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「ジャニー喜多川が日本の芸能史を変えた」、“ジャニオタ男子”が見た功績と今後

ジャニー氏の「前例を作り出す力」と「アートと大衆性」の合致

 冷静な観察眼を持ちながら、今も年季の入った“ジャニオタ男子”でもある霜田氏が、ジャニー喜多川氏の訃報を聞いたのは、書籍化の作業が大詰めを迎えた頃だったという。「滝沢秀明さんはジャニーさんを父と捉えていましたが、僕たちファンは滝沢さんをはじめとしたタレントの背中を見て育っており、兄や父のような想いを持っている。なのでジャニーさんの訃報には、祖父を亡くしたような大きな喪失感を味わいました」。

 そんな霜田氏は同書の中で、ジャニー氏を起点に日本の芸能史が変わったと論じている。「ジャニーさんには前例を作り出す力があった。男性が歌って踊るという概念がなかったところに、ジャニーズという文化を作り出した。また、SMAPではフリー・ソウルを、嵐ではラップを…と、当時の最先端の音楽を取り込み、歌詞にも大人に通用する重厚なテーマを込めた。ジャニーさんの脳内はアート。大衆とは真逆の概念ですが、そこに“美少年”という大衆向けの嗜好を組み込むことで、抵抗感なく人々にアートを届けた。日本の大衆の音楽や思考のレベルを上げていった功績は大きいのではないでしょうか」。

 さらに、ジャニー氏の“育てる力”にも言及。その人材の選び方には、経営学者ピーター・ドラッカーの著書『マネジメント』との共通点を挙げている。また、育成法としては“引き出す教育”であるジャニイズムを、それを生かす方法としてのブランド力と競争システムを論述。これらは芸能界のみならず、一般社会の組織づくりにおいて、大いに参考になる概念だと言っていい。

揺れるジャニーズ、「YOU、やっちゃいなよ」の精神があれば…

 近年、ジャニー氏の訃報をはじめ、様々な出来事や報道に揺れ動くジャニーズを、霜田氏はどう見ているのだろうか。彼の“ジャニオタ”歴の原点となるSMAPの解散については、「永遠に続くと思っていたものが永遠ではないと知った」と霜田氏。昨年発表された嵐の活動休止については、「大野さんの休みたいという意思を受け入れての、解散ではなく休止。Sexy Zoneの松島聡さん、King & Princeの岩橋玄樹さんらのパニック障害での休止もそうですが、ジャニーズの“働き方改革”が見えてきます。少なくとも、SMAPの解散以前では考えられなかったこと」と、芸能事務所としての変化を分析する。

 また、未来についても「ジャニーさんが亡くなった今後も、私は心配していません」と明言。ジャニー氏の育成法の一つに、ガチガチにプロデュースせずにタレント自身に考えさせて任せる「YOU、やっちゃいなよ」の精神があるが、これによりタレントは独り立ちできる強さを持ったという。なかでも、もっともイズムを引き継ぐ滝沢が、若手の育成を担う『ジャニーズアイランド』社長に就任したことには、「まさに適材適所」と話す。

 「そもそも、ジャニーさんの世界観には“ジャポニカ”のような和洋折衷思考があり、それは外国人が喜ぶ日本の姿。実は、ジャニーズは世界に通用するエンタメなんです。多くのタレントがそのイズムを引き継いでいるので、今後も活躍していけるはずです」。

 18歳で受けたオーディションの返事を「今も待っています!」と笑う霜田氏のジャニーズ愛は深い。「ジャニーズのある日本に生まれて良かったと、素直に思います。本書はファンの方に限らず、とくに未来に迷っている方に読んでいただき、物事の見方を考えるがきっかけになればと思います」と同氏。とくにビジネスの中核を担う中年層以降には、いまだ“ジャニオタ”というと偏見を持つ向きもあるかもしれない。だが、そんな色眼鏡を外してみれば、ジャニー氏やタレントたちの生き様には、一般社会にも通じる大きなヒントが隠されているのだ。

(文:衣輪晋一)
『ジャニーズは努力が9割』
(新潮新書)発売中
【公式サイト】(外部サイト)

【プロフィール】
霜田明寛(しもだ・あきひろ)。1985年東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業。現在は、WEBマガジン『チェリー』編集長として取材・執筆を行うほか、テレビ・ラジオなどにも出演。三作の就活・キャリア関連の著書がある。

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