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広瀬アリス、“オールラウンダー”として見せつける実力 ブレイク続き「すずの姉」イメージから脱却
ドラマでみせる「画面映え」の目力、キャラの演じ分けも高評価
作中では、バイトと育児に追われてヒステリックに激高する妻、心優しく無邪気な学生、朗らかで芯の強い銀行員という3つの時代で異なるキャラクターの役どころ。アリスはこれを見事に演じ分けているほか、眉間にしわ&するどい眼光のキレ顔や、寄り目の変顔もいとわず、カメラアップでみせる表情の変化に視聴者からは「可愛さを再確認した」「目が離せない」という声も多々。Twitterでは毎回トレンド入りの反響だ。
そのアリスの起用理由について、同ドラマの狩野雄太プロデューサーは「同一人物なのに、かなり幅広い役柄を演じていただかないといけない中で、広瀬アリスさんならば、どれも上手く表現して頂けるのではないか。その演技を見てみたいと思った」と話している。
また主役を引き立てる女優としての実力については、「たとえば衣装の打ち合わせなど、しっかりと制作側の話を聞いてくださって、制作側の狙い以上の表現をしてくださいます。現場でもムードメーカーで、キャストもスタッフも全員が好きになる人間力がすごい」と大絶賛だ。
そんなアリスの本作の見どころは何と言っても画面アップでの演技だろう。夫を罵倒する鬼の表情を見せたかと思いきや、次のシーンでは女子校生時代の明るく優しい満面の笑顔で周囲を癒す。夫婦がすれ違う切ない心情も絶妙な表情で演じ、SNSでは視聴者の共感の声が多数寄せられている。彼女のさまざまな表情の変化に、視聴者は画面にくぎ付けになっているようだ。
「どっちが可愛い?」姉妹女優の壁、葛藤抱くも突き進むマイペース道
「だがファッションモデル入り、ドラマデビューは実はアリスさんの方が先」と話すのはメディア研究家の衣輪晋一氏。
「アリスさんが『Seventeen』(集英社)の専属モデルになったのは2009年。すずさんはその3年後の2012年です。ドラマではアリスさんは15歳でフジテレビの昼ドラ史上最年少ヒロインに抜擢(2010年『明日の光をつかめ』)。すずさんは、2013年の香取慎吾主演ドラマ『幽かな彼女』関西テレビ・フジテレビ系)で業界からも注目を集め、翌年のドラマ『ビター・ブラッド〜最悪で最強の親子刑事〜』(フジテレビ系)の佐藤健さんの妹役で、お茶の間にその存在を知られ始めました」
すずのブレイク後もアリスは、2015年『釣りバカ日誌 新入社員 浜崎伝助』の「みち子」役で西田敏行&濱田岳にひるまない存在感を発揮。2017年『わろてんか』(NHK総合)ではコメディエンヌの才能も高く評価されていた。とは言え、ORICON NEWSが2015年、10代から50代の男女を対象に『広瀬アリスと聞いて、思い浮かべることは?』という調査を実施した際にはやはり、「広瀬すずのお姉さん」という声が大多数を占めた。だが「映画で好演していた」「しっかりとした女優になると思う」「3枚目もきれいな役もこなすイメージ」など、この頃から確かな演技力を評価する声も少なくなかった。
つまり力はあった。それが花開いたのだろう。ドラマでは『正義のセ』(2018年、日本テレビ系)、『ラジエーションハウス〜放射線科の診断レポート〜』(2019年、フジテレビ系)、『トップナイフ−天才脳外科医の条件−』(2020年、日本テレビ系)など、主演を支える重要な役柄で印象を残すことが多くなっていく。CM出演も絶えず、2020年の「タレントパワーランキング」(日経エンタテインメント!)女優部門10位にランクインするなど(すずは8位)存在感を発揮した。
姉妹女優といえば、上白石萌音・萌歌、石田ゆり子・石田ひかりなど数多い。どうしても「どちらが活躍しているか」という見方をされがちだが、広瀬アリスに関しては「広瀬すずの姉」「○○じゃないほう」といった“呪い”からは解き放たれた印象がある。
「『わろてんか』あたりから、アリスさんが女優として“吹っ切れたな”という印象があります。姉妹で比べられることについても開き直れたのでしょうか、その後、バラエティ番組でも“姉妹ネタ”を多く披露するようになりました」(衣輪晋一氏)
女性からの支持も高い、「親しみやすさ」のポテンシャル
ほか親友の小島瑠璃子に暴露された女子力ゼロの「干物ぶり」の話題に乗っかり、妹すずとの姉妹ケンカについてもあけすけに語るなど、プライベートも臆することなく披露する。ダウンタウンら芸人が出演する番組の盛り上げ役として出演する機会も多く、SNSや番組で披露するクオリティの高いモノマネも好印象だ。
「引き出しが多く、コミュニケーション力もリアクションスキルも瞬発力も高い。取材時の対応の丁寧さやサービス精神で、取材陣からもウケが良い。演技の実力と、こうした“親しみやすさ”のギャップは、女優としてのミステリアスさが薄れるという意味で諸刃の剣ですが、アリスさんは演じた役のイメージを引きずらないので、それがいい方向に作用しています。あれだけの美人で、クセの強い役柄を演じても女優として“透明性”を保っていられるのは稀有。だからバラエティに出演しても、女優としてのオーラが損なわれないのではないでしょうか」(衣輪晋一氏)
また芸能人兄弟・親子の共演にNGが多い中、広瀬姉妹には共演があることも「テレビの常識がお茶の間やSNSで“不自然”と指摘されることが多い昨今、好感度につながる理由になっているかも」と衣輪氏。東京ガールズコレクションで共演したほか、2020年にはリモートドラマ『Living』(NHK)で女優としても共演。また今年、富士フイルムの新CM「お正月を写そう♪2021 くつろぎ新年会・遊べるチェキ」篇では、堺雅人に「私たち姉妹のどっちが好きですか?」と姉妹で迫る芝居を見せ、過去のコンプレックスを“ネタ化”することに成功している。
近寄りがたい女優のイメージではなく「同年代の親しみやすさ」を獲得した広瀬アリス。彼女はまだまだ26歳。その実力と“透明性”で、今後も幅広い活躍を見せてくれるはずだ。
(文/中野ナガ)