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小学生にも“自己啓発本”がマストな時代に…異例ヒットの背景に“共働き世帯”増加の影響も

 女児小学生に向けた書籍『自分をもっと好きになる 【ハピかわ】かわいいのルール』が、2年前の発売ながらロングセールスを記録中だ。同作の主人公は、“ステキ女子計画”を達成するためにさまざまなマナーを学んでいく。注目すべきは自己啓発的な項目で、目次には、「心が前向きになる考え方をしよう」「ちょっとのことでイライラしてしまう…」など、メンタル的な悩みもフォローする項目が並ぶ。刊行した池田書店に、コミュニケーション力に悩む現代小学生の実態について聞いた。

「自分を好きになることが、かわいくなること」伝えるのは“心の在り方”

 近年、書店で注目を集めている女児向けの実用書「キラキラ系の児童書」。小学4〜6年生を想定読者に、“おしゃれになる”をテーマにファッションやヘアアレンジのコツを紹介したり、“モデルみたいにキレイになる”をテーマにエクササイズやダイエット法を伝授したりする内容だ。

 各出版社が、外見をキラキラさせるためのテクニックを伝授する中、池田書店の内容は一味違う。「すてき女子の新常識」をキャッチコピーに、マナー、気配り、人間関係の築き方に至るまで踏み込んだ内容を制作している。その理由は、「外見ばかりでなく、もっと内面に目を向けてほしい」という思いからだったという。

「他者から好かれるために何かをしようとか、かわいいと言われるために何かをやるのは、今の時代に合っていない印象を持ったことが企画立案のきっかけでした。外見を気にするのは悪ではないけれど、それよりも今の日本には、自分を好きになって、自分を認めて、自分らしく生きていこうという風潮があると思います」(池田書店・老沼友美さん/以下同)

 内面を磨いて、自分をもっと好きになることこそ「かわいく」なるということ。そんな心の在り方を、子どもたちに伝えているのだ。

 同書の人気に火がついたのは昨年12月、小学6年生の娘をもつ母親のTwitterへの投稿がきっかけだった。母親に持ち物チェックのお願いをする娘の手紙の内容は、相手に伝わりやすい文章とともに、「急にたのんでごめん!」という気遣いも。受けとった母親は、その成長の要因として同書の影響があることを示唆した。

 この投稿は一躍注目を集め、その後、TBS系『グッとラック!』で特集されたことによりさらに部数が伸長。編集部には、子どもたちからの「知りたいことが載っていてよかった」という声に加え、保護者からも「自分が小学生のときにこの本が欲しかった」「今の私が読んでも勉強になる」「対人スキルのマニュアルみたい!」などの声が多数寄せられたという。

情報過多な日々で過ごす子どもたち、一番のストレスは「人間関係」

 制作にあたっては、20代の若手から母親世代まで、編集部内の女性同士が話し合いながら、「自分たちが子どもの頃に知りたかった」という項目をピックアップ。それをもとに、女児小学生にアンケートや取材を実施し、実際に今の小学生が悩んでいることや知りたいと思っていることを取り上げた。そこには、意外な気づきもあったという。

「思った以上に、ルールや常識に興味があるの?と驚きました。ネットでの情報が多い中、“何が正解か”を知っておきたい心境なのかもしれませんね」

 調査結果でもっとも多かった悩みは人間関係。これは数年前と変わらない傾向だという。

「友だちや兄弟とうまくいかない、大人とどう話せばいいかわからないという悩みです。昔は手紙だったやり取りがLINEになったなど、時代の流れでツールが変化していることはありますが、対人間であることは変わりませんから」

 では、TwitterなどSNSとの関わりについての悩みはどうか。

「SNSの普及による悩みの変化も、あまり感じませんでした。今の子たちは、情報の渦の中にいるんだなということは感じましたが、学校できちんと、ネットには信ぴょう性のない情報が多いことが教えられていますし、何より、ネットは必要な情報になかなかたどり着けない。当社の本がヒットした一因には、欲しい情報を得るためには、本が手っ取り早いという理由もあったのかもしれません」

ヒットの裏に垣間見える「共働き世帯」増加の影響

 もう一つ、現代の家庭のあり方もヒットの要因になっているのではないかと老沼さんは分析する。

「核家族化とか、共働きとか、家庭環境の変化も影響しているのかもしれません。親御さんたちは、いろんなことを教えてあげたい気持ちはあれど、日常生活ではなかなか時間がとれません。さらに、編集部自身もそうですが、親世代にとって自分の知識が正解かどうかわからないことや、言葉でうまく伝えきれないこと、日常生活で、ついイライラしながら言ってしまうこともあります。
 それを本書でわかりやすく解説して、母親が教えたいと思っているリアルな情報を網羅できたことが受け入れてもらえた理由かなと思います」

 母娘で一緒に、同書の着こなし術のページを見ながらファッションショーをしたという話を耳にする一方で、「娘が一人で淡々と静かに読んでいる」という声も多いそう。

「読み終わったのに、ある日、ふと持ち出してすごく集中して読んでいた娘さんがいたそうです。親御さんは、たぶん学校で何かあったんじゃないかと話していました」

 現在は、同書のほかに言葉をテーマにした『伝える力がレベルアップUP 【ハピかわ】ことばのルール』などのシリーズ作も刊行されている。これらを通して、老沼さんは今の小学生たちにこんな思いを託している。

「とにかく自分を好きになってもらいたいんです。一人ひとりがスペシャルな存在だということを伝えて、女子だからではなく、一人の人間として、自分に自信を持てる子になってほしいです」

 子どもの悩みはいつの時代も変わらないはず。しかし時代とともに、友働きの夫婦が増えるといった環境の変化によって、親子のコミュニケーションの方法も変わっていくだろう。同書のヒットは、そんな時代性を象徴しているようだ。豊かな成長を望む親世代のためにも、こうした指南本の需要は、ますます高まりそうだ。
(取材・文/河上いつ子)

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