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“柱”への憧れは低い自己肯定やコンプレックスの裏返し?『鬼滅の刃』“推しキャラ”に見る心理分析

問題抱える“柱”への憧れ、低い自己肯定やコンプレックスの裏返し

――他の柱の面々はいかがでしょう?

 「伊黒小芭内(いぐろおばない)さんは、最後に愛を貫いたところが最大の魅力。生まれた瞬間から自分の存在を肯定できないという悲しい生い立ちですが、今の時代、虐待やいじめなど、様々な事情で自分の存在を肯定できない人が多いんです。そういう人たちにとって、伊黒さんが蜜璃ちゃんという真実の愛に出逢えたことは、ある種の希望に繋がるんだと思います。

 不死川実弥(しなずがわさねみ)さんは、弟を死なせたくないからこそ、『おまえに才能はない』と言い続ける。最初に登場したときからとても乱暴に見えますが、それも優しさの裏返しなんです。本当は優しい思い、温かい思いを持っているけれど、不器用なために表現できない。それをもどかしく感じているような人は、とても共感できるキャラでしょうね。

 甘露寺蜜璃(かんろじみつり)ちゃんは、自分の感情に対してとても素直。大食漢で力が強すぎて、男性に受け入れてもらえない彼女は、鬼殺隊という自分の能力を認めてもらえる場所を探し当てました。自分の居場所を獲得できるということは、現実社会においてもとても重要なことですよね。学校や職場で本来の自分を出せずに悩む人、居場所があるように見えても実は満足していない人…そんな人は多いと思います。コンプレックスを生かして幸せをつかむというのは、すべての人にとって希望の光と映るでしょう。

 宇随天元(うずいてんげん)さんは、最後の忍びの一族で、自由人のように見えて家柄に縛られたストイックな人。彼の魅力は、自分が守るべき命の順番をしっかりと決めているところ、3人の妻への究極の愛です。抑圧されて育ちながらも自己主張ができる、その生き方に胸を打たれる人は多いでしょう。

 悲鳴嶼行冥(ひめじまぎょうめい)さんは、一番守りたかった子どもたちに誤解されたというトラウマがある。それでいて怒ったりせず、強さをひけらかすこともなく、誰よりも包容力があります。派手さはないけれど、悲鳴嶼さんの質実剛健な部分に憧れる人もいるでしょう」

正と悪が拮抗し、時には裏返る…東洋的なキャラクターたち

――黒死牟(こくしぼう)、猗窩座(あかざ)、童磨(どうま)など、鬼ながら人気の高いキャラクターも存在します。鬼を好きだという人は、どんな理由で惹かれるんでしょうか。

 「私たちにも、悪いところが1ミリもない人なんていませんから(笑)、その心理からも鬼の強さと、堂々とした悪さに惹かれるのだと思います。なんの躊躇もなく悪いことをする鬼を見ていると、ついスカッとしてしまうのです。また、鬼たちに共通しているのが、強さ、そして生きることへの執着です。鬼舞辻無惨(きぶつじむざん)などは典型的ですが、何か成し遂げたいことがあるわけではなく、ただ生きることに執着している。そのシンプルな生き様は、しがらみの多い日々を生きる人にとっては憧れに映るのかもしれません」

――自分を投影できるキャラクターの多い『鬼滅の刃』ですが、この作品が今の日本でここまで反響を得たのはなぜだと思いますか?

 「よく言われるのは、アメリカ映画を代表とする西洋的思想では、正義と悪が明確にわかれていて、混じることはありません。ですが日本は、数多くの神様が存在し、仏様をはじめ様々な宗教を包括している。アジアを中心とする東洋思想は、正と悪が拮抗したり、時には裏返ったりすることがあるんです。

 『鬼滅の刃』に出てくるキャラクターは、みんな元は同じ人間で、柱になったかもしれないし、鬼になったかもしれないという微妙なところが東洋的なんです。特に日本では、悪人だとしても亡くなった後は仏様として供養します。たとえ悪人=鬼でも、その裏側にはそうならざるを得なかった不幸があった…という描き方が、日本人の心に響くんだと思います。炭治郎の『醜い化け物なんかじゃない。鬼はむなしい生き物だ、悲しい生き物だ』というセリフに象徴される、それこそがこの作品の根底にある魅力でしょう。今は、ネットやSNSなどでもちょっと失言するだけで炎上する時代。相手の心の痛みをおもんばかる、そんな優しさや強さを、この作品から得てほしいですね」

(文:川上きくえ)
【プロフィール】
浮世満理子(うきよ・まりこ)
全心連公認上級プロフェッショナルカウンセラー/メンタルトレーナー。大阪府出身。『アイディアヒューマンサポートアカデミー』学院長。『全国心理業連合会』代表理事。『全国SNSカウンセリング協議会』常務理事。トップアスリート、芸能人、企業経営者などのメンタルトレーニングを手掛ける。『子どもの可能性を120%引き出す! メンタル強化メソッド 50』、『チームを120%強くする! メンタル強化メソッド 50』(実業之日本社)、『LINE上手 ビジネス・私生活で相手の心理をつかむ!』(徳間書店)など、著書多数。『週刊まるわかりニュース』(NHK総合)、『関ジャニ∞のジャニ勉』レギュラー出演(関西テレビ)、『newsZERO』(日本テレビ系)などメディア出演多数。
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