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マイナスイメージ払拭し、ガム市場超えの“グミブーム”をけん引 『果汁グミ』の35年

 昨今、“映える”ビジュアルに加え、独特な食感の面白さがウケ、若者を中心にグミブームが過熱中。その人気を証明するように、2021年度には過去最高の市場規模を記録。だが過去には「体に悪そう」などのネガティブなイメージが先行。売り上げ規模でも、ガムや錠菓清涼菓子(タブレット系菓子)に大きく水をあけられていたグミが、なぜここまで人気を高めることができたのか。誕生から今に至るまで、グミ市場をけん引し続けるリーダーで、今年35周年を迎える『果汁グミ』の生みの親・明治に話を聞いた。

1980年初の国産グミ誕生「弾力のあるものを噛むことに日本人は慣れていなかった」

 そもそも日本で初めてグミが発売されたのは1980年。チョコレートを主力商品としていた明治製菓(現・明治)が「新しい分野の子ども向け商品を開発したい」との思いで、ヨーロッパに視察に出かけ、現地の子どもたちがグミを口にしていたことがきっかけだった。
 だが、現地で発売されているグミは今、日本人がイメージするグミとは似て非なるもの。1920年に子どもたちの噛む力を強くし、歯に関する病気を予防するお菓子としてドイツで開発されたといわれているグミだが、特徴となるその食感は、日本人には硬すぎて改良が必要だと考えられた。

「グミは噛んでいるうちにだんだん柔らかくなっていくのが特徴です。硬いものを食べる習慣のあるドイツでは、弾力のある食べ物を咀嚼することに慣れていましたが、当時の日本人は弾力のある食べ物を噛むことに慣れていませんでした」(明治 カカオマーケティング部・吉川尚吾氏/以下同)

 そんな日本のおやつシーンに合わせるべく、日本人に合った硬さと噛み切りやすさを追求し、誕生した日本初の国産グミがコーラ味の『コーラアップ』だった。

「当時、グミはプラスチックの容器に入っていて、押し出して食べるという“動き”が面白かったこと。『コーラ』に対する子どもたちの“憧れ”があったこと。さらに新しい分野のお菓子ということで徐々に話題になっていきました」

 特に小学生の男子の間で「面白いし楽しい!」と話題になった一方で、「グミ市場を拡大させるために、子どもだけでなく、大人も美味しいと感じてもらえるグミを作りたい」と、フルーツ味のグミを大人が好んで食べているヨーロッパを参考に開発されたのが、1988年に発売となった『果汁グミ』だった。

先行するネガティブイメージ…「虫歯になるの?」の問い合わせは1度もなかった

 開発にあたりこだわったのが、「果汁100であること」「日本人の好みに合わせた食感を作ること」「子どもにも買い与えたいと思う安心安全であること」だった。しかし、実現のためには課題が山積みだった。

「フルーツでグミを作ろうとすると、固まりにくくなるんです。また、グミのもととなるグミ液を煮詰める工程で色が褐色になってしまったり、べたつくなど制約が非常に多いため、果汁100で果物そのものの味をグミで実現するのは本当に難しいなか、開発に挑んだそうです。果物によって固まり方が異なるため材料の配合比率を変えるなど、目指す食感を実現するために徹底研究を重ねました」

 こうして完成した『果汁グミ』は、徐々に売り上げを伸ばし“グミ市場”をけん引する存在に。だが、長らくガムや、錠菓清涼菓子(タブレット系菓子)に市場規模で勝てない時代が続き、2002年にはガムは8倍以上、錠菓清涼菓子(タブレット系菓子)は約3倍と、大きく水をあけられた。

 その理由のひとつとして、グミには「色が鮮やかで健康に悪そう」「歯に挟まったり詰まったりして虫歯の原因になるのではないか」「喉に詰まらせてしまうのではないか」といったネガティブなイメージがあったことが挙げられるだろう。

「過去を調べてみたのですが、実際に『虫歯になるのではないか?』といったお問い合わせはいただいておりませんでした。
 当社としては、『グミが不健康な食べ物』というイメージが普及することは好ましい状態ではありません。事実と誤解とが消費者の中で区別できない状態は憶測を呼び、憶測はさらなる誤解を生みかねません。常に事実と向き合い、お客様の不利益になる事実があれば商品の設計に反映し、必要な補足情報はパッケージ表示などを通じて、かつてのグミが持っていたネガティブなイメージと向き合ってきました。
 原料の果汁は産地の農家を訪ねるなど品質にこだわり厳選し、素材そのものの色を実現するために着色料は不使用。さらに咀嚼すると唾液に溶解していくことに加え、歯への付着度合いが低く、口内に残りにくいよう性質を研究し続けました。誤飲に関しても、類似の食品で発生した窒息事故事例情報を収集しリスクの要因分析を行い、必要に応じて、自社で開発したシミュレーション解析手法をもとにリスク評価を実施するなど、安心安全に徹底して注力。それらは、公式HPなどを通じて発信しております」

