性にわしづかみにされた人は多いと思いますが、騰目線で見ているとは。
若月佑美いやもう、ここでガッツリ騰につかまれました。“ファルファル”(相手を斬る際の、騰独特の効果音)だけじゃないって(笑)。

以前、原先生が騰特有の武器を使うときの擬音を「ファルファル」にした理由について、「クルクルでもヒュンヒュンでもなくて、ただファルファルがしっくりきた」と答えていて。言われてみれば(刀を振り回せば)ファンともいうし、回しているからクルでもあるし。だからファルなんだなって納得しました(笑)。

――あの独特の「ファルファル」じゃなかったら、もしかしたら騰はここまで人気が出なかった可能性もありそうですよね。
若月佑美そう思います。ちょっと面白キャラだけど戦うときはめっちゃ強い。そんなギャップがいい! 大好きです。独特な音表現に最初は「なんで?」と思うけど、だからこそ(記憶に)残っているし、笑えちゃうというのもありますよね。
――なるほど。ところで『キングダム』では、王騎もふくめて人気キャラもバタバタと戦に倒れていきますが、推しキャラが途中で“撤退”しちゃうと切ないですよね……。
若月佑美そうなんですよ。私は16巻でもう……(涙)。「早っ!」って思いました(笑)。なので今は騰を中心に追いかけていて、出てくるとうれしいんです。

――名場面には名ゼリフも欠かせないもの。若月さんが特に印象に残っているセリフはありますか?
若月佑美いろんな人がよく『信は死なない』と言うのですが、その言葉に、読んでいる側としても救われますね。信は戦でもギリギリのラインを攻める性格だけど、同じ隊の尾平(びへい)などが言う『俺らの大将は絶対に死なない』という言葉が毎回グッときます。すごく好きな言葉ですね。

――そういう響き方、選び方も素敵ですね。
若月佑美あと『キングダム』内の言葉ではないんですが、ある理由でめちゃくちゃ好きなものがあって。『東京喰種』最終巻のあとがきで、作者の石田スイ先生が王騎を描いていて、原先生のことを「でかすぎる壁だった」と言っているんです。「深っ!」と思いました。
――なるほど! 石田スイ先生は、原泰久先生の元アシスタントであり、原先生を「師匠」と仰いでいるそうですよね。
若月佑美はい。「でかすぎる壁」と言われている原先生もすごいし、もちろん、敬いながら追いかけている石田先生もすごい。そのページにすごく感動しちゃって、写真を撮ってスマホの待受にしていました。

――そういうことですか。それで今日、『東京喰種』の単行本を持ってこられていたのですね。推測ですが、描いたキャラクターがメインキャラクターの政や信ではなく、王騎というのも、「偉大な先達を超えていこう」という石田先生の思いが見え隠れして、グッときますね。
若月佑美そうなんです。先に『東京喰種』から入って、2人の先生の関係性を知ってカッコいいなと思いました。

マンガは“ジャケ買い”! 『キングダム』以外の注目作品

――若月さんは『キングダム』など少年・青年マンガだけじゃなく、少女マンガも大好きとのことですが、気分に合わせて読み分けているのでしょうか?
若月佑美全然! 『キングダム』の後に少女マンガを読むことも普通にあります。本屋にふらっと行って「これ面白そう」とマンガを“ジャケ買い”しちゃうこともあります。
  • 板垣巴留『BEASTARS』1巻、秋田書店、2017年

    板垣巴留『BEASTARS』1巻、秋田書店、2017年

――ジャケ買いの際の選定ポイントは、タイトル、絵のタッチ、帯のキャッチコピーなど、どのあたりですか?
若月佑美関係性ですね。いわゆる女子高生と先生みたいな。最近はいろんなパターンがあって「そことそこ?」というのもありますが(笑)、表紙で見て「この組み合わせでいくのか」とか「現実だったら無理……」と考えるのも面白いです。

『BEASTARS(ビースターズ)』(板垣巴留/秋田書店)も好きで、最初は「えっ、動物を擬人化!?」とびっくりしましたが、読んでみたらめちゃめちゃ深い。

――肉食と草食の動物がそれぞれ擬人化され共存する世界で、全寮制の学校を舞台に繰り広げられる青春群像劇ですよね。
若月佑美展開も予想外だし、出てくるキャラクターも意外性があり、陸だけじゃなくて、海の動物も絡んできて面白い。この作品もジャケ買いで、「不思議だな」と手に取ったのがはじまりです。

――ジャンルにこだわらずいろいろな作品を読まれるようですが、特に好きなジャンルを挙げるとすれば何でしょう?
若月佑美最近は、史実に基づいている作品など、想像で「わからないこと」のすき間を埋めていく系の作品が好き。『キングダム』もそういう要素はありますが、『ゴールデンカムイ』(野田サトル/集英社)も、アイヌの歴史に基づいたリアルな面と、ファンタジー面の両方があるのが面白くて読んでいます。リアルとファンタジーの狭間をいく作品は、勉強にもなるし、読んでいて面白い。
  • 野田サトル『ゴールデンカムイ』1巻、集英社、2015年

    野田サトル『ゴールデンカムイ』1巻、集英社、2015年

さらにギャグ要素もあるとうれしいかも。子どものころ、初めて読んだマンガが『世紀末リーダー伝たけし!』(島袋光年/集英社)なんです。お兄ちゃんがいるので、その影響ですね。『たけし』から入ったので、ギャグ要素がある作品が好きなんです。『キングダム』巻末のおまけマンガもそうですし、『ゴールデンカムイ』もギャグ要素が強いので好きですね。

――『たけし』は意外でした。マンガのギャグ要素をどのくらい受け入れられるかは、幼少期にどんな作品を読んだかで変わるかもしれません。
若月佑美大きいですね。ただ私は純粋なギャグマンガというよりも、ストーリーもので、作中にちょっとふざけたり抜けている場面がある作品が好きです。



――ほかに、最近ハマっているマンガがあれば教えてください。
若月佑美少女マンガなら『コレットは死ぬことにした』(幸村アルト/白泉社)が面白いです。女性キャラクターがヒロインというと、基本“ドジっ子”だったり、恋に一直線すぎるヒロインの物語が多いけど、『コレット』は主人公がしっかりしている。人の悩みにも寄り添えるし、薬師という仕事で人を助ける側なので、それがすごく新鮮です。自分的には読んでいてそっちの方が安心できますね。
  • 幸村アルト『コレットは死ぬことにした』1巻、白泉社、2014年

    幸村アルト『コレットは死ぬことにした』1巻、白泉社、2014年

――エッジの効いたタイトルですね。マンガもいろんなテーマのものが出てきているし、細分化していく上では少女マンガというくくり方は古いのかもしれないですね。
若月佑美はい、少女マンガっぽくない感じもいいなと思います。冥府と現世を行き来する話で、1話目の展開からすごいし、新しい。

少女マンガと少年・青年マンガのくくりでいうと、確かにどちらかわからないような作品も多くて、例えば『宝石の国』(市川春子/講談社)。これも少年マンガと言うには美しすぎるし、でも少女マンガと言うには恋愛要素があまりないという、不思議な作品です。出版社名などを確認して、「あ、これ少女マンガに入るんだ」と意外に感じることもあります(笑)。

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