(更新:)
ORICON NEWS
ガンプラ│トップモデラーインタビュー(ガンダムプラモデル)
ガンプラは“ガンダム史を追体験”するためのツール 「ガンダム年表の隙間を妄想で埋める楽しさ」
ガンダムシリーズの時間軸から逸脱せず、かつ最大限のハイスペック化を模索
【オクトーバー】作品名はYMA-06『BIGRO』“Speed Rat”です。このビグロに限らず、「宇宙世紀の隙間をうめる作品」を主に制作しています。
【オクトーバー】宇宙世紀にはまだまだ知らない物語が沢山あって、またその物語を創造する事も自由なわけです。“ガンダムの世界観”から外れることなくリアルな設定を構築し形にする!これが自分のガンプラ制作におけるテーマになっています。
――本作で設定したストーリーを教えてください。
【オクトーバー】長いのでさわりだけ…(苦笑)。ジオン公国軍が最初に実用化した宇宙戦用MA「BIGRO」の開発は北米のキャリフォルニアベースで行われ、初期型14機が生産され本国に送られた。形式ナンバーは「MA-05」とされア・バオア・クー等に数機が実戦配備。そのうち数機は次期MA開発用のテストタイプとしてグラナダのEES (Engineering Experiment Station)での各種実験に用いられ、「YMA-06」などのいくつかの仮ナンバーが与えられた。本機はその中の1機であり、MAへのサイコミュ搭載や固定武装の強化、ビーム兵器の追加搭載など様々なテストが行われた、というストーリーです。
――本作を作るにあたって参考にされた作品やガンダムのシーンはありますか?
【オクトーバー】ファーストガンダムに登場するビグロの戦闘シーンをはじめ、ビグロの設定や宇宙世紀年表、ガンダムの世界観の設定等々を参考にしました。また重力加速度についての科学的な勉強もしました。
――自由気ままに妄想するだけではなく、作品の枠内から逸脱しないよう、SF考証やガンダムの歴史など綿密な下調べをしているんですね。では、本作で一番表現したかったものは何ですか?
【オクトーバー】開発系譜です。グラブロもビグロの設計を受け継いでいる事や、他の兵器や時代背景から考察できるリアルなスペック、ガンダムの世界の時間軸を合わせオーバーテクノロジーにせず、かつ最大限のハイスペック化に向けてのテスト、また即時戦闘可能というジオンの実情なども考えて作りました。
ガンダム史の隙間に割り込ませられる機体を制作したい
【オクトーバー】スケール感です。このビグロは1/550で、使用したデカールも自分でデザインし特注したモノで、その文字の大きさは出来るだけ小さいモノにしています。パネルライン等もスケール感が損なわれない様に配慮しています。
【オクトーバー】当初、「4連ミサイルランチャー VLS(ミサイル発射システム)」はオミットすることも検討していましたが、機首メガ粒子法を開閉ギミックで制作することになり、となれば4連ミサイルハッチも開閉させたいと考え直しました。なので、一度接着したハッチ部分を剥がし、ヒンジ(蝶番)は3度やり直しました。ちなみにハッチのデザインは潜水艦のVLSを参考に内蓋も圧力隔壁風にしました。
――ハッチのデザインに説得力を感じたのは、潜水艦のVLSを参考にしているからなんですね。これまで多くのガンプラを制作するなかで、技術的な「壁」を感じたのはどんな時ですか?
【オクトーバー】精度です。今はHGメインで制作していますので、スケール感を出そうと思うとどうしても細部の精度が気になります。何度やっても自分のイメージ通りにならない時に「壁」を感じます。
――では、その「壁」をどう乗り越えたのでしょうか。
【オクトーバー】ひたすらやり直します。もちろん自己満足の部分も大きいので妥協する事もありますが、自分に課した“ボーダーライン”をクリアするまでは作業を続けます。
――こだわって作り上げるガンプラです。カタルシスを感じるのはどんな瞬間ですか?
【オクトーバー】完成写真を撮っている時ですね。頭の中で練り込んだ設定と作品の世界観が画としてハマった瞬間の高揚感は、完成時の喜びとは別の種類な気がします。
――オクトーバーさんにとってガンプラとは?
【オクトーバー】まず前提として、ガンダムの世界観を壊さないよう宇宙世紀の史実を念頭において制作しています。それは、ガンダム史の隙間に割り込ませられる機体を制作することで、ガンダムの世界を“追体験”できるからです。なので自分にとってのガンプラとは、「ガンダムの世界観を味わうためのツール」です。
(C)創通・サンライズ