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出版業界に変化、担当者が語る“お勉強書籍”ヒットの理由
“エンターテインメント”と“教育”の融合に開拓の余地あり!
“エンターテインメント”と“教育”の融合に開拓の余地を感じていたという同社は、今回が学習参考書へ初参入。もちろん、“うんこ”と“勉強”の組み合わせにネガティブな反応も想定したそうだが、しがらみなく斬新なテーマに挑戦できたのも大きいだろう。その一見相容れるテーマの融合に、DVD『人の怒らせ方』シリーズなどを手掛ける映像ディレクター・脚本家の古屋雄作氏を迎え入れ、「うんこと勉強を組み合わせたら勉強が楽しくなるのでは?」と、古屋氏の企画『うんこ川柳』を元にアイディアが広がった。石川さんは「もしかしたら怒られるかも…というテーマだったにも関わらず『うちの子が勉強してます!』という感謝の声までいただけて、日本は思ったよりも窮屈な国ではないんだな、と感じました」と、ヒットの喜びを表現している。
そして、児童書として発売された『ざんねんないきもの事典』は池袋サンシャイン水族館から声がかかり、『ざんねんないきもの展』(2017年11月10日〜2018年4月8日)としてコラボレーションするまでに。本から飛び出した“ざんねんないきもの”が実際に動く姿を見てみたいと、土日には待ち時間ができるほどの盛況ぶりだ。
“知ってるようで知らない”応仁の乱、丁寧に掘り下げ大人の知識欲を刺激
中央公論新社・編集担当の並木光晴さんは「いつか扱ってみたいテーマとは考えていました」と話すが、今回の企画は著者の呉座勇一氏による発案で実現に至っている。と言うのも「応仁の乱というややこしいテーマを明快にさばいてくれるのは、呉座さんをおいて無いとも感じていました。まさに渡りに舟でした」(並木さん)と言うほど、とっつきにくい題材。呉座氏はそれを、簡略化せずにあえて綿密に組み立てた。そして、大乱の舞台である京都ではなく、奈良の僧侶からの視点で描くという斬新かつ客観的なコンセプトに。予備知識はあるものの今まで全容を掴む手段がなかった歴史好きがこぞって手に取り、高評価へと至った。
「『今回は呉座さんを全面的に信じよう。思うままに書いてもらおう』と腹を決めました。迷った末の決断は、結果として間違っていなかったようです」(並木さん)。
“お勉強書籍”ヒットで“家族の会話”増加にも一役
そして、“今まで知っていた知識を別の角度から見てみる”という点は、学術書『応仁の乱』でも同様に言える。歴史好きには各々好きな時代や英雄がいる中で、今までぼんやりと知っていた程度の知識に新たな視点で追究するコンセプトが幅広い層に響いた。「やはり日本人は歴史好きが多いというところが背景にありますが、『応仁の乱』はほとんど類書がなく、誰しも知ってはいるが内容をしっかりと語ることが出来ないこのテーマでした。それを、呉座先生が丹念にごまかすことなく取り組んだというところが多くの歴史クラスタに受けいれられたのでしょう」(並木さん)