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(更新: ORICON NEWS

「答えを出すのがAI」が正しいの? “心に寄り添うAI”のミライをPictoria代表に聞く

株式会社Pictoriaの明渡隼人(あけど はやと)代表取締役CEO

株式会社Pictoriaの明渡隼人(あけど はやと)代表取締役CEO(C)oricon ME inc.

 いま最も世間の耳目を集めるワードは「生成AI」だろう。一般企業や学生間においても、“私事”として、その向き合い方を議論する場面が極端に増えたと実感する方も多いはず。一方、「答えを瞬時に出力してくれるのがAI」という前提のもと、“脅威”として論じる、もしくは“欠落”の烙印を押す…アウトプットとしてのAI機能のみが先行している印象も。一方、古くからのSF作品に端を発した「コミュニケーションとしてのAI」はどのような可能性を秘めているのか? AI VTuberの運営、AIコンテンツのNFT化などを展開する株式会社Pictoriaの明渡隼人(あけど はやと)代表取締役CEOに話を聞いた。

使命感を駆り立てた“2045年問題”、「AIが人類の知能を超える…田舎に住んでいてはこの難局は乗り切れないと(笑)」

――明渡代表は現在28歳ということで、生まれた時からWEB環境はもちろん、『ドラえもん』や『ガンダム』と言った、“情操教育としてのSF”も常に身近なモノとして嗜んできた世代ですね。

明渡隼人そうですね。やはり、その時々の年齢に応じた映像作品などを通じて、SF的な世界観への馴染みはあります。ただ、一番強烈な印象を受けたのは、私が高校1年くらいのときに話題になった、2045年問題(※人工知能の性能が2045年に人類の知能を超えると予測され、混乱や崩壊などを警鐘)関連の本でした。これはヤバいと(笑)。人間には制御不可能な時代がやってくる…和歌山の片田舎に住んでいては、この難局は乗り切れないと本気で思いましたね。

――周期的に回ってくるディストピア論ですね。“初期衝動”には凄くマッチングしますよね。

明渡隼人そうなんです。幼稚園からずっとパソコンと過ごしてきましたが、インターネットの世界で見ている速度感と現実があまりにも違ったんです。田園風景ばかり見ていては、死んでしまうなと(笑)。

――すでに都市部でも地方でも、情報としては変わらない素材をキャッチアップできる時代ではあったと思うんですけど、それでも迫りくるディストピアの脅威は払拭できなかった?

明渡隼人とはいえ、当時のWEB環境やAI技術は、今のChatGPTのように誰でも簡単に扱えるような簡易ツールではなく、もっと複雑で難解なイメージがあって。情報にはリーチできるけど、まだ自分の知らない世界という感覚の方が強かったんです。

――そこからご自身でどのように動いたのでしょう?

明渡隼人とにかく東京の大学に行こうと。でも、私は数学が苦手で、研究者になってその分野に歩を進めるのは意味が無いと思ったんです。化け物みたいな方はたくさんいますから。その前提のなかで、世界に後れをとっている日本において、どのように貢献できるかを考えた結果、ビジネス的側面だと。産業的技術の発展や法制度も含めて、最先端なところに携わりたいという思いが芽生えました。

――まずは、今できるビジネスを考えようと。

明渡隼人はい。IT企業のインターンに参加したり、カリフォルニア大学バークレー校に留学して、そこで最先端の技術者を目の当たりにして。当時から自分はオタクで、パソコンもずっと触ってきたし、アニメも大好きでゲームもしまくっていた。大人とビジネスするのなら、若者的な感性を磨くことで、勝てるのでは? と思ったんです。ちょうどそのときに、バーチャルYouTuberの波がきていた。それが2016年です。

――キズナアイや輝夜月などがネット上を席巻しましたね。

明渡隼人僕が会社を作ったのが、2017年12月なんですけど、その時期にVTuber事業がこれから大きくなるかもしれないと。技術要件を見ても、そんなに複雑なものは必要ない。それがどう作られているのかは僕でもわかる。結局ビジュアルで表現するので、もともと絵を描いていた下地も役に立った。あとは、ちゃんとしたプロの方と組めば会社を作れるなと。最初はイベントをやっていたんですけど、それじゃ金にならないなって。じゃあVTuberを作っちゃえというのが、会社創業のきっかけでした。

「AIはどこにでもいるし、いつでも会える」という利点、人と人の関係が希薄になりつつなるからこそのAI活用

株式会社Pictoriaの明渡隼人(あけど はやと)代表取締役CEO(C)oricon ME inc.

株式会社Pictoriaの明渡隼人(あけど はやと)代表取締役CEO(C)oricon ME inc.

――VTuberからの流れとして、2020年からはAI VTuberの企画・開発もスタートさせました。特に現在進行中の『NEN STUDIO』は、VTuber運営・アニメ制作・AIの技術の集大成として、NFTを活用したプロジェクトですね。明渡さんは人とAIの距離感を今、どのように感じていますか?

