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「真のメディアの姿」いまだネット称賛続く地方局アナ、震災報道でキー局に怒鳴った理由語る

称賛されたニュース報道は「反省ばかり」、密着高校球児と距離を置いた理由とは

――岩手県だけにあの津波の映像を緊急放送で流す、という選択肢もあったわけですよね。

山田理あの津波の映像を全国に流しても西日本の人は分からないといっても、関西から宮城に行っている友人や働いている人もいたかもしれない、と考えると、あの映像を全国に見ていただけたのはありがたかったと思っています。

――いきなり中継がつながったのにもかかわらず、途端に冷静に情報を伝える山田さんの切り替えの早さにも驚きました。

山田理実はあの日、私はニュースデスク業務をしていたのですが、地震発生時にアナウンサーがみんな現場に出ていて、どうしようもなく、私がスタジオに座ったんです。地震発生から数分後の14:50頃にスタンバイして、結局20:30頃まであの席にいました。当時の映像を振り返ると、ずっと同じようなことを言っているし、落ち着いて言わなきゃいけないのに早口だし、冷静に考えれば「国道45号線まで津波が迫っていて、その後超える恐れがある」といった情報も全然伝えられていないし、反省ばかりでした。

――東日本大震災を受けて、仕事への意識の変化はありましたか。

山田理ありましたね。こんなんじゃだめだなと、今まで以上にやらなくてはいけないと強く思いました。訓練で鍛えられた部分はありましたが、圧倒的に足りないと感じました。震災以降に入ってきたアナウンサーには、地震を想定した原稿を渡すのではなく、当時の映像を見せて、スタジオでどう話せばいいか考えてもらう訓練を行っています。結局コメントを覚えても、実際の状況描写は見えているものを話さなければいけない。それなりにただ冷静に話せばいいということではなくて、岩手なら岩手、宮城なら宮城、福島なら福島で話すことは違う。それは映っている映像が違うからであって、そのことを理解してもらえるように指導しています。

――現在も復興支援への携わりや被災者の方々との交流はおありでしょうか。

山田理携わりや交流は各所でありますが、密着していた人たちとは一度距離を置きました。2012年に石原さとみさんにナレーションをして頂いた、ドキュメンタリー特番のディレクターを担当して、被災した陸前高田市の高校球児に密着しました。その後も、一度の放送に限らずずっと密着するべきという声もあったのですが、自由にしてあげたかった。彼は地元を離れましたし、報道を忘れさせたいと思って。一度陸前高田を忘れて、と思っているかもしれないし、話したくなる時って向こうの方もあるのかなと。それがいつになるかはわからないけど、進学や就職のタイミングには連絡をくれました。今は社会人としてもがいている時だと思うので、落ち着いて話せるようになった時にでもまたゆっくり話せたら嬉しいですね。

「報道の仕事を辞めたいと思った」高校時代から知る菊池雄星選手の言葉に救われた

甲子園直前の菊池雄星投手(花巻東)を取材する山田さん

甲子園直前の菊池雄星投手(花巻東)を取材する山田さん

――山田さんが良く知る土地が被災し、取材し続けることは様々な苦悩があったのでは?

山田理一時は本当に辛くなってしまって、報道の仕事を辞めたいと思ったこともありました。でも、入社当初からずっと高校野球を取材していて、メジャーリーガーの菊池雄星投手も高校1年生の時からずっと追いかけていました。彼も盛岡出身で、当時私が悩んでいる姿を見て、「だめです、山田さんはやり続けなければいけない。やらなきゃいけない立場にいるんです、あなたは。僕は僕で、プロ野球選手としてやれることを考えています。山田さんと僕が