• ORICON MUSIC(オリコンミュージック)
  • ドラマ&映画(by オリコンニュース)
  • アニメ&ゲーム(by オリコンニュース)
  • eltha(エルザ by オリコンニュース)
  • ホーム
  • ライフ
  • ハッピーセット、常に“2年先”のトレンド追いかけ35年「付属のおもちゃは“知育玩具”ではない」
(更新: ORICON NEWS

ハッピーセット、常に“2年先”のトレンド追いかけ35年「付属のおもちゃは“知育玩具”ではない」

 マクドナルドの子ども向け人気商品『ハッピーセット(R)』は、日本では1987年に初めて『お子さまランチ』として登場し、以降35年にわたり、時代時代で様々なキャラクターとコラボを果たしてきた。新作のおもちゃは月1回ほどのペースで変わり、年間1億個の販売を誇る同商品だが、その内容は常に“2年先”のトレンドを追いかけているのだという。目まぐるしく変化する子どもたちの嗜好や興味をどのようにして捕らえてきたのか、ハッピーセットの35年の変遷と進化を同社に聞いた。

最初のおもちゃ「ダイヤブロック」から35年、2年先のトレンドをどう読んできたのか

 1971年に日本の第1号店が銀座三越にオープンし、『お子さまランチ』が誕生したのは、1987年。アメリカでHappy Meal(ハッピーミール)として1979年より販売されていたものを日本にローカライズするところからスタートした。

「最初は期間限定だったものの、その後定番化しました。また、最初のおもちゃはきりん、とり、ひこうきの3種のダイヤブロックで、3種全て集めてつなげるとマクドナルドのキャラクター『ドナルド』に作り替えられるギミックでした」(マーケティング本部・ナショナルマーケティング部・佐賀貴氏/以下同)
 初期の頃は乗り物のおもちゃ、お風呂で遊べるおもちゃ、海やプールで遊べるグッズなどが多かったそうだ。また、『ハッピーセット』という名称に変わったのは1995年から。2007年には初のデジタルゲーム「マック・デジ」が話題となり、2008年にはポケモンに登場するモンスターを模した「ぴかポケ」を販売。これは1日の販売数として122万個を超える大ヒットとなった。昨年3月には『鬼滅の刃』とのコラボが大反響を呼び、各地で売切れ続出に。そのほかドラえもんや、きかんしゃトーマス、ハローキティなど、様々なキャラクターとのコラボもユニークだが、その選定はいつ頃から、どのように決まるのか。

「トレンドは常に変わっていきますので、お客様にインタビューを行ったり、3〜8歳を対象に、今どんなものが欲しいのか、緻密なトレンド調査を行ったりしながら、決めています。企画はだいたい2年前から、実際に製造に入るのは15ヵ月前から。新作は月1回ほどのペースで、1年に20前後のプロパティとコラボしてキャンペーンしていますが、常に2年先のトレンドを追いかけていることになりますね。おもちゃ業界のトレンド情報をこまめにチェックしていますが、トレンドを読むというよりも、パートナーさんなどと密にディスカッションして一緒に作っている感覚です」

売切れ続出の大人気なのにリニューアルなぜ? 「“大人が与えたいもの”を与えない」

 かくして子どもたちの心を掴むおもちゃを提供してきた『ハッピーセット』だが、実は昨年、大きなリニューアルを遂げていた。マクドナルドは、「おもちゃ」で子どもたちが夢中になって遊びながら幅広い領域への興味を深め考える楽しさを広げてほしいと考え、発達のための7つのテーマに沿って開発されることになったのだ。

「これまでは世の中のトレンドや時事的な話題を取り入れ、子どもたちに喜んでもらうにはどのキャラクターが良いか、どれがくるかを追うのが主でしたが、今はこれに加え、子どもの成長や発達にも貢献できるよう、開発しています」

 具体的には、「遊び」を通じて、言語、図形、数量、論理性、身体動作や自然科学、社会性などへの興味を深め、想像力、創造力、表現力などを考える楽しさを広げてほしいとしている。少々難しそうなイメージもあるが、大事なのは「子ども」が主体であることだ。

