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吉沢亮の面白CMのウラに東北復興への思い…「いったい何屋さん?」アイリスオーヤマがお米に手を出した背景
家電への参入もリーマンショック後の「もったいない」精神から
よく知られている話だが、このような事例は過去にもあった。もともとプラスチックを製造・販売する町工場からスタートし、園芸用品、ペット用品と商品を展開してきた同社が、いま最も知られる家電事業に参入したのも、技術者の雇用・活躍の場の創出が根底にあったのだ。
「当時、リーマンショックの影響で、大手家電メーカーを早期退職した技術開発者が外国のメーカーに流出してしまうことが社会問題になりました。日本の高い技術が海外へ流出するのはもったいないということで、弊社に入社していただき、彼らの知見を生かして家電を開発したのが始まりでした」
社会問題を解決しながら事業成長する。このシンプルな循環をためらいなく実施できるのが、アイリスオーヤマという会社の強みのように思える。
苦労もあった精米事業、声高に「復興支援」を打ち出さなかった理由は?
ちなみに、吉沢亮のお米CMは生産者側からも大好評だそうだ。背景にあるドラマを知ると、もっと復興支援を打ち出した感動的な作りにしたほうが社のイメージアップにつながったのでは…と思うのだが。
「個食化も背景にはありましたし、若者を中心に幅広い世代にパックごはんに関心をもってもらい、お米の消費につながればという狙いが一番でしたから。復興支援を前面に出すより、むしろ『ユニークだなー』と思ってもらったほうが心に留まり、広く伝わるのではないかと思いました」
「何屋さん?」は誉め言葉、手広い商品展開が能登支援にも生きた
「自社アイテム中心なのですが、現地自治体と連携して必要なものを聞き取って、お役に立ちそうなものをお届けしました。これらは自社の物流倉庫の在庫やグループにホームセンターもあるため、いろいろなフローをショートカットできて早くお届けすることができました」
以前から、「アイリスオーヤマはこんなものまで扱っているのか」と驚かれ、「いったい何屋さんなの?」と言われてきたが、まさか被災地支援でそれが生きるとは。
「『アイリスオーヤマって何屋さん?』とはよく言われますが(笑)、誉め言葉だと受けとめています。変わっていく世の中に順応してニーズの高いものをすぐに作り、生活者の皆様の助けになれたらというのが一番の思い。ですから、これからもひとつの業態に絞ることは絶対にないですし、社会の変動と一緒に変わっていく。毎年約1000アイテムの新商品を販売しているので勉強するのは大変ですが、やりがいを感じています」
社会変化に対応といえば、コロナ禍ではマスク不足を受けて、同社が早い段階で国内にも生産設備を整え、商品を供給したことも話題となった。社長直結の素早い決済や、工場の稼働率をあえて7割稼働に抑え、市況の変化に合わせてレイアウト変更や設備投資ができるようにしていることなどが、スピーディーな対応を可能にしているという。
災害やコロナ禍など、社会の危機に素早い動きを見せてきた同社。万が一何かが起こっても、あの要正直が不敵な笑みを浮かべながら手を貸してくれると思えば、少しばかり安心できるというものだ。
(文:河上いつ子)