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“MANGA”はより世界規模に? 国境すら超えた集英社による新サービスの秘めたる可能性

デジタルが“今”と“過去”をつなぎ、新たな“未来”を作る?「才能発掘は常に至上命題」

 もう一つ、デジタル化のメリットは、若い人にも往年の名作が目につきやすくなったことだ。例えば電子コミック界では1988年〜2013年に連載された『静かなるドン』(実業之日本社)が令和の今、まさかの再ヒットを果たした。『ジャンプ+』においても過去名作は売上・人気が高く、その黎明期から同アプリの普及を助け、成功へ導く一助となった。また7月にもTikTokの紹介動画により作家・筒井康隆の1995年の小説『残像に口紅を』(中公文庫)が突然、3万5000部の緊急重版が決定した。

 このようにデジタルが“売れ方”すら変える現在、『World Maker』が漫画界、映像界などに与える影響は計り知れない。――ちなみに、こうしたデジタルの試みは既存の作家にはどう受け止められているのか。「面白いことをやっていますね、と言われました(笑)」と林氏。プロは、ここから新たな才能やライバルが生まれることは恐れていない。そもそもそれぐらいで恐れてしまうような人は“プロ”にはいない。つまり、“プロ”を目指すこと自体、容易ではない世界。それでも林氏は「過去から現在に至るまで、才能発掘は常に至上命題」と前を見て、『World Maker』に期待している。

 音楽の米津玄師(ハチ)やAdo、ハリウッドでの実写映画化が決定した漫画の『ワンパンマン』など、ネット発のヒット作、ヒットメーカーは昨今、目立ってきている。ここに同サービスが加わることで、エンタメ界にどんな変化が起こるのだろうか。海外の人がより日本の漫画に興味を持ち、さらに世界中で読まれるようになるのか。『World Maker』出身の人気漫画原作者が既存の作家を脅かす未来が来るのか。海外の才能が“MANGA”をさらに豊かにするのか。『World Maker』が生み出した新たな“世界”がどう広がっていくのか楽しみだ。

(文/衣輪晋一)

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