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「盲目でガリガリ」多頭飼育から救われた猫、仲間猫と家族に助けられ幸せに
49頭もの多頭飼育崩壊の現場から、助け出された猫
「もう、健康な子は誰もいないんじゃないかというくらい、みんな何かしらの病気を持っていました。私たちも、当初は下見だけのつもりだったのですが、翌日まで生きられるかどうかわからない子が3匹もいて、すぐに病院へ連れて行きました。中には5歳か6歳の大人の猫なのに、体重が1.2キロほどしかない子もいて。そのうちの1頭、メンメはガリガリで眼球がなかったのですが、それでもマシなほうだったんです」と、溝上氏は悲惨な現場を振り返る。
保護当時のブログを見ると、あまりの猫の多さにボランティアメンバーたちが途方に暮れた様子が書かれている。医療費や保護費用がどれだけかかるかもわからない。どんなに猫に愛情を持っていても、経済力や体力などがないと、多頭飼育は崩壊を招くケースが多く、猫からも人からも幸せを奪っていく。少ないフードでは栄養が足りず、健康を損ね、病気やけがをしてもケアされない場合が多い。そして劣悪な環境にもかかわらず、増え続けてしまうのだ。
厳しい環境の中でも、助け合って生きる猫たち
「周りにいる猫たちが、弱い個体を助けることは実はよくあることなんです。足がない子がおしっこをした後、ほかの猫が砂をかけてあげることもあります。猫たちがコミュニケーションを取って、しっかり助け合って生きているという場面には何度も遭遇しました」と溝上氏。そんな助けもあり、『ねこけん』で保護してからは、メンメは少しぽっちゃりした元気な猫となった。
「もともと猫は、あまり目が良くないんです。たとえ目が見えなくても、ここにご飯がある、ここに段がある、ここに爪とぎがある、とわかってくると、見えている状況と変わらず動けるようになる。目が見えないまま外で生き抜いていた猫を保護したこともありますからね」。
メンメの幸せに涙…ありのままを受け入れる家族と出会えた
だが、ある日そんなメンメを家族に迎えたいという夫婦が譲渡会に現れた。彼らはメンメが多頭飼育崩壊から保護されたこと、目が見えないこと、すべてを理解したうえで「ぜひ家族に迎えたい」と申し出たという。しかもその理由は、「目が見えなくてかわいそうだから」という同情ではなく、「メンメが可愛いから家族に迎えたい」というものだった。さらに1頭では寂しいだろうと、警察署から保健所へ送られそうになったところを保護した猫『鎮座』と一緒に。メンメを家族に迎え入れた夫婦は現在、アメリカンショートヘアの多頭飼育崩壊から保護された1頭も加え、3匹との生活を楽しんでいるという。
「猫ちゃんが飼える環境であれば、仲間がいることは決して悪いことではありません」という溝上氏。『ねこけん』の保護猫譲渡の条件には、「一般家庭での飼育は4頭まで」と決められているが、条件さえクリアしていれば問題はない。
「メンメがキャットタワーに登れた」「鎮座と追いかけっこができた」と、メンメを迎えた夫婦は涙を流して喜んでいるそうだ。そして、そんな報告を受けた『ねこけん』メンバーも、ほっと胸をなでおろしている。目が見えなくても、何だってできる。メンメは今、新しい家族とともに愛情にどっぷり浸かった生活を送っている。
(文:今 泉)
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