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「風邪ひいてまんねん」薬包紙の風邪薬『改源』がレトロ回帰で再注目 記憶に残るCMと認知度とジレンマ

  • 「風神さん」がぬいぐるみになった新WebCM「コタツ篇」より

    「風神さん」がぬいぐるみになった新WebCM「コタツ篇」より

 1924年に誕生した「お茶で飲む風邪薬」の『改源』。1983〜2008年に放送されていた「風邪ひいてまんねん」のフレーズがおなじみのCMは、当時まだテレビでは聞きなれなかった関西弁やCMキャラクター“風神さん”のインパクトもあり、今でも視聴者の記憶に残っている。2024年に同商品が誕生100周年を迎えるにあたり、10月から懐かしのCMが復活。製造販売元であるカイゲンファーマ株式会社の狙いは? 歴史ある商品の開発秘話から、CMの反響、100周年への思いなどを聞いた。

切っても切れない“風神さん”の存在 CM復活の理由とは

  • 貴重写真、大正13年の発売当時の『改源』

    貴重写真、大正13年の発売当時の『改源』

 『改源』は1918年(大正7年)頃に創製され、1924年(大正13年)よりカイゲンファーマの前身・中西武商店が販売を開始。その商品キャッチコピーにもあるように、“風邪のひき始め”に特に効果を発揮するよう、処方が工夫されているという。

「多くの風邪薬は、せきや発熱といった諸症状を緩和する対症療法として用いられますが、回復力がなければ風邪の治りは遅くなってしまいます。自己治癒力を高めることを大切にしていることが、本品が日本で100年近くも家庭の風邪薬として受け継がれている秘密の一つではないかと考えています」(担当者/以下同)

 同商品と言えば、風の神様である“風神さん”がクシャミとともに「風邪ひいてまんねん」と関西弁でしゃべるテレビCMが有名。SNSで「私が『改源』を知ったのは、CMだった」との書き込みもあり、今でもこのCMを記憶に留めている人は多いだろう。
  • ちょっと怖い? CMでおなじみの風神さん

    ちょっと怖い? CMでおなじみの風神さん

 風神さんが初めてCMに登場したのは1983年。当時、他社製品の進出に苦戦を強いられていた同商品が、巻き返しを図るために立案されたキャラクターだったという。さまざまなキャラクター案が出される中、江戸時代の画家・俵屋宗達の描いた風神雷神図屏風の「風神」をヒントに描かれた“風神さん”が採用に。「風の神様が風邪をひく」というユーモアと、「風邪ひいてまんねん」という関西弁のインパクトも相まって、一躍人気キャラクターとなった。

「詳しい記録は残っていませんが、社内資料には『人気の旋風を巻き起こした』という表現がよく使われており、当時の人気が伺えます。最近の認知度調査では、関西の40代以上の方の認知度は90%を超えるという調査結果もあります」

 しかし、同CMは「昔ながらの古い風邪薬のイメージを払拭するために」と2008年で一旦終了。その後はタレント起用のCMが放送されていたが、今回13年ぶりに風神さんが復活することとなった。以前のようなアニメタッチではなく、可愛いマスコットキャラクターでの登場となったが、これには若い世代へのアピールが込められているという。

「『改源』の購買層の中心は高年齢化しており、若い世代で知っているのは『子どもの頃から家にあり、祖父母や父母が飲んでいたから』という層が中心になっています。昔の風神さんをよく知る方々にもう一度思い出していただくとともに、若い世代の方にも『改源』を知ってほしいという思いも込めました。風神さんを現代風のかわいいキャラにすることで、若い世代の認知度を上げていきたいと考えています」

CMで認知度が高いも関東では『改源』常備は希薄!? 一方、コロナを機に再注目も

 SNSでは「小さい時から風邪をひいたら『改源』で、この味が好きです」といったツイートが散見され、同商品が根強いファンから支持されている様子が伺える。

 ただし「西高東低」の傾向も顕著だという。2020年の売上(粉末タイプ)をみてみても、西日本は東日本の2倍と大きな差が出ている。

 カイゲンファーマは、もともと本社が大阪にあり、創業当初から大阪を拠点に販売していた。加えて、全国放送ではあったものの、テレビCMは関西エリアを中心に出稿されていたため、関西地域での知名度が高くなったと考えられる。実際のところ、関西では多くの家庭で当たり前のように、『改源』が常備されており、「風邪をひたらまず飲んでおこう」という認識が定着している。

現在の『改源』ラインナップ

現在の『改源』ラインナップ

 一方で、関東ではそれほどメジャーではない、というのが実情のようだ。
「関西人が好むような『風邪ひいてまんねん』のセリフが印象に残り、『風邪と言えば改源』というイメージがついたのではないでしょうか。関東と関西の知名度の差は少し寂しい思いがありますが、今後は地域に限らずSNSを通じて商品の良さをアピールしたいと思います」

 また、新型コロナウイルスをきっかけに、同商品が話題になったことも。昨年コロナが流行し始めた初期に、フランスのヴェラン保健大臣がTwitterで「コロナに感染したら、イブプロフェンなどの薬を飲まないように」とツイート。さらに世界保健機関(WHO)も「イブプロフェンではなく、アセトアミノフェン服用が望ましい」との内容を発表した。それらが日本国内にも広まり、アセトアミノフェン配合薬である『改源』の売上増につながったというのだ。

「昨年3〜4月の2ヵ月間は、売上が前期比の約2倍になりました。会社への問合せや量販店さんから在庫の確認を求められるなど、大慌ての日々でした」

「やっぱり全国区に…」100年変わらぬ思いをブランドとして届けたい

 風邪薬のパイオニアともいえる『改源』。商品の特徴は発売当初から変わらず、誕生から現在までほぼ同じ形態(パッケージデザイン、薬包紙など)で販売されているのも、特筆すべき点だろう。

 時代にあわせ、錠剤やカプセルなどさまざまな形でもリリースしてきたが、出荷量が最も多いのは“薬包紙”に入った粉薬。粉末の薬であることに特化してCMを流し続けてきた影響もあり、『改源』と言えば「水色のパッケージの薬包紙の風邪薬」というイメージが今でも根強く残っているようだ。

「昔から飲んでくださっているロイヤルユーザーが多いので、そのような方々からは『この薬包紙がいいよね』といった反応もたくさんいただきます」

今でも薬は『改源』の薬包紙に包まれている

今でも薬は『改源』の薬包紙に包まれている

 長年継続して飲み続けているユーザーに支えられて製造・販売しているという思いが、粉薬を「薬包紙に包む」という昔ながらのスタイルを変えないことにつながっている。これらは生産現場の励みになっていて、「今後もお客様に安定して製品を提供し続けて行きたい」としている。

「2024年に迎える100周年という節目で、再度、商品はもちろん、“風神さん”を全国区にしたい思いがあります。昨今、風邪薬は効き目の早いものが多くなっていますが、昔から親しまれてきた『優しい常備薬』として、再度市場に推していきたいと思います。さまざまな企画を検討して100年の思いを伝えていきたいです」

 長きにわたり人々から愛され続けている風邪薬。テレビCMで一世を風靡したように、今後はSNSを駆使しながら若い世代を取り込み、さらにブランドイメージを広げていくという。さらなる飛躍に期待したい。

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