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「これから音楽の市場規模は3倍に成長する」 ロッキング・オン&ブシロード、トップが語る“オンラインライブ”の未来

ますます高まる“リアル”ライブの価値

──ライブ配信に注力すると、「音楽パッケージが売れなくなる」という懸念もありました。

渋谷ところが結果としてパイの奪い合いにはならず、むしろ市場を広げることとなった。同じことで木谷さんにお伺いしたいんだけど、スポーツでPPVが定着して実際の会場に来るお客さんが減ったかというと、そんなことないですよね?

木谷むしろ会場チケットのバリューが上がりました。配信なり放送なりでコンテンツに接触すると、「生で見たい」という熱はますます上がるんです。だけど会場にはキャパシティがある。たとえばスーパーボウルのチケット価格設定がとんでもないことになってるのは、それだけ現場で見たい人が多いからであって、市場経済として自然なことなんですよ。

渋谷つまりオンラインライブによって、リアルのライブ人口は決して減らない。むしろライブ市場全体を、とてつもない成長産業に押し上げる希望しかないと僕は思ってるんです。

──先ほど出たキャパシティは、リアルのライブにおいて常について回る課題です。

渋谷たまにイメージするんだけど、「ユーミンが荒井由実時代の曲を弾き語りする一夜限りのライブ」。これものすごくバリューがあるコンサートですよね。弾き語りだったらドームでやってもしょうがない。それなりの音響設備の会場、渋谷のオーチャードホールあたりがいいんじゃないかな?

木谷キャパは2000席ほど。チケット争奪戦になりそうですね。

渋谷そこで起こるのがチケットのプレミアム化、もっと言えば転売問題です。転売によって何十万ついたところで、ユーミンには1円も入らない。そんなバカな話はないですよ。そこをきっちりとマネタイズしてアーティスト側に還元する方法論として、オンラインライブは非常に有効なんです。

木谷ビッグアーティストは高い年齢層のファンも多くついてますし、わざわざ会場に行かなくても家でゆったり見たい、という人は多いでしょうね。

渋谷と思いきや、意外と若者層にも需要はあるんですよ。先日、あるアマチュアバンドが、ライブハウスから無観客ライブを配信すると聞いて、失礼な話、そんなの見る人いるの? と思ったんです。ところが20人が視聴してくれたと。たった20人? と思うじゃないですか。

木谷でも、彼らのスケールからは十分な数字だったということですかね? 

渋谷そうです。ライブハウスにはノルマがあって、いつもは友だちに声をかけて3、4人来てくれるんだそうです。ところがオンラインでやったら、その5倍ものお客さんが見てくれた。それも心から応援してくれるお客さんたちで、夢のようだったと。僕らは勝手に「ロックのお客さんは現場で見たいものなんだ」と思い込んでるじゃないですか。

スマートテレビに5Gの普及…爆発的な変革が期待できる

──押し合いへし合いの“密”なスタンディングで、ですね。

渋谷だけど、たとえば地方に住んでる人とか、東京に住んでても夜は出歩けない高校生とか、ライブハウスに敷居を感じていた人はいっぱいいるわけですよ。そうしたお客さんたちが求めている接触機会を、これまでライブ業界は提供してこなかったんです。

木谷たしかに生のライブにはキャパシティだけでなく、アクセシビリティの障壁もある。これまでビッグアーティストはそこをライブ中継で補完したりしてきたけど、通信環境が整った今はインディーズバンドでも気軽に音楽の出口を増やすことができるようになったわけです。

渋谷ようは、このコロナ禍はライブの本質というものに冷静に向き合うチャンスでもあった。何がリアルで何がオンラインなのか? を無理やり学習させられる機会だったと思うんです。

木谷さらにスマートテレビや5Gもこれからさらに普及する。同時代に起こった偶然とは言え、これからオンラインライブ市場は爆発的な変革が起きますよ。

──この時期、オンラインライブに触れた人はたくさんいました。しかしコロナ禍が去った後も、その人たちはオンラインライブを見るでしょうか?

木谷そこはライブ業界がもっと意識的に取り組まなければいけないことです。エンタメの普及にとって何が一番大事かというと、クセを付けることなんですよ。ようは靴を履くクセ、習慣がない人に対して、どうせ履かないだろうから靴は売らないか、それともいかに靴の素晴らしいかを伝えて売るか、どっちかだと思うんですよね。

渋谷その意味では、このコロナ禍はオンラインライブを見るクセを付ける機会でもあったわけで。若い人だけでなく、高齢者でも頑張って配信プラットフォームに会員登録した人は多かったんじゃないかな。

木谷そうなんです。ここ最近やってたオンラインライブって、音楽業界的にはリアルのライブができないことへの補完としか捉えていないフシもあったと思うんです。それでコロナ禍が去ってライブが通常にできるようになって、オンラインライブの流れを止めてしまったらこの機会が水の泡というか。

渋谷だけど、配信をいち早くビジネスとして定着することができたスポーツに対して、なぜ音楽は遅れをとってしまったんでしょうね?

木谷そもそもスポーツは試合そのものが商品だから、売るための手段をいろいろ考えたというところは大きいと思います。音楽の場合は、かつてライブはパッケージを売る販促の手段だったじゃないですか。今はライブ市場が逆転しているところはありますけど。

渋谷そうか、そうした歴史の違いもありますね。

木谷あとはボクシングをイメージしてもらったらわかりやすけど、東京ドームの真ん中にリングを据えたらやっぱり小さいし、細かいところまでは見えない。だけど音楽ライブは大きな会場でも作り込んだステージ込みで楽しませてくれるところがありますよね。

渋谷たしかにドームのスケールでコンテンツを伝達するスキルは、スポーツよりも音楽ライブのほうが長けています。そっちが進化してしまったことで、オンラインへのチャレンジに足が遠のいてしまっていたのかもしれない…。

木谷だけど映画『ボヘミアン・ラプソディ』ラストのライブ・エイドの中継を、酒場や自宅のテレビの前で観客が熱狂するシーン。ライブ配信の定着によって、あのような光景がもっと起こせるはずなんですよ。ようは先ほどおっしゃった「ライブの本質的な価値」に、音楽業界がどれだけ真剣になって向き合うかが重要なのではないでしょうか。

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