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骨盤はぐしゃぐしゃ、足も骨折…高額治療に二の足を踏む世話主 他人事ではない”家族”への覚悟
交通事故で被害に…よろよろと腰が抜けたように歩く猫
ブログには書かれていなかったが、「実は、普段からこの猫にご飯をあげていた男性から、相談を受けたのが始まり」だと溝上氏は振り返る。「猫ちゃんが事故に遭ったとき、その方は病院に連れていくことも考えたそうですが、かなり大きな金額がかかってしまうため、二の足を踏んでいたそうです。そこでうちに相談に来たので、『費用のことはあとで話し合えばいいので、まずは病院に連れていきましょう』と伝えました」。
事故に遭った猫は、見るからに重症。腰の骨が折れていた場合、かなり大きな手術になることは目に見えている。とはいえ『ねこけん』にとって、「助けない」という選択肢はなかった。ブログにも、「助けておいて、お金がないとか時間がないとかで、治療しないという選択はないよね。まだこの子の正確な状況や状態もわらかないうちに、『無理!』とかないよね」と、溝上氏がメンバーにハッパをかけたことが記されている。
手術は無事に成功し、1ヵ月もすれば歩けるようになるとのことだった。保護したときの様子から、人に慣れてない猫かと思われていたが、事故に遭ったショックで痛くて怖くて人に近づけないだけだったようだ。ちなみに、治療費はすべて『ねこけん』が負担した。
猫たちの治療費はどうやって工面?「寄付だけに頼らない仕組みづくりを」
「このときも、『ねこけん』に相談しにきた方は手術の費用を工面することは難しかったのですが、とてもいい方だったんです。うちで医療費をすべて負担すると伝えたときも、涙を流しながら『なぜ、そこまでしてくれるんですか?』とおっしゃっていました。お金はありませんでしたが、猫ちゃんに対する愛情がとても伝わってきました」。
このように、『ねこけん』で保護した猫のけがや病気の治療をする機会は、決して少なくない。それにはもちろん費用がかかるわけだが、どのように調達しているのだろうか。
「『ねこけん』では、寄付だけに頼らないことを基本理念にしています。もちろん、寄付はくださる方のお気持ちですのでありがたくいただきますが、期待して待つものではないと思っています。だから私たちは、寄付だけに頼るのではなく、自分たちでも経営が回るような仕組み作りをしています。例えば、千葉支部で行っている出張オペ。これは、1頭につき約4千円で手術し、獣医さんに支払った金額以外の部分を使って『ねこけん』のイベントを開催するもの。これを資金にして、安定した運営が出来るように努力しています」
「保護した猫を助けるためなら100万円かかってもいいと、普段から言っています。そういう活動をするためには体力も必要ですからね」と溝上氏は言い切った。「それが私たちの責任」と、猫たちを守る立場だからこその決意を語る。
腰に大けがをした猫は、相談をしてきた人が引き取った。その人の家族とともに、安心した場所で幸せに暮らしているという。
(文:今 泉)
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