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「芸能界にパワハラは通用しない」は本当か? 芸能人同士のハラスメントの実情とは

水面下でハラスメントを受けても、問題が表に出てこない理由

 つまり、パワハラと認定されるには、それが日常的な行為であるかどうかが一つの判断基準となる。それには、番組等で表に出てこない、水面下での人間関係が重要だ。水面下でのパワハラが明るみに出た例といえば、TKO・木下隆行の件が記憶に新しい。「クロちゃんの顔面踏みつけ」「後輩に自身のブランドの服を押し売り」などのパワハラを木下は事実と認めたが、こういった問題が表に出てくること自体、芸能界では稀だ。

 「実際、これまで私のもとにも、芸能人同士のパワハラ相談はありません。なぜこれらが問題化することが少ないか、表に出てこないかというと、それは『目的を達成できないから』だと思われます。ハラスメントを主張する際、当人には『適切な職場環境で働きたい』という思いがあります。でも芸能界の場合、パワハラを訴えると『使いづらい』と評価され、仕事がなくなる恐れすら出てくる。また、発言力が強いタレントや事務所が、懇意にしている媒体を通じて自分たちに有利な記事を出し、その論調に負けてしまう場合もある。さらに、もし裁判をするならば、タレントにとって大切な“イメージ”が低下してしまう。本末転倒になるため、当人が所属する事務所としても、パワハラを訴えることを避けたいという意向が強いのです」

 つまりハラスメントに関して、芸能界はいまだ透明性が低いということだ。

師弟関係の変化も…問題を昇華する新たな笑いの誕生

 とはいえ、前述の例を見てもわかる通り、報道や被害を受けた後輩側の声により、少しずつ問題が明るみになることも増えてきた。昨年9月、梅沢富美男による「芸能界にパワハラは通用しない」との発言が物議を醸したが(『梅沢富美男のズバッと聞きます!』フジテレビ系)、これは古くからある、厳しい稽古の元で築く芸能の師弟関係を前提としての言葉だろう。だが、ダウンタウン以降、芸人の世界でも師弟関係は希薄となり、先輩・後輩の様相も変化してきた。「大御所から嫌われたら終わり」という恐れもありながら、先輩からの暴言・暴挙に耐え続ける後輩の図は、徐々にほころびを見せ始めたのかもしれない。

 「あれもこれもパワハラと言ってしまうとお笑いがつまらなくなる」という論調にも頷ける。だが被害者がいる以上、「芸人だから、テレビだから仕方ない」では済まないし、一般視聴者の厳しい目は常に光っている。いじりか、パワハラか。線引きの難しい問題を踏まえて昇華することで、さらに新しい笑いが生まれる可能性もあるのではないか。今まさに、芸人の、番組制作者の、真の腕の見せどころが待たれているように感じられる。

(文/衣輪晋一)

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