「『知育』は、“大人が与えたいもの”なんですよね。我々が作りたいおもちゃは、子どもたちが自分で欲しいと思えるおもちゃで、遊んだこと、体験したことで“自然と成長や発達につながるもの”なんです。ですから、子どもがどこに興味を持つか。大人の頭で考えて、『これを通して、こんなことが学べる』といったお勉強ベースのものではなく、楽しいから遊ぶ。子どもの『やりたい』『知りたい』を刺激し、夢中で遊び、体験することが自然と子どもの発達や成長につながることを考えています」
 実は、マクドナルドは近年おもちゃだけではなく、絵本や図鑑も選択肢に加えた「ほんのハッピーセット」や遊ばなくなったおもちゃを回収する「おもちゃのリサイクル」など、様々な子どもの成長に貢献する取り組みを実施している。おもちゃは幼児の発達支援の専門家・沢井佳子氏が監修。公式サイト等でも告知しているが、「知らなかった」「もっと買っていいかも」という声も届いているという。

「一番難しいのは、子どもの気持ちになりながら考えていくこと。チームのみんなでディスカッションを重ねる中で、つい大人視点になりがちですが、『それで、子どもは楽しいの?』『子どもはどう感じるの?』などと指摘・相談し合い、パートナーさんにも確認しながら、進めます。ハッピーセット担当チームは、ハッピーセット世代の子どもがいるメンバーが多いんです。だから、自分の子どもだったら?と考えますし、『〇〇さんのおうちでは、どうやって遊んでいました?』『うちは〇〇で〜』と、年齢・性別含めてそれぞれの子どもの違いもインプットできる状態になっています(笑)」

環境・安全・健康面も配慮、年間1億販売の裏に“親心”ターゲティングも

 ハッピーセットのおもちゃというと、プラスチック製のおもちゃをイメージする人は多いだろう。それも昨年9月に大きく変化している。

「2025年までに石油資源由来の原料を新規に使用したプラスチックの量90%を削減し、サステナブル素材にすることを打ち出しました。昨年5月にはくまのがっこうのペーパークラフトを、今年1月には環境に配慮した紙を使用したすみっコぐらしのパズルを出し、ご好評いただいていますが、紙でも面白く、新しいおもちゃを創造しなければいけないのはなかなか難しい挑戦です」
 ハッピーセットのおもちゃは精巧なおもちゃも少なくない。世界のマクドナルドで統一された厳しい安全基準に沿って、製造には1年以上の歳月をかけ、入念な安全性のテストを行っている。例えば、ネジを使ったおもちゃは小さなパーツの誤飲を防ぐため、簡単に分解できないよう特殊なネジを使用しているほか、食い込みや圧力などのテストも重ねている。

 そういった細やかな努力がありながらも、ハッピーセットというと、子どもは喜ぶ一方で、親は健康面から禁止したり、若干の罪悪感を覚えたりする一面もあった。子ども向け商品を買ってもらうには、子ども心だけでなく、親心も掴む必要があるのだ。昨年のリニューアル時にフードメニューも見直し、ポテトに加え、えだまめコーンやヨーグルト、サイドサラダが選べるように変わっている。
「サイドメニューを選べて栄養バランスが取れることで、お食事の機会に合わせてチョイスいただくことができるようになりました。それでも、やっぱりポテトが人気なんですけどね…(笑)」

 先月からは「がんばれ、えだまめコーン」編として、「嫌い……」「豆が入ってる……」「……(複雑な表情)」など、えだまめコーンに対する子どもたちの正直な反応を集めたCMが放送されている。

「ハッピーセットを通して家族に笑顔になっていただきたい。野菜を好まないお子様も多くいらっしゃいますし、そういった意味で、おもちゃだけでなく、お父さん、お母さんの気持ちに寄り添えるかも考えています。『ジャンクフードばかり食べさせている』と思ってしまう親御さんがいらっしゃるのも事実で、そうした親御さんたちの“後ろめたさ”を多少なりとも軽減し、『野菜を食べられる』『栄養バランスがとれる』点においても、子どもたちの味方になれるハッピーセットを提供していきたいです」


(文=田幸和歌子)

あなたにおすすめの記事

 を検索