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若月佑美の「心の教科書」 三度の飯より愛する『キングダム』から教わったこと
『キングダム』で印象に残る言葉は? まさかの『東京喰種』に……
若月佑美うわぁ〜悩む(笑)。やっぱり16巻の王騎の“最期”かな。信と王騎の関係よりも、副官である騰がグッと耐えるように拳を握っていて、その手に血がにじんでいるところに胸が詰まりました……。あの一瞬でわかるいろんな思いがありますよね。一番近くにいたからこそ一番悲しいのに、泣いたりせずにいつもの涼しい顔のままでいて……。あそこはすごくカッコいいなと思いました。
――あの名場面、信と王騎の関係性にわしづかみにされた人は多いと思いますが、騰目線で見ているとは。
若月佑美いやもう、ここでガッツリ騰につかまれました。“ファルファル”(相手を斬る際の、騰独特の効果音)だけじゃないって(笑)。
以前、原先生が騰特有の武器を使うときの擬音を「ファルファル」にした理由について、「クルクルでもヒュンヒュンでもなくて、ただファルファルがしっくりきた」と答えていて。言われてみれば(刀を振り回せば)ファンともいうし、回しているからクルでもあるし。だからファルなんだなって納得しました(笑)。
若月佑美そう思います。ちょっと面白キャラだけど戦うときはめっちゃ強い。そんなギャップがいい! 大好きです。独特な音表現に最初は「なんで?」と思うけど、だからこそ(記憶に)残っているし、笑えちゃうというのもありますよね。
若月佑美そうなんですよ。私は16巻でもう……(涙)。「早っ!」って思いました(笑)。なので今は騰を中心に追いかけていて、出てくるとうれしいんです。
――名場面には名ゼリフも欠かせないもの。若月さんが特に印象に残っているセリフはありますか?
若月佑美いろんな人がよく『信は死なない』と言うのですが、その言葉に、読んでいる側としても救われますね。信は戦でもギリギリのラインを攻める性格だけど、同じ隊の尾平(びへい)などが言う『俺らの大将は絶対に死なない』という言葉が毎回グッときます。すごく好きな言葉ですね。
若月佑美あと『キングダム』内の言葉ではないんですが、ある理由でめちゃくちゃ好きなものがあって。『東京喰種』最終巻のあとがきで、作者の石田スイ先生が王騎を描いていて、原先生のことを「でかすぎる壁だった」と言っているんです。「深っ!」と思いました。
若月佑美はい。「でかすぎる壁」と言われている原先生もすごいし、もちろん、敬いながら追いかけている石田先生もすごい。そのページにすごく感動しちゃって、写真を撮ってスマホの待受にしていました。
――そういうことですか。それで今日、『東京喰種』の単行本を持ってこられていたのですね。推測ですが、描いたキャラクターがメインキャラクターの政や信ではなく、王騎というのも、「偉大な先達を超えていこう」という石田先生の思いが見え隠れして、グッときますね。
若月佑美そうなんです。先に『東京喰種』から入って、2人の先生の関係性を知ってカッコいいなと思いました。
マンガは“ジャケ買い”! 『キングダム』以外の注目作品
若月佑美全然! 『キングダム』の後に少女マンガを読むことも普通にあります。本屋にふらっと行って「これ面白そう」とマンガを“ジャケ買い”しちゃうこともあります。
若月佑美関係性ですね。いわゆる女子高生と先生みたいな。最近はいろんなパターンがあって「そことそこ?」というのもありますが(笑)、表紙で見て「この組み合わせでいくのか」とか「現実だったら無理……」と考えるのも面白いです。
『BEASTARS(ビースターズ)』(板垣巴留/秋田書店)も好きで、最初は「えっ、動物を擬人化!?」とびっくりしましたが、読んでみたらめちゃめちゃ深い。
――肉食と草食の動物がそれぞれ擬人化され共存する世界で、全寮制の学校を舞台に繰り広げられる青春群像劇ですよね。
若月佑美展開も予想外だし、出てくるキャラクターも意外性があり、陸だけじゃなくて、海の動物も絡んできて面白い。この作品もジャケ買いで、「不思議だな」と手に取ったのがはじまりです。
若月佑美最近は、史実に基づいている作品など、想像で「わからないこと」のすき間を埋めていく系の作品が好き。『キングダム』もそういう要素はありますが、『ゴールデンカムイ』(野田サトル/集英社)も、アイヌの歴史に基づいたリアルな面と、ファンタジー面の両方があるのが面白くて読んでいます。リアルとファンタジーの狭間をいく作品は、勉強にもなるし、読んでいて面白い。
――『たけし』は意外でした。マンガのギャグ要素をどのくらい受け入れられるかは、幼少期にどんな作品を読んだかで変わるかもしれません。
若月佑美大きいですね。ただ私は純粋なギャグマンガというよりも、ストーリーもので、作中にちょっとふざけたり抜けている場面がある作品が好きです。
若月佑美少女マンガなら『コレットは死ぬことにした』(幸村アルト/白泉社)が面白いです。女性キャラクターがヒロインというと、基本“ドジっ子”だったり、恋に一直線すぎるヒロインの物語が多いけど、『コレット』は主人公がしっかりしている。人の悩みにも寄り添えるし、薬師という仕事で人を助ける側なので、それがすごく新鮮です。自分的には読んでいてそっちの方が安心できますね。
若月佑美はい、少女マンガっぽくない感じもいいなと思います。冥府と現世を行き来する話で、1話目の展開からすごいし、新しい。
少女マンガと少年・青年マンガのくくりでいうと、確かにどちらかわからないような作品も多くて、例えば『宝石の国』(市川春子/講談社)。これも少年マンガと言うには美しすぎるし、でも少女マンガと言うには恋愛要素があまりないという、不思議な作品です。出版社名などを確認して、「あ、これ少女マンガに入るんだ」と意外に感じることもあります(笑)。