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教育現場における“生成AI”、親子の本音は? 「生成AIを通して、子どもに“考える力”を養って欲しい」

 ChatGPTを使用した九段理江さんの小説『東京都同情塔』(新潮社)が、『第170回芥川賞』を受賞し、話題になった。NHKニュースの「AIアナウンス」など、各分野で生成AIの活用が進んでいる。一方、有名人のディープフェイク・ポルノ画像がSNSで拡散されるなど犯罪に活用され、安全性に対する懸念も上がっている。そうした中、発達段階にある子どもの教育現場でも活用が進みつつある。実際に生成AIを活用する東京都内在住のYさん(母親)と小学3年生の娘さんに、どのように向き合っているのか話を聞いた。

教育現場での生成AIの活用に7割強が肯定的「質問しづらい時も生成AIなら何回でも聞けていい」

 3月下旬から開始するベネッセの新たな生成AIサービス「チャレンジAI学習コーチ」は、「進研ゼミ」の学習や学校の宿題において、教科のわからないことを、いつでもわかるまで質問でき、即時に疑問を解決するサービス。年間180万件以上の会員の質問や疑問分析に基づき、55年の指導ノウハウや知見を活かし、子どもには適していない質問や言葉に回答しない仕組みになっている。子どもに適していない情報は精査されてはいるものの、誤情報など、発展途上である生成AIの現時点での制度は完璧とは言い難い。ベネッセ『進研ゼミ小学講座』責任者・的場一成さんは、「保護者の方にサービスをご理解いただき、リスクを学んだ上で使ってもらいたい」と言う。

 一方、教育現場における生成AIの活用について、「今年1月の調査では、7割強が肯定的」(的場さんと前向きに捉えている家庭がほとんどだ。2月に行われた「チャレンジAI学習コーチ」の体験会に親子で参加したYさんは、子育てにおいての「生成AIとの向き合い方」について、どのように考えているのだろうか。

「もちろん不安なこともありますが、可能な限り使っていきたいと思っています。家庭では、生成AIを活用した未成年でも利用可能なデジタルアート(お絵描き)ツールを使っています。できること・できないことの差がある中、それを理解し、自分のやりたいことを助けてくれる存在として生成AIを使ってもらいたいと考えています」(Yさん)

 ベネッセが行った「子どもの疑問解消に関する意識調査」(※)によると、約7割の子どもが自主学習をやっていてわからないことがあった時、「調べ方がわからない」と回答。また、7割を超える保護者が自主学習をやっていてわからないことを質問された時に、「教え方がわからない」と感じている。

 1歳7ヵ月から「進研ゼミ」を始めたYさんの娘さんは、小学3年生で5年生の勉強を先取りで行っている。周囲の人に「わからないことをどんな風に聞いたらいいのか、私が言っていることをちゃんと理解してくれているのか、緊張しちゃって言い出せない時がある」と言う。

「生成AIは、問題がわからなくなった時に、家族や友達よりも恥ずかしがらずに聞けるからいい。お家でお父さんやお母さんに聞くと、『また〜』と言われちゃうこともあって、質問しづらい時があるけれど、生成AIなら何回でも質問できるから使っていきたいです」(娘さん)

(※)調査対象:小学4年生〜中学2年生とその保護者1040人/調査期間:2024年1月22日〜1月23日調査方法:インターネットでのアンケート調査調査項目:学習に関するアンケート)

「情報リテラシー教育」は親子で学ぶ必要も…「文部科学省や公的機関で学びの場を提供してほしい」

 「チャレンジAI学習コーチ」ローンチにあたり的場さんは、「質問することが難しい子どもでも、AIが上手く聞き返しながら適切な解説に誘導してくれる。それがこのサービスの一番のポイントであり、開発段階でのチューニングが大変でした」と振り返る。

「教材を作る面などのバックグラウンドでは、急速に広がっていくのではないかなと思います。教育現場での生成AIの活用は研究を始めている段階で、今後事例が増えてくるでしょう」(的場さん)

 現時点での生成AIは発展途上の段階なので、倫理的・思想的に不適切な回答をすることもあり、誤情報などを完全に排除するのは難しい。ネット検索やWEB広告なども含めて、「これって本当に正しいのか?」といった批判的な思考力は必須だ。情報を鵜呑みにせずに、自分で考え判断する力や正しい情報を得るスキルは、生成AIが普及する社会においてより一層求められる。

