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(更新: ORICON NEWS

「低くて太い」伊藤沙莉の声の需要、起用増加に見る“脱・品行方正”CM界の変化

  • CM起用社数が増加する伊藤沙莉(写真:田中達晃/Pash)

    CM起用社数が増加する伊藤沙莉(写真:田中達晃/Pash)

 現在、メルカリや『伊右衛門プラス』など、数多くのCMに起用されている女優・伊藤沙莉(さいり)。先日発表された『タレントCM起用社数ランキング』(ニホンモニター)でも、TOP10にこそ入らなかったものの、『2020年躍進したタレント・2021年注目のタレント』に選ばれている。女優としての活躍が影響しているのはもちろんだが、なぜここまで伊藤はCM界で躍進しているのか。彼女の低音ハスキーボイスと、CM界の変化を読み解く。

2020年で6社、CM界で躍進する伊藤沙莉

 『タレントCM起用社数ランキング』では、嵐のメンバー5人が男性タレントTOP5を独占するなどして話題になったが、その中で『2020年躍進したタレント・2021年注目のタレント』についても記載があった。そこに上がっていたのが、伊藤沙莉だ。彼女は、2019年総合では2社にCM起用され、2020年上半期で4社、2020年総合になると、なんと6社が起用と劇的な躍進を遂げている。女性タレントTOP10入りこそ叶わなかったが、サントリー食品インターナショナル、大東建託、東京ガス、日本マクドナルド、TVerと6社のCMに出演し、視聴者にも馴染みの深い存在となった。伊藤といえば、あの“低音ハスキーボイス”が特徴だが、そんな彼女がなぜここまでCM界で需要が高いのだろうか。

 伊藤沙莉は2003年に子役(9歳)としてデビューし、これまで多くのドラマや映画で活躍してきた“ベテラン”であることは、最近のブレイクによって知った人も多いだろう。ドラマ『14ヶ月〜妻が子供に還っていく〜』(日本テレビ系)でデビューした後、『女王の教室』(同/2005年、11歳時)では、生徒側の主役格・志田未来をいじめる役を好演。以降、主に脇を固める役を演じながら、2016年に映画『全員、片想い』で主演を務める。2018年には、新垣結衣主演ドラマ『獣になれない私たち』(日本テレビ系)で主人公の部下役として、パワハラ体質の職場に怯えながらも主人公にうまいこと仕事を押しつける…という今どき風な難しい役を演じた。「たしかにこういう若い社員、いそうだな…」と視聴者に思わせつつ、「でも、ちょっと可愛いかも…?」と、その低音ハスキーボイスとともに、どこか気になる女優として認知度を高めたのである。

 2019年はドラマ『これは経費では落ちません!』(NHK総合)、映画『生理ちゃん』などに出演、2020年はドラマ『いいね!光源氏くん』(同)と映画『タイトル、拒絶』で主役を演じた。今年は、テレビアニメ『映像研には手を出すな!』(同)で声優としても主演を務めるなど、完全に若手演技派・個性派女優としての地位を確立し、先述のようにCMでも彼女の姿を見る機会が爆発的に増えたのである。

高く可愛らしい声ばかりのCMの中で、「引っかかる」低音ハスキーボイス

 ただ、そんな彼女のCM起用が増えたのは、単に“躍進する若手女優”というだけではないように思える。そのもっとも大きな要因は、例の“低音ハスキーボイス”なのではないだろうか。

 現在、毎日のように目にするメルカリなどのCMにしても、伊藤の低音ハスキーボイスはやはり耳に残り、インパクトを残す。低く太い声といっても男性のそれとも違い、どこか異質な響きが漂い、良い意味で引っかかる。つい振り返りたくなってしまう声であり、たとえCMの映像を見ていなくても、「ああ、伊藤沙莉の声だな」、「メルカリのCMだな」と、視聴者の関心を引きつける力があるのだ。結果、否応なしにそのCMを認識することにもなる。起用社数ランキングを見てもわかるように、CMに出演する女性タレントの声は総じて高く、可愛らしいものばかり。そんな中で、やはり伊藤の声は目立つのだ。

“品行方正”からインパクト重視へ、伊藤の起用から見えるCM界の変化

 これまでのCMでは、“品行方正”、“キレイ”といった要素が重視されており、タレントのルックスやビジュアル、声も、それに即したものだった。とくに女性タレントにはその傾向が強かったが、CMで紹介する商品やサービスに対して良い印象、明るい印象を持ってもらうためには、当然の戦略とも言える。

 しかし近年、日清食品などに代表されるように、CMは品行方正の枠からはみ出すようになってきた。たとえ一部にはウケが悪くても、良きにつけ悪しきにつけ、視聴者にインパクトを残すことを重視する。こうした流れも、SNSによるバズり、話題の拡散が大きく影響しているのだろう。伊藤の「ひっかかりのある声」もまた、そうしたインパクトを求めるCM界の流れにハマったと言える。そもそも、いくらキレイで品行方正なCMを制作したとしても、起用タレントに不祥事でも持ち上がればアウトであり、そのぶん反発も激しくなるのは、近年でも証明されている。

 「とにかく可愛いセリフが似合わない」、「声のせいでいじめっこ役ばかりだった」として、伊藤自身もコンプレックスに感じていたという低音ハスキーボイス。しかし同時に、「声で覚えてもらえることも多い」、「この声だって武器」と、今では本人も前向きにとらえているようだ。

 「武器」といえる特徴的な声の伊藤を起用し、商品やサービスを「引っかかりのあるもの」としたCM。そういう意味では、伊藤と起用企業とは互いにウイン×ウインの関係にあると言ってもいいだろう。さらに言えば、彼女の低音ハスキーボイスの需要の高まりは、これまでのCM界の定石を覆し、新たなる時代へと入っていく変化の兆しなのかもしれない。

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