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日本初上陸から四半世紀…コーヒーが“国民的飲み物”になった『カフェモカ』の功績
ロゴ入りカップに緑ストロー トレンドの象徴だった“シアトル系コーヒー”
“シアトル系コーヒー”は、その名の通りアメリカ・シアトルを中心に発展したコーヒー。
「アメリカ経済の中心となるのはニューヨークのある東海岸。ニューヨークの始業9時に合わせると、西海岸のシアトルは時差で3時間ほど早く始業することになります。そのため朝早くコーヒーを飲みたい方が多く、1990年頃からスターバックス コーヒーやタリーズ、シアトルズベストなどの競合がひしめき合い発展していきました」(マーケティング本部・グループ長・工藤和幸氏)
「当時コーヒーを飲むときは喫茶店でカップに入ったものを飲むのが主流で、あまりテイクアウトで飲む習慣はなかったんです。それが、ロゴのついた紙カップを持って歩くという新しいスタイルがトレンドになっていきました」(工藤氏)
銀座という流行発信地にスターバックス コーヒーやタリーズが出店したことで、相乗効果で発展。トレンドをいち早く取り入れられる場となった。今では当たり前となった冷たいドリンクに使用されている緑のストローも、タリーズの創業者・松田公太氏が他店との差別化のために取り入れたのが起源。“ロゴ入りカップに緑のストロー”は、その後の定番となった。
“ブラックが苦手層”が好む 映えの元祖にもなった『カフェモカ』
「海外文化に敏感な方が多いビジネス街やオフィスビルに店舗を構えるケースが多かったですね。出勤前のモーニングコーヒーはもちろん、午後ひと息入れたい時には『カフェモカ』などの甘いものを注文されるビジネスパーソンもいらっしゃいました」(広報チーム・山口さほり氏)
『カフェモカ』は、シアトル系コーヒーの代表的な飲み物の1つ。エスプレッソに牛乳を入れた「カフェラテ」に、チョコレートをプラスしたのが『カフェモカ』だ。チョコレートの甘みが加わるため飲みやすく、それまでコーヒーを飲めなかった層にも浸透することに。さらに当時ホイップの乗ったドリンクは珍しかったため、オシャレでデコラティブな飲み物として10代や20代の若年層にも人気を集めることになった。
「発売当初カフェモカを楽しんでいただいていた方も、年齢を重ねて甘いものを好まなくなったり、カロリーを気にしたりと、味覚も変化していると思います。そういった方たちにも、もう一度楽しんでいただきたいという思いを込めました」(工藤氏)
ビジュアルを含め大胆に変更された新商品。『カフェモカ』の象徴だったホイップをなくし、シンプルかつ味わいの変化が感じられるものに。味覚に敏感な日本人の舌に合わせ、まずはクーベルチュールチョコの香りと食感、そしてミルク、さらに飲み進めるとコーヒーのコクと苦さが混ざり合う味わいにした。当時流行の象徴としてカフェモカを飲んでいた40代〜50代にも、再び楽しんでもらえる味を目指したという。
「『カフェモカ』は常に愛され続けてきた飲み物。今後も、どんな世代でも、どんな時代でも飲み続けられる飽きられない味を追求したいと思っています」(工藤氏)
1杯のコーヒーがもたらす“当たり前の風景”「日常がある場所=カフェ」
タリーズでは、2004年にカフェとしては初めて病院内への出店をスタート。カフェで1杯のコーヒーが飲めることで、病院内にいても街の風景を感じられると大きな反響を呼んだ。
「患者さんだけでなく、お見舞いに来た方や、職員の方など、多くの方に利用していただいています。入院して人と話す機会の少なくなった患者さんから、『カフェに行く楽しみができた』と言っていただいたり、『店員さんと世間話をしたのが癒しになった』という声も。コロナ禍で大変な思いをされている医療従事者の方にも、少しでも安らぐ時間をお届けできたらと思っていますし、今後も病院内店舗は大事にしていきたい取り組みです」(山口氏)
コロナ禍の緊急事態宣言時には休業を余儀なくされ、厳しい状況が続くが、こういう時だからこそ、コーヒーで日常を感じたり、癒しを感じてほしいと山口さんは話す。
「コーヒー豆や抽出器具の需要も増えています。フードも含めたほとんどの商品がテイクアウトできるので、今まで通りコーヒータイムを楽しんでいただきたいですし、当たり前が当たり前でなくなった時代に、当たり前のもの(時間)を提供し続けていきたいと思っています」
喫茶店ブームに続き、より身近な飲み物としてコーヒー文化を発展させた“シアトル系カフェ”。「苦いブラックコーヒーを飲むのがかっこいい、大人の証」という意識が、ラインナップ豊富なシアトル系コーヒーの登場により、コーヒーを飲む性別も年代も大きく広げたことは間違いない。日本上陸から四半世紀、海外のおしゃれな飲み物だったコーヒーは、今や日常に欠かせないドリンクに。今後も、“当たり前の存在”として、我々に寄り添い続けてくれるはずだ。
(取材・文/辻内史佳)