 こうした品質、安心、安全に対しての意識は、やがて「『果汁グミ』なら安心」と評価され、グミ市場で大きなシェアを誇る存在に。大人(親世代)の信頼を得たことで、子どもたちにも安心して勧められるものになり、当初掲げたグミのネガティブイメージを払拭する力となっていった。

科学的に分析、グミを噛むことで得られる“いいこと”

 こうした地道な取り組みに加え、コロナ禍における生活様式の変化が追い風となり、2021年、グミ市場は初めてガム市場、錠菓清涼菓子(タブレット系菓子)を超えた。これは、これまで口臭予防のエチケットとしてガムやタブレットを選んでいた人たちが、ガムの口から出す行為を敬遠。タブレットは、それまでまわりに気づかれないように口にすることができることからオフィスで眠気覚ましに活用されていたが、マスクを着用する機会が増えたことで需要が減少したことが大きく影響した。

「逆にグミは、噛むことで得られる心地よさ、フレッシュ感といった食感のニーズが高まったことで、需要が伸びたと考えられます。もともとグミは、自宅以外の場所で喫食されることがメインだったのですが、コロナ禍において、自宅で食べられるようになった。実際、『果汁グミ』も、2021年、2022年共に前年売上を2桁伸長と社内でも驚きの伸びを記録しました」

 食感のニーズという意味では、グミの健康価値を利用する取り組みが、徐々に世間に伝わってきたということもグミ需要の上昇に寄与しているといっても過言ではないだろう。

「噛むことは、唾液分泌を促進させます。唾液にはウイルス、細菌の侵入を防ぐなどさまざまな役割があり、健康を維持するのに必要なものです。また、年齢を重ねると筋力が衰え口腔機能が低下していきますが、噛むことを意識的にすることでそれらを防ぐことができる。噛む機能を鍛えるための食品を取ることがおススメです」

 近年、“噛むこと”が健康寿命に関係するとして注目を集めているが、同社は噛む力は人それぞれ異なることに着目し、同じ『果汁グミ』でも噛みごたえを変え、消費者が好みで選べるという斬新かつユニークなテーマに挑戦。21年8月よりパッケージにグミの処理に要する力をレベル分けし、6段階の「かみごたえチャート」を記載した。

「独自の技術と専用機器により、食べ物が咀嚼によってどのように処理されていくかを実験し、処理に要する力のレベル分けを実現し、6段階に分けました」

 このレベル分けを利用すれば、自分の噛む力が今どの程度なのか目安ができ、グミを口腔機能のトレーニングアイテムとして活用することもできるのだ。
 さらに長年のグミ研究により、同社では噛みごたえの弱いグミは「リラックス」、中程度のグミは「やる気が出る」、強いグミは「覚醒感を想起しやすい」など、噛みごたえの違いが心理状態(感性)に関係することも確認。その知見をもとに、現在、かみごたえレベル2のパッケージには「リラックスしたいとき」、5には「イライラしたとき」など、各々のレベルのグミが適したシーンを記載している。

「健康には体の健康と心の健康の両軸が必要ですが、グミはとにかく色鮮やかで形もいろいろあって、お菓子の中でも圧倒的に楽しいという特長があります。〈おいしく楽しい〉を大前提に、噛むとこんなにいいことがあるよということをこれからもアピールしていきたいと考えています」

 過去には、事実ではないイメージでネガティブな印象を持たれていたグミだが、今ではすっかり見直され、その需要が伸びている。グミ界の第一人者である同社は、35周年を迎えた今なお看板商品である『果汁グミ』の今後の展望をどのように考えているのだろうか?

「『果汁グミ』は、グミカテゴリーを代表するブランドだと思っておりますので、これからもお客さまがそういった価値を感じて頂けるような取り組みを続けていきたいと思います。今年35周年を迎えますので、それにむけたプロモーションは検討しております。どうぞ楽しみにしていただければ幸いです」

取材・文/河上いつ子

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