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超短編『54字の物語』はなぜバズった? 発案者語る「誰でも作り手になれるルール作り」
「SNSのメリットは、何度もトライアンドエラーができること」
――当初、『54字の物語』を思いついたきっかけは?
氏田 SNSでは、長い文章や長尺の動画はスルーされてしまいます。そこで、そんな中でも読んでもらえるテキストコンテンツを作りたいと考えました。いろいろ試行錯誤していく中で、一枚の画像で楽しめる“54字の原稿用紙”というものを思いつきました。54文字にした理由は、レイアウトした時にInstagramにぴったりな正方形になり、かつ長すぎず短すぎない文量だからです。
――SNSで多くのユーザーが創作して楽しんでいます。なぜここまで大きな反響があったと思いますか?
氏田 読み手側と書き手側、どちらにとってもパズルを解いたときのような快感があるところが、面白がってもらえたんだと思います。
――SNSで展開したことの利点は?
氏田 SNSのメリットは、何度もトライアンドエラーができることです。企画を練りに練って、公開してから反応を見るのではなく、反応を見ながら企画をアップデートすることができます。『54字の物語』も、コメントやリアクションを見ながら内容やデザインを軌道修正しました。
SNSでバズり書籍化、アナログ展開へ…「国語の授業にも取り入れてくれた」
氏田 もともと書籍化する際に、小学生も楽しめるような本にしようという方針で編集をしています。そのため、ちゃんとルビをふったり、解説を丁寧に書いています。当初の狙い通り、小学生、中学生の読者さんからも感想をいただくことがあります。SNSでは大人の読者さんの感想が多いのですが、知人から「うちの子どもがハマってる」と聞いたりすると嬉しいです。また、学校の先生で国語の授業に54字作文を取り入れてくれた方がいて。作品を見せていただいたのですが、とてもレベルが高くて驚きました。
――SNSでバズったコンテンツを書籍というアナログにまとめ、さらにSNSやネットで盛り上がり、書籍も第2弾が発売…そんな相乗効果が伺えます。
氏田 と言っても、『54字の物語』は最初からバズっていたわけではなく、ユーザー投稿が増え始めたのは、出版から約半年後でした。公募キャンペーンや、原稿用紙ジェネレーターサイトなど、いろいろ試してやっと少しずつ見てもらえるようになりました。バズっているネタを探してそのまま書籍化するばかりでは、面白いものは生まれないと思います。しかし、書籍に限らず、ものづくりにおいてはどんどんSNSを活用してオープンに企画制作していくのが主流になっていくんじゃないかと思います。
――書籍第2弾を『54字の物語 怪』とし、ホラー系にした理由を教えてください。
氏田 妖怪や幽霊などの怖い話は、不思議な現象や生活における恐怖に理由をつけるために生まれたと言います。つまり“怪”は、人間のイマジネーションの根源なのです。だからこそ、読者の想像を掻き立てる話が作りやすいと考えてホラー系を題材にしました。というのは若干後付けで、子どもは怖い話が好きだから、という理由です。
――氏田さんは『54字の物語』のほかにも、Twitterで盛り上がった『あたりまえポエム』など、様々なコンテンツを創作、提供しています。そういったものを考え出し実行する際に大切にしていることは?
氏田 誰もがクリエイターや作り手になれることを大事にしています。例えば『ツッコミかるた』は、漫才を題材にしたカードゲームなのですが、遊んでるだけで漫才をしている気持ちになれます。普段から小説を読んだり、お笑い番組を観たりする人はいても、自分で書いたり、人前で演じたりする人は少ないと思います。気軽に誰もが作り手になれるルールを提供することで、ちょっとでも誰かの人生が楽しくなればいいなと思います。
氏田雄介(うじた・ゆうすけ)
1989(平成元)年、愛知県生まれ。早稲田大学を卒業後、面白法人カヤックに入社。インターネット、SNSを中心に広告やコンテンツの企画・制作を手がける。2018年、株式会社考え中を設立し、企画作家として独立。著作は『あたりまえポエム 君の前で息を止めると呼吸ができなくなってしまうよ』(講談社)や、『54字の物語』『54字の物語 怪』(PHP研究所)など。ほか、『ツッコミかるた』『ブレストカード』など、ゲームの企画・イラストも手がけている。
Twitter:@ujiqn(外部サイト)
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