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マンガアプリ戦国時代、“無料”サービスのその先は? 雑誌が育んだマンガ文化延命の鍵に

雑誌で育まれた日本のマンガ文化、その役割をアプリは担えるか?

 現在では主流となっているマンガの「話売り」を、業界で先駆けて導入したのもピッコマだった。これは「10話収録・500円の単行本を10分割し、1話50円で売ることで購入ハードルを下げる」ための施策であり、「待てば¥0」と同様に大いに功を奏したことは、他のアプリも続々と踏襲していることからも明白だ。

 「出版社の方はよく『マンガ雑誌やレーベルという“母艦”があったからこそ、実験やチャレンジができた』とおっしゃいます。つまり雑誌全体の予算内で、未知数の新人作家さんの作品を掲載したりできたわけですね。雑誌は新人作家さんを育て、また読者にはお目当ての作品だけではない、思いがけない出会いを提供する場でもありました。ピッコマのようなプラットフォーム型のマンガアプリにとって、そのような役割が今後発展の鍵になってくると思っています」(熊澤氏)

 かつて日本には少年マンガ誌から青年誌、少女コミック誌、レディースコミック誌など多種多様なマンガ雑誌文化があった。各誌が明確なカラーと編集方針でマンガを編纂しており、雑誌にファンがついていたのも日本のマンガ文化の特徴だった。

 「マンガアプリとして、”マンガの生態系”の発展に寄与できることはないか。その1つとして、まだ構想段階なのですが『レーベルとユーザーのマッチング』をピッコマで実現できないかと考えています。これまでも『作品とユーザーのマッチング』には取り組んできましたが、作品単体を超えて、それこそ雑誌のように編集部の意思までユーザーに届けられるような場所を作りたいですね」(熊澤氏)

当初は批判もあったマンガアプリのサービス、今では文化の延命と発展に寄与

 かつてマンガファンやマンガ業界から、批判的に見られることもあった「待てば¥0」や「話売り」。しかし、無料で終わらせないビジネスモデルは現在、紙媒体で培われてきた日本のマンガ文化を延命し、さらに発展させる要となっている。

 海賊版に悩まされている海外市場においても、集英社が2019年より全世界向けのマンガアプリ『MANGA Plus』(日本・中国・韓国を覗く)を展開し、またピッコマも昨年、日本のマンガと親和性の高いフランスに法人を設立した。

 「海外のマンガアプリを見渡すと、それらの多くは縦読み仕様で、日本の横読みマンガに対応していません。また配信される作品も限られていて、しかも配信に日本と大きなタイムラグがある。日本で実証された『待てば¥0』というビジネスモデルとともに、グローバルでより大きい市場機会をつくっていきたいと考えています」(熊澤氏)

 国内外でのマンガアプリの進化が、今後の日本のマンガ界を背負っていくかもしれない。

(文:児玉澄子)

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