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試される漫画大国・日本、「横読み」から「縦スクロール」への転換は必要か? 無視できない漫画グローバル化
好調なwebtoonにも課題、「『鬼滅の刃』のようなブームを巻き起こしたい」
「日本でモノクロの横読み漫画が成熟したのは、雑誌という媒体に最適だったからだと思うんですね。そして今は、デジタルが発表媒体の主流になった。とはいえ、作家さんも編集部も面白い作品を世に送り出し、多くの読者に読んでもらいたいという思いに変わりありません。また最近は日本でも縦スクロールに特化した作家さんが増えてきて、縦読みだからこそできる表現を追求しています。デバイスの特性と作家さんのクリエイティビティ、この2つが融合しながら漫画文化は進化していくのだと思います」
コマ割りを縦横無尽に駆使できる横読み漫画と、縦の流れでストーリーを展開させるwebtoon。こうした構造の違いによって、ジャンルの向き不向きはあるのだろうか。
「現在webtoonで人気なのは、1つは恋愛ものなど刺激的な心情に訴えかけるもの。そしてもう1つは、ファンタジーアクション。高いところから飛び降りるような、縦の流れを生かした動きを巧みに表現する作家さんは多いですね。ただ、横読み漫画に比べて1話あたりに詰め込める設定量が少ないので、壮大なストーリーを展開するには多くの話数が必要。いずれにしても新しい漫画カルチャーなので、研究の余地はまだまだありそうです」。
今後、日本でも漫画界の一翼を担っていきそうなwebtoonだが、歴史が浅いこともあり、課題もあるという。
「webtoonで連載していた作品を単行本化することもありますが、ウェブやアプリで読んでいた作品が果たして売れるのか、その懸念はあります。また、業界や漫画好きには知られていても、webtoonの認知度は日本ではまだまだ低い。幅広い世代に知っていただき、老若男女を巻き込んだ『鬼滅の刃』(集英社)のようなブームをwebtoonから巻き起こしたいですね」
課題はあれど、漫画を貪欲に追求してきた日本からも、このスタイルを取り入れて世界へと飛躍していく作家や作品が増えていくことに期待したい。
「少し前には、『こんなの漫画じゃない』と拒否感を示されていた作家さんもいましたが、最近は興味を示すベテランの方が増えています。私たちが目指すのは、あくまで魅力的なIPを創出すること。将来的にデバイスがスマホから変わっても、柔軟に対応できる体制とシステムを構築し、日本の素晴らしい漫画文化を世界へと広めるお手伝いをしたいと思っています」
(文:児玉澄子)