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青春キラキラから戦隊ものまで…“医療ドラマ”の汎用性、「あるある言いたい」ツッコミ視聴が時流

  • 『Night Doctor』(フジテレビ系)主演の波瑠と『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』(TBS系)主演の鈴木亮平 (C)ORICON NewS inc.

    『Night Doctor』(フジテレビ系)主演の波瑠と『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』(TBS系)主演の鈴木亮平 (C)ORICON NewS inc.

 今クールでは、『Night Doctor』(フジテレビ系)と『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』(TBS系)の2本の医療ドラマが放送されており、どちらの作品にも“医療ドラマあるある”的なエピソードが盛り込まれている。「まったく使えない突っ立っているだけの医師が一人はいる」「女医の恋愛はうまく行かない」「実力ある医師が過去に問題を起こしてる」「持病を抱えながら仕事してる」等々、SNSでは医療ドラマにありがちな設定や展開、現実とのギャップなどについて議論され、作品名がトレンド入りしている。こうした“医療ドラマあるある”の盛り上がりは、過去からさまざまな切り口で描かれてきた医療ドラマ自体の“汎用性”を示している。

“新たな要素”を常に提示、進化し続ける医療ドラマコンテンツ

 『Night Doctor』は、過去に同じ医療系の『コード・ブルー』が放送されていた“月9”枠。ジャンルも同じ“救命”であり、『ナイト・ドクター』とは文字通り「夜間救急専門医」。そのせいか放送当初、SNSでは両作品を比較する反響が多く見受けられた。ただ、『Night Doctor』では“医者の働き方・人生”にスポットが当てられ、波瑠や田中圭などの30代中堅どころから、岸優太、北村匠海といった若手俳優を中心に青春群像劇的側面も見せている。医師たちが住んでいる寮の屋上で宴会が催されたり、女医の部屋のゴキブリを男性医師たちが退治しようとするなど、いわば月9らしいベタな恋愛の要素も取り入れ、医療ドラマの新しい形を提示しているともいえるだろう。

 一方、『TOKYO MER』も同じく“救命”系だが、こちらはゴリゴリの“医療戦隊ヒーローもの”としてSNSでは認知されているようだ。主演の鈴木亮平は、どんな現場にも果敢に突入し、必ず患者の命を救うという正義感あふれるスーパーマンキャラ。準主役的なポジションである賀来賢人は、主人公と反目するブラック的なキャラ(MER解体の密命を受けている)でありながら、ピンチな展開のときにはカッコよく助けにきてくれたりする。また、危機管理対策室という医師たちに指示を出す司令塔のような基地?があるのも戦隊ものっぽい。コロナ禍の現在、現実の医療従事者にもヒーロー的側面があるだろうことを視聴者はリアルに感じているはず。そうした意味では時代にマッチしているドラマともいえ、視聴者の共感につながっているのではないだろうか。

コメディー、SF、ミステリー…どんなジャンルとも融合する汎用性

 そんな両ドラマだが、反響として多かったのが、「医療ドラマってこんな展開あるよね…」というコメント。たとえば、「私は大丈夫ですから…」って言う人はだいたい大丈夫じゃない/夏祭りで爆破事故/一回止血して安心したらバイタルが不安定になる/赴任した医者が過去に問題を起こしている/メンバーに病院の跡取りがいる…等々のほか、ドラマとしての定番の設定に対して、実際の医療現場ではこんなことはありえないなど、これまた定番の議論が白熱する。

 しかし、ここまで“あるある”が盛り上がるのも、過去にさまざまな医療ドラマが制作されてきたからこそ。いくつか振り返れば、「リアル追求」系として『コード・ブルー‐ドクターヘリ緊急救命‐』があり、救命治療の緊迫した状況下における医師たちの成長や、患者との物語が総合的に描かれる。また、かつての“赤ひげ系”ともいえる「人情もの」では、『Dr.コトー診療所』(フジテレビ系)などが挙げられ、技術的なリアルさや迫力というよりは、医師をとりまく周囲の人間関係にスポットが当てられている。最近では、『にじいろカルテ』(テレビ朝日系)などがこの路線だろう。

 そして、緊迫しがちな医療ドラマにも「コメディ」系があり、『ナースのお仕事』(フジテレビ系)は看護師からの視点で描かれ、先輩ナース(松下由樹)と後輩(新人)ナース(観月ありさ)のドタバタ劇がウリで、松下の「あ〜さ〜く〜ら〜!」のセリフは今でも親しまれている。変わって、欲と権力にまみれた「アウトロー」系でいえば、『白い巨塔』(フジテレビ系/テレビ朝日系)や『振り向けば奴がいる』(フジテレビ系)があり、院内の派閥争いや医療現場の闇部分が描かれ、人の命を救う“だけ”がテーマではない。

 さらに、石原さとみ主演の『アンナチュラル』(TBS系)にはミステリー要素が含まれ、司法解剖された遺体から事件を読み解いていくという「推理」系となっている。“法医学”にまでジャンルを広げれば、人気の高い『科捜研の女』(テレビ朝日系)もこれに近いだろう。最後に『JIN‐仁‐』(TBS系)も挙げておくと、現代の医者がタイムスリップするという設定から「SF」系といえるだろうが、医学的根拠に基づく医療の発展をしっかり学べるし、壮大な歴史ドラマとしての側面がある。

現実との剥離がドラマのおもしろさ、作品性を提示できないと諸刃の剣に

 こうして見ると、“医療ドラマ”は人間ドラマからコメディもの、ハードボイルド、ミステリー、SF等々、どんな要素でも取り入れ可能で、ドラマとしてはもっとも汎用性の高いジャンルといえるかもしれない。そして、どのドラマにも必ず“スーパードクター”が登場するので、大きな意味では「ヒーローもの」であるともいえる。それだけ定番化している医療ドラマだけに、観ている視聴者のほうも目が肥えており、批評意識が成熟しているので、“医療ドラマあるある”議論が白熱するのも無理はないのだ。

 つまり、医療ドラマは当たればデカい“鉄板”ながら、ディテールを外せば視聴者に酷評される可能性もあり、制作の上ではどんどんハードルが上がる一方ともいえる。今期の両ドラマは新たな要素を提示して健闘しているが、医療ドラマはある意味、諸刃の剣的な側面を持つコンテンツとなりつつあるのかもしれない。
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