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中高年の”女装男子”も増加、ネットやSNSで市民権得た“女装”業界の今

  • 女装サロン『ハイクオリティ』で変身した男性(写真:ハイクオリティ提供)

    女装サロン『ハイクオリティ』で変身した男性(写真:ハイクオリティ提供)

 近年、テレビ番組やネット、SNSなどでも取り上げられ、かつてはタブー視されていた“女装男子”は、今や市民権を得た感がある。男性に女装メイクを施し、衣装コーデや撮影を行う女装サロンも盛況のようだ。バラエティ番組『ぐるナイ』(日本テレビ系)や『5時に夢中!』(TOKYO MX)などで女装企画を担当し、新宿のサロン『ハイクオリティ』を経営する女装専門美容家・保志エリカさんに、今の女装シーンと問題点を聞いた。

美容部員から女装専門美容家に転向、きっかけは目撃した“差別”

  • 写真提供:ハイクオリティ

    写真提供:ハイクオリティ

――保志さんが”女装専門美容家”になったきっかけを教えてください。

保志さん もともとは普通の美容部員として働いていましたが、あるきっかけで女装専門美容家に切り替えて10年目になります。美容部員時代、仕事先で、ある男性のお客さんが差別されていたのを目撃したことが転機になりました。

――差別とは?

保志さん 男性のお客さんが「メイクしてほしい」と来られたので、私は店頭でその男性にメイクをしたんですね。そうしたら、後でマネージャーにすごく怒られて。今はデパートでも男性のメイク、女装さんのメイクにも対応しますが、当時は全面的にNGでした。誰にも迷惑をかけているわけではないのに…と、私としてはすごく疑問に感じて。その男性は、いわゆるニューハーフやオカマと呼ばれる人とは違うタイプの人で、「実はこういう人ってすごく多いんだろうな」と興味を持ち、この方向性で勉強してみようと思ったんです。

――なるほど。

保志さん 私は当時、美容部員をしながら裁判官の国家資格を取るために勉強していてました。35歳で受からなかったら方向転換しようと思っていたんですが、ちょうどその頃に東日本大震災が起きて。そのタイミングで「今、切り替えよう」と”女装専門美容家”の道に切り替えました。

すでに最盛期は過ぎ、厳しい淘汰が始まっている女装サロン業界

――女装サロン『ハイクオリティ』を開店して9年目とのこと。現在は、新型コロナウイルスの影響で来店をお断りしているとのことですが、ネットやSNSでも女装が話題になっている昨今、お客さん自体は増えていたのでは?

保志さん ずっと増えていましたが、実は去年から少し落ちています。女装サロン業界の最盛期は過ぎていて、3年くらい前からつぶれる店も出てきているんです。以前は素人でもサロンを出せば儲かりましたが、今はメイクの質が良い店や「画像処理が恐ろしくうまい」といった特性を持つ店が生き残り、それ以外は淘汰されているのが現状です。

――女装メイク市場は成熟期に入っているということでしょうか。お客さんの傾向も変わりました?

保志さん 以前は「女性の服が着られればいい」という人が多かったけれど、今は「こういうメイクをしてくれない店には行かない」など、お客さんの志向も高まっていますね。逆に、自分が望むメイクをしてくれる店には高額でも行く人はいます。年齢層で言うと、30代後半から50歳手前くらい、アクティブに動けてお金を持っている層が一番強いですね。そういうお客さんに選ばれ、定期的に通ってくれているお店が残っているんだと思います。

若者は楽しむため、年配者は”荷下ろし”のために女装をする

  • 写真提供:ハイクオリティ

    写真提供:ハイクオリティ

――お客さんと接する上で、大切にしていることはありますか?

保志さん 技術的なことでは、”メイクをした男性”っぽく仕上げないようにしています。意外に、誰が見ても女に見えず、いかにも”男性がメイクしてます”という女装にする店は多いんですよ。うちでは、あくまでも“女性の枠”に入れてあげたいので、外を歩いてもバレないように、一見薄く見えるメイクにしています。

 また接客においては、緊張していたり、女装することに後ろめたさを感じていたりするお客さんが多いので、友だちのようにフラットに話すようにしています。特に初めての方はかなりガードが固いので、こっちから思い切り懐に飛び込むようにと。

――やはり初めての人は固いですか?

保志さん 最初は不安でしょうし、予約して来店するだけで精一杯なんだと思います。若い人の場合、子どもの頃から女装の情報もあったし、イベントで友だち同士でメイクをしたりして、抵抗は少ないんでしょう。40代くらいの人が、一番緊張していますね。

――若い人と年配者ではやはり違いがあるんですね。

保志さん 大きな傾向として、若い人は完全に趣味として「楽しいからやる」という人が多いです。一方、年配者は真面目で高学歴、高収入の人が多い。医師や弁護士、官公庁の関係者とか…。普段は真面目で、色々なものを背負っていて、それをうまく荷下ろしできないタイプの人が来ます。現実逃避ともまた違う…全然違う自分になって、普段の自分から離脱するイメージでしょうか。お店に来るのはそういう人が8割で、2割くらいが「ただ楽しいからやる」という人です。

――希望するメイクや服装にも違いがありますか?

保志さん 「楽しいからやる」という人は、ズラを被ってメイクすればそれなりに楽しいので、あまりクオリティを気にしません。若い人だと、YouTubeの動画を見て、自分でメイクしたりもしていますね。目指す方向性もある程度年相応で、「同い年くらいの女子大生風がいい」というようなことが多いです。

 でも真面目タイプの人は、クオリティをとても気にします。実際、「普段と全然違う感じにしてほしい」と言われて、そのように仕上げると、泣き出す人もいるんです。おそらく、ストレスが溜まりすぎているんでしょうね。昔から女装したかったけれど叶わず、思いを溜めに溜め込んで来るんだと思います。年配の人でも「セーラー服を着たい」という人がいますが、やはり長年の夢と希望をどうしても実現したいんじゃないでしょうか。

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