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今の時流にマッチした生き方を提唱? キャンプ未経験の担当編集が語る“ヒロシのキャンプ本”のヒットの背景

 学研プラスから出版された書籍『ヒロシのソロキャンプ 〜自分で見つけるキャンプの流儀〜』が好調なセールスを記録している。同書はお笑い芸人で、近年ソロキャンパーとしても注目を集めるヒロシが、自身のキャンプ道具や実践術を紹介しながら、“ソロキャンプの魅力はどういったところにあるのか”というのを伝える内容。コロナ禍でソロキャンプの需要の高まりもあり、キャンプ本としては異例のヒットとなり話題を集めている。

失敗なしではソロキャンプは成り立たないというメッセージ

 同書は8月6日に発売され、3刷りが決定したのはその翌日だったという。近年人気のソロキャンプ本だが、その中でもこの反響は異例の状況だといえる。書籍の編集を手掛けた学研プラスの趣味・実用コンテンツ事業部 書籍出版事業室の米本奈生氏も「我々としても“ある程度は売れる”という確信はあったものの、ここまでとは予想していませんでした」と振り返る。

「書籍の販売と前後して、ヒロシさんの人気がさらに高まっているのを実感しています。というのも販売部数が伸び続けている中、ヒロシさんのYouTubeチャンネル登録者数はそれを超える勢いで増え続けています。初刷りの段階では帯に“YouTube登録者数80万人”と記載しましたが、2刷り目で84万人、3刷りの段階では85万人を記録。今では90万人を突破しています(取材した9月9日現在)。ヒロシさんのYouTubeを見て、それをきっかけに、たくさんの方がこの本に興味を持ってくれているのを感じます。逆に、本を読んで『ヒロシのYouTubeをのぞいてみよう』と思ってくれる方がいたら、いち編集者としてとてもうれしく思います」
 新型コロナウイルス感染拡大防止のため、多くの人がひとり時間を過すことを余儀なくされている。その中で3密を避けられるソロキャンプが注目を浴びたが、米本氏は「ヒロシさんの生き方は今の時流にマッチしている」と見ていたという。

「特に今はコロナの影響で、強制的に1人の時間を過ごさなくてはいけない状況が続いています。孤独でストレスを感じている人もいれば、逆に人付き合いから開放されて、楽になったなと感じている人もいる。『1人で過ごすってなんだろう、1人で生きるってなんだろう』とみんなが考え始めた中で、ヒロシさんは以前からキャンプを通じ、ひとり時間を最大限楽しんでいる人でした。この本は、ある種“こういう生き方もある”と教えてくれる内容だと思います。だからこそ多くの皆さんに共感してもらうことが出来たんじゃないかと」

 ヒロシが本の制作に関わった期間は1年以上。同書は彼が所持するキャンプグッズの紹介をメインにした内容だが、“キャンプ初心者にも分かりやすく伝わるように”と随所にヒロシのアイデアが盛り込まれているという。

「キャンプグッズをただ紹介するだけではなく、ヒロシさんの道具選びの紆余曲折が本の中には書かれています。『これを買ったんだけど失敗した』などしっかりと反省ポイントも綴ってあります。そこには多分、“失敗なしではソロキャンプは成り立たない”“世間でいいと評判の道具が、自分に合うとは限らない”というヒロシさん流のメッセージが込められているんだと思います。自分だったら、どういうアイテムを選ぶかなと妄想できるし、ヒロシさんのキャンプを追体験できるような一冊に仕上がっています」

ヒロシの中で本のビジョンがはっきりと頭の中にあった

 近年のキャンプブームを受け、入浴施設や電源の用意、綺麗なトイレや炊事所の設置、場内にアクティビティ施設を作るなど、設備の整たキャンプ場が増え始め、キャンプを行なう上でのハードルが下がったと言われている。それによりキャンプ人口が増加傾向にあるが、米本氏自身はキャンプ未経験者だという。キャンプへの思いが強いヒロシと書籍を作り上げる中で、温度差の違いに戸惑うことはなかったのだろうか?

「キャンプを趣味として楽しんでいる男性編集者と、キャンプ未経験の私が編集を担当したんですが、ヒロシさんって本当にすごいなと感じたのはどっちの話にも合わせてくれるところ。ツウな話もとことん楽しむけれど、キチンとキャンプ素人の目線にも合わせてくれるんです。『あの製品のあそこがすごい』とコアな話もしつつ、『これは100均で買えるし、もしキャンプで使わなければ家で使えばいいじゃん』などすごく丁寧にお話しをしてくださいました。ヒロシさんにとっては山で1人で焚き火をすることもキャンプだし、例えばベランピングでカジュアルに楽しむのも、“自分がキャンプだと思ったらキャンプ”と考えている人です。どんなスタイルも受け入れてくれるし、ヒロシさんのキャンプの定義が広いので、書籍を作る上で温度差を感じることはなかったですね」

 本を作る上で米本氏はヒロシの熱量の高さをいくつもの場面で感じたという。

「校了のぎりぎりまで、ヒロシさんが一文字一文字まで読み直して、書き直してを繰り返していました。それでも最後までしっかりと作り上げることが出来たのは、ヒロシさんの中で、『こうしたい』というビジョンがはっきりとあったから。明確な意図がないままひっくり返されると、編集者として困惑してしまう場合もあります。けど、ヒロシさんはそういうのは決してなかったですね。『もっと初心者にわかりやすくするために説明を足したい』とか『後書きが物足りないから、もっと自分の思いが伝わるように書き直したい』など、とにかくヒロシさんの頭の中に、本のビジョンがしっかりとあったように思います」

“自分の居場所がない”と感じている人に読んで欲しい

 しかし、ヒロシのこだわりが強かった分、時には編集サイドと意見が衝突してしまったこともあったという。それは書籍を販売する上で、重要な役割となるカバーデザインについて話をした時だ。

「カバー周りはお互いのこだわりとこだわりがぶつかって激しくセッションをしました。ヒロシさんは『極端な話、自分は映っていなくていい、焚き火のかっこいい雰囲気が出せれば問題ない』と仰っていて、その一方で編集部としては、ヒロシさんの顔がはっきりとかっこよく映っている写真をカバーで使いたいと考えていました。“どうしようかな”と模索する中で、着地点になったのが、初刷りに限定の超特大帯を付けるというアイデアです。それがすごく注目を集めて、予約が殺到したり、発売日にファンの方から初刷りを探し求めてくれる、いうアクションが生まれました。ほかにも“ステッカーがもらえる応募者全員サービスをつけてみる”とかも、意見が違ったところから話が膨らみ様浮かんできたアイデアです。大変だったけれど、ぶつかったことは結果よかったことだと思っています」
 文章の1つ1つにも、ヒロシのテイストが存分に反映されている。結果、それがいいスパイスとなり、本の仕上がりを高めていという。

「最初はもう少しさらっとグッズを紹介するような内容でしたが、書き直す度にヒロシさんの味が足されていきました。クスッと笑えるところが、どんどん増えてきて、さすが芸人さんだなと感じました。校了が迫った中で『書き直したい』と言われて『これは大変だ』と思うこともあったけれど(笑)、しっかりと最高の文章と感動で返してくださいました。きちんとこだわるべくところにこだわってくださったので良いものが出来たと実感しています」

 キャンプ未経験の米本氏もそんなヒロシの書く原稿にワクワクしながら楽しんで編集作業を行なっていたという。最後に米本氏は同書のこんな楽しみ方を提案してくれた。

「今、“自分の居場所がない”と感じている人だとか、逆に“煩わしい人間関係に疲れて1人になりたい”と思う人に腰を据えて読んで欲しいですね。この本はヒロシさんが自身のソロキャンプの原点を明かす所から始まり、『今はひとり焚き火をみてる これが俺の最高の贅沢』という言葉で締めくくられているのですが、ヒロシさんは人生の中で“自由”というものを“キャンプ”を通じて手に入れたのだと思います。そんなヒロシさんの生き様を通じて、読む人が何か新しい価値観を感じ取ってもらえたらうれしいですね」

(取材・文/中山洋平)

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