「デジタルアート以外には、『Google SGE』(生成AIの仕組みを検索結果に取り入れたGoogle検索の機能)を親子で活用しています。その際に、“引用先”があることを伝えています。『これは本当に正しい情報なのか? そうではないのか? 書いた人にしかわからないこともあるから、正しい情報なのか見極めが需要。自分の中で正しいことがわかるような学びをしていかないといけないからね』と教えています」(Yさん)

 判断能力が備わる前の子どもは、“誤情報”を素直に受け取るリスクがあり、年齢に応じた一定の制限も必要になるだろう。正しい情報かどうかの見極めが難しい中、家庭ではどのように対処しているのだろうか。

「ひとつの情報だけでなく、いろいろと見るように言っています。できるだけ行政機関や公的研究所が発表しているデータや情報を引用するようにと教えています。この歳になると親だけではカバーしきれないところもあります。生成AIを通して、子どもに“考える力”を養ってほしいと思っています」(Yさん)

 生成AIだけでなく、SNSやネット検索、WEB広告なども含めて、今後より一層「情報リテラシー教育」が重要になる。しかし現時点では、それぞれの家庭に委ねられている。

「学校ではタブレットで検索ツールを使用していますが、どの程度教えてもらっているのか、情報リテラシーという科目があるわけではないので、学校でどのように教育されているのか、親は把握できないんですね。生成AIについては、まだまだわからないことがあります。子どもだけでなく、親も一緒に学ばないといけない。国のガイドラインや有識者からのエビデンスによるコンテンツもそうですが、文部科学省や公的機関で学びの場を提供していただきたいとも思っています」(Yさん)

人間の思考すらも“タイパ”になるのか…生成AIの突拍子もない回答は創造性を高める可能性を秘めている

 一方、教育を取り巻く議論の中では、「生成AIが子どもたちの思考力の発達を阻害してしまうのでは?」といった懸念も上がっている。テーマにたどり着くまでに試行錯誤する時間を非効率的として、「人間の思考すらも“タイパ”が求められるのでは?」といった声もある中、子どもの“考える力”は育んでいけるのだろうか。

「たまに何を言っているのか、よくわからないこともあるから、『本当かな?』と思うこともあります。AIには、まだわからない言葉があるかもしれないから、ちゃんと言葉に気をつけて質問しています。『ウィキペディア』は、細かく書かれているけれど、文章が長いから読みづらい。でも、生成AIは要点だけギュっとまとめてくれるから便利だし、時間が短縮できるからすごくいい」(娘さん)

 ベネッセの的場さんは「わからないから違う聞き方で質問しようといったように、『チャレンジAI学習コーチ』を使うことで理解力を高め、考える力を育んでほしい」と言う。生成AIの突拍子もない回答や返答は、逆に子どもの創造性を高める可能性も秘めている。しかし、積極性や粘り強さ、リーダーシップやモチベーションの高さといった数値では図りにくい非認知能力や問題解決能力は、家族や友人など人間同士の関わりの中で育まれるものであり、AIには担えない。

「娘は幼い頃から自然科学が好きでした。デジタルにどっぷりハマり、そうした感性を失わないためにも“体験学習”を大切にしてきました。好きなことに関しての探究心が強く、自分の好きを認めてもらえる場があれば、どんどん伸びていくのではないのかと思っています。親子でお互いの良い・悪いところを尊重し合い、一緒に体験するようにしています。

 その上で、いろいろな人の意見を聞き、自分の意見がしっかりと言えるようになる。そうしたコミュニケーション力を始め、自分を信じる力や信頼してもらえる人間関係を築いていくことを実体験を通して培っていけば、自然と“考える力”も養っていくのではないのでしょうか」(Yさん)

 社会の複雑化や価値観の多様化に伴い、子どもたちを取り巻く学習環境や、未来に向けて求められる力も変化していく。テクノロジーの発展は不可逆的であり、新しい技術を頭から否定するのではなく、上手く付き合っていかないといけない。

「3年後、5年後が分かりづらい世の中にあります。もちろん不安な要素もありますが、とりあえず飛び込んで使うところから始めた方が、素直に育つかなとも思っています」(Yさん)
◆進研ゼミ「チャレンジAI学習コーチ」サイト(外部サイト)

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