『絵になる家』に暮らす30代建築士夫婦、心がけたのは「不完全で余白のある家」
深い軒とテラス、庭を居室にする斬新アイディア
ご自宅の特長のひとつは「深い軒」。1.5mの軒下に広がる5帖のウッドデッキと、その眼前に広がるテラスは、まさに「外にある居室」だ。食事や読書、時にはハンモックを置いて昼寝も…と多目的に利用している。
室内は中央に木の箱で覆われたキッチンエリアがあり、リビングと仕事部屋、水回り、寝室へと回遊できる間取りになっている。目を引くのは、リビングに置かれた3mもの長大な座卓。座ったり寝転んだり、思い思いの体勢でくつろげるよう床座スタイルを採用している。
【アツノリ】 私はみんなでワイワイできる座卓テーブルですね。妻は「そのみんながワイワイ楽しんでいる様子が眺められるキッチン」だそうです(笑)。とにかく2人とも、友人や家族が遊びに来て、居心地の良さを感じてくれていること、楽しんでくれている事が何よりうれしく思っています。
――木の箱で覆われたキッチン、とてもユニークです。
【アツノリ】 一見窮屈そうに見えますが、キッチンの床はリビングより1段下がっていて、視界の先は庭に抜けるのでとても居心地の良い空間になりました。周囲の木の板は、実は収納になっているんですが、徹底的に扉がわかならい仕様にしています。
インテリアはルールを決める、そしてなるべくシンプルに
【アツノリ】 我が家は内装選びをする際ルールを決めました。内部の木材はすべてナラに統一。金物は極力使用しない。使用する場合はブラックにする。内部の壁仕上げは外壁色とベージュで統一。最初にルールを決めると時間も短縮され、考えることも少なくなり簡単になります。なるべく箱はシンプルに。生活していくと色々なものがでてきます。ライフスタイルや歳も変化していきます。そんな時はなるべくテイストが自由になるようシンプルを心がけると良いと思います。
――室内には部屋を仕切る扉が一切なく、さらに小屋裏(こやうら)があったりと、将来的にさまざまに応用できる自由度の高い設計も特徴的ですね。
【アツノリ】 人が変わるように家も変わっていけることが大切だと思っています。10年前に今のような暮らしになることを予想できた人は少ないと思います。その瞬間に完璧なものを作っても後々それが不自由になることもあります。それよりも、少し不完全な、余白のある家の方が自由で柔軟ではないでしょうか。不完全なものを完成に近づけていったり、変えていったり。そんな工夫をする暮らしの方が、より豊かで楽しいと思っています。
【アツノリ】 そうですね。「余白」は将来の自分たちのためです。100%にしないことはネガティブなことではなくむしろポジティブなことです。余白が無ければ変化しにくくなります。100%を求めて家づくりをすると本来楽しいはずの家づくりが辛いことになってしまう方がいます。心にも余白が大切です。ぜひ、肩の力を抜いて楽しんで家づくりをしてください。
岐阜県/ご夫婦(夫37歳、妻38歳)/建坪90坪・延床面積29坪平屋
・キッチン 5.5帖
・LD 17帖
・寝室 3.5帖
・WIC 2帖
・小屋裏 11帖
・土間収納 4.5帖
・土間玄関 2帖
・仕事部屋兼子供部屋 8帖
・ウッドデッキ 5.5帖
・庭 20帖