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「コロナ禍の今だからこそ染みる…」老夫婦のあたたかな物語に反響、「“特別じゃない日常”が“非日常”となったからこそ心に届いた」
描いたのは6年前、コロナは想定していなかったが「“特別じゃない日常”こそが、今では“非日常”に」
「バズったときは一瞬で大きく広がって、知らない方々からもたくさんのコメントが届きました。こんなことはその時が初めてで、SNSの威力を実感して。まったく違う職業の方や現役のお母さんなど、思いもよらない方からフォローをしていただきました」
――話題になった漫画『残したいもの』は、慣れないスマホでおじいさんを撮影しようとするおばあさんのお話。とても素敵で心あたたまる内容ですが、こういった家族のお話はどういったきっかけで生まれたのでしょうか?
「明確なモデルがいるわけではなくて、『こうなりたいな』とか『こういう風に言ってくれたらうれしいな』という私の理想像を描いています。ビデオ通話の話などのシチュエーションに関しては、実体験が元になっている部分もありますね」
――今回、老夫婦や家族、子どもたちの話などが収録された『特別じゃない日』(実業之日本社)として出版されました。本書の中にも、スマホやビデオ通話の話が出てきて、まさにコロナ禍の今っぽい内容だと思ったのですが。
「書店さんや読者さんの中にも、『コロナ禍の今だからこそ染みる』と言ってくださる方がたくさんいらっしゃいました。でも実際は、連載が決まったのは6年前。当然、コロナのことはまったく想定していなかったんですよね。とはいえ、漫画に描いたような“特別じゃない日常”こそが、今では“非日常”になってしまった。だから余計に、普通に過ごせた日々の話が、皆さんの心に届いてくれたのかなと感じます。思ってもみなかったことですが、この時期に本を出せた意味ものもあるのかなって」
――そうだったんですね。現在の状況にぴったりで、驚きます。
「ビデオ通話やスマホなど、デジタルを使ったコミュニケーションを裏テーマにしているので、そういった意味でも共感していただけるのかなと思います」
幅広い世代に波及、作者自身にも影響「こんな夫婦になるためには、私も旦那に怒らず優しくしてみよう」
「普段漫画を読まない人や、かつての同僚など、リアルな知り合いからも『読んだよ』と連絡をもらったりして。書店さんにご挨拶に伺ったときにも、『SNSでチラッと見たことがあって、頭の片隅で覚えていた』という理由で手に取ってくれた方が結構いたと聞いて、今までとは違う広がり方だなと感じました」
――とても幅広い層の人が読んでくれているとか。
「年齢層を聞いたところ、書店さんではよく20代くらいの方と50代・60代くらいの方が買ってくださっているという、ちょっと面白い流れになっているみたいなんです。20代の方はSNSで知って、50代以上の方は書店で見ていいなと感じてくださったようで。漫画作品でこういう幅広い年齢層に分かれることはあまりないと聞いたので、すごくうれしいですね」
――以前はファンタジー作品を描いていたそうですが、“特別じゃない”小さな日常の世界を描いたのはなぜですか?
「結婚して環境が変化し、描くことに没頭できるようになったのと、実例が目の前にあるので『家族ものもいいな』と思うようになったのが大きいですね(笑)。考えてみたら、自分の手が届く領域や範囲って、せいぜい知人の知人までくらい。あまり広くはないと思ったので、そうした小さな世界をテーマにしてみるのもいいと思いました」
――日常を描いたことで、何か変化はありましたか?
「自分の理想を見直して、『この登場人物のようになるためには、こうしていくのがいいのかな?』など、生活の中で自分を改善していけるのは楽しいです。このおばあちゃんたちのような夫婦になるためには、私も夫に怒らず優しくしてみよう…とか(笑)。祖父母にもがんばってスマホの使い方を教えています」