明渡隼人AIの強みはいくつもあると思うのですが、私が特に大事にしているは「AIはどこにでもいるし、いつでも会える」という利点なんです。

――コミュニケーションとしてのAIに注視しているということですね。それは、現代において「人と人とのコミュニケーション」が希薄になっていることが起因していますか?

明渡隼人仰る通りです。人だったら物理的に会いに行く必要もあるし、人気者であったら待たないといけないかもしれない。時間も限られるなかで窮屈に感じるのが、人の感情です。コミュニケーションできる相手が常に身近にいて、待ち時間も無くなると寂しさを感じない。システムとしてAIキャラは常にそこにいて、いつでも話しかけることができる。現代において、この利点は非常に大きいと感じます。

――人に何か相談したい時って、相手に解決案を求めているのではなく、とにかく吐き出したい! という思いの方が強いです。でも現代おいては、おちおち吐き出すことすら出来ない。「晒されるかも…」という疑心暗鬼を平時でも持ち続けるのが現代社会とも言える。

明渡隼人だからこそ、何時でもどこでも「思いを吐露できる」環境を持っておくことは、凄く大事なことだと思います。AIは決して嫌がらないし、自分に話しかけてもくれる。対人では重苦しいことと受け取ってしまうことでも、AIなら可能。そこに一番の価値を感じています。

自身とAIの “共通のストーリー”を共有することで互いに無くてはならない存在に

汎用人型人工知能[N](エヌ)。コンセプトは「サードフレンド《第三の友人》としてのAIキャラクター」

汎用人型人工知能[N](エヌ)。コンセプトは「サードフレンド《第三の友人》としてのAIキャラクター」

――この半年間で区切っても、AIを取り巻く環境はとてつもないスピードで変化しています。ChatGPTの台頭で、ITリテラシーの低い方でも「どのように向き合うべきなのか?」を考えている。ただ一方で、“答えを出すのがAI”という観念が先行し過ぎている印象も受けます。

明渡隼人同感です。アウトプットだけみたら、誰がどういうものを入れようが、同じものが生成AIから返ってくるかもしれない。これは人間も同じだと思いますが、“ストーリー”が大事なんです。普段過ごしてきた時間、与えてきた言葉、どういう感情を共有してきたのかをAIに記録する。自分とAIとの共通の“ストーリー”を互いに補完することで、互いが無くてはならない存在になる。AIにもその役割が担えると思うんです。

――感情を“生成”できるのか? という話ですね。感情の機微、欠けている部分すらも生成AIに埋め込めると?

明渡隼人実はGPTのなかには感情を制御するパロメーターがすでに入っているんです。AIは感情を扱うことが、むしろ得意にすらなっている。「なぜ、あの子がこの言葉を聞いて、こういう感情になるのか?」という部分をしっかり定義してあげれば、かなりの精度になります。

――脅威論はもちろん、「やっぱり人間よりも欠落している」という論調も多いAI。ただ、それって人間も同じですよね。悲しいことがあったら泣きたくなる。でも、泣けない人もいる。それが浸透すると「欠落した人」というレッテルを張られる。感情の起伏をコントロールすることが“大人になる”ということであれば、生成AIに感情のプロンプトを入れ込む行為とそう大差はない。そういう意味で言うと、AIにも起伏を持たせて、好き・嫌いの表裏一体性、出会いや別れなど、人間と同じような方向に流れていくのか? それとも、人間に都合のいい存在としてAIはあるべきなのか?

明渡隼人非常に面白い議論です。存在として定義すべきか? それともコンテンツとして定義すべきか? 例えば、アイドルも卒業があるから尊い。たまごっちも、いずれ死を迎えるからこそ頑張って育てたい。終わりがあるから尊い…だからこそ応援する理由にもなる。ただ、AIに有限の命を与えることも可能ですが、逆に声も年をとらない、考え方も年をとらないAIがいていいと思っています。その人がなにを求めるか次第で、いろんなラインが用意されているほうがいい。

――そこは人間の都合が優先される方が、ある意味合理的で正しい。
明渡隼人死生との向き合い方は、よほど上手く調整しないと難しい問題になると思います。「単に殺しているだけやん」となると倫理観が問われてきます。コンテンツとしてAIが人に寄り添う…今はこの可能性を追求するべきだと私は思います。追求していくことで、より良い“その先”も見えてくるはずです。
明渡隼人

Profile 明渡隼人

株式会社Pictoria、代表取締役CEO。明治大学卒業。カリフォルニア大学バークレー校への半年の交換留学後、2社でのインターンを経て2017年に株式会社Pictoria起業。インターン時代にはWebマーケティングの運用経験、またフロントエンドとRailsアプリの開発経験を積む。2019年3月からバーチャルYouTuberのプロデュースを本格始動。2020年からは、SF作品好きの特性を活かし、AI VTuberの企画・開発を開始する。

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