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今の時流にマッチした生き方を提唱? キャンプ未経験の担当編集が語る“ヒロシのキャンプ本”のヒットの背景
失敗なしではソロキャンプは成り立たないというメッセージ
「書籍の販売と前後して、ヒロシさんの人気がさらに高まっているのを実感しています。というのも販売部数が伸び続けている中、ヒロシさんのYouTubeチャンネル登録者数はそれを超える勢いで増え続けています。初刷りの段階では帯に“YouTube登録者数80万人”と記載しましたが、2刷り目で84万人、3刷りの段階では85万人を記録。今では90万人を突破しています(取材した9月9日現在)。ヒロシさんのYouTubeを見て、それをきっかけに、たくさんの方がこの本に興味を持ってくれているのを感じます。逆に、本を読んで『ヒロシのYouTubeをのぞいてみよう』と思ってくれる方がいたら、いち編集者としてとてもうれしく思います」
「特に今はコロナの影響で、強制的に1人の時間を過ごさなくてはいけない状況が続いています。孤独でストレスを感じている人もいれば、逆に人付き合いから開放されて、楽になったなと感じている人もいる。『1人で過ごすってなんだろう、1人で生きるってなんだろう』とみんなが考え始めた中で、ヒロシさんは以前からキャンプを通じ、ひとり時間を最大限楽しんでいる人でした。この本は、ある種“こういう生き方もある”と教えてくれる内容だと思います。だからこそ多くの皆さんに共感してもらうことが出来たんじゃないかと」
ヒロシが本の制作に関わった期間は1年以上。同書は彼が所持するキャンプグッズの紹介をメインにした内容だが、“キャンプ初心者にも分かりやすく伝わるように”と随所にヒロシのアイデアが盛り込まれているという。
「キャンプグッズをただ紹介するだけではなく、ヒロシさんの道具選びの紆余曲折が本の中には書かれています。『これを買ったんだけど失敗した』などしっかりと反省ポイントも綴ってあります。そこには多分、“失敗なしではソロキャンプは成り立たない”“世間でいいと評判の道具が、自分に合うとは限らない”というヒロシさん流のメッセージが込められているんだと思います。自分だったら、どういうアイテムを選ぶかなと妄想できるし、ヒロシさんのキャンプを追体験できるような一冊に仕上がっています」
ヒロシの中で本のビジョンがはっきりと頭の中にあった
「キャンプを趣味として楽しんでいる男性編集者と、キャンプ未経験の私が編集を担当したんですが、ヒロシさんって本当にすごいなと感じたのはどっちの話にも合わせてくれるところ。ツウな話もとことん楽しむけれど、キチンとキャンプ素人の目線にも合わせてくれるんです。『あの製品のあそこがすごい』とコアな話もしつつ、『これは100均で買えるし、もしキャンプで使わなければ家で使えばいいじゃん』などすごく丁寧にお話しをしてくださいました。ヒロシさんにとっては山で1人で焚き火をすることもキャンプだし、例えばベランピングでカジュアルに楽しむのも、“自分がキャンプだと思ったらキャンプ”と考えている人です。どんなスタイルも受け入れてくれるし、ヒロシさんのキャンプの定義が広いので、書籍を作る上で温度差を感じることはなかったですね」
本を作る上で米本氏はヒロシの熱量の高さをいくつもの場面で感じたという。
「校了のぎりぎりまで、ヒロシさんが一文字一文字まで読み直して、書き直してを繰り返していました。それでも最後までしっかりと作り上げることが出来たのは、ヒロシさんの中で、『こうしたい』というビジョンがはっきりとあったから。明確な意図がないままひっくり返されると、編集者として困惑してしまう場合もあります。けど、ヒロシさんはそういうのは決してなかったですね。『もっと初心者にわかりやすくするために説明を足したい』とか『後書きが物足りないから、もっと自分の思いが伝わるように書き直したい』など、とにかくヒロシさんの頭の中に、本のビジョンがしっかりとあったように思います」
“自分の居場所がない”と感じている人に読んで欲しい
「カバー周りはお互いのこだわりとこだわりがぶつかって激しくセッションをしました。ヒロシさんは『極端な話、自分は映っていなくていい、焚き火のかっこいい雰囲気が出せれば問題ない』と仰っていて、その一方で編集部としては、ヒロシさんの顔がはっきりとかっこよく映っている写真をカバーで使いたいと考えていました。“どうしようかな”と模索する中で、着地点になったのが、初刷りに限定の超特大帯を付けるというアイデアです。それがすごく注目を集めて、予約が殺到したり、発売日にファンの方から初刷りを探し求めてくれる、いうアクションが生まれました。ほかにも“ステッカーがもらえる応募者全員サービスをつけてみる”とかも、意見が違ったところから話が膨らみ様浮かんできたアイデアです。大変だったけれど、ぶつかったことは結果よかったことだと思っています」
「最初はもう少しさらっとグッズを紹介するような内容でしたが、書き直す度にヒロシさんの味が足されていきました。クスッと笑えるところが、どんどん増えてきて、さすが芸人さんだなと感じました。校了が迫った中で『書き直したい』と言われて『これは大変だ』と思うこともあったけれど(笑)、しっかりと最高の文章と感動で返してくださいました。きちんとこだわるべくところにこだわってくださったので良いものが出来たと実感しています」
キャンプ未経験の米本氏もそんなヒロシの書く原稿にワクワクしながら楽しんで編集作業を行なっていたという。最後に米本氏は同書のこんな楽しみ方を提案してくれた。
「今、“自分の居場所がない”と感じている人だとか、逆に“煩わしい人間関係に疲れて1人になりたい”と思う人に腰を据えて読んで欲しいですね。この本はヒロシさんが自身のソロキャンプの原点を明かす所から始まり、『今はひとり焚き火をみてる これが俺の最高の贅沢』という言葉で締めくくられているのですが、ヒロシさんは人生の中で“自由”というものを“キャンプ”を通じて手に入れたのだと思います。そんなヒロシさんの生き様を通じて、読む人が何か新しい価値観を感じ取ってもらえたらうれしいですね」
(取材・文/中山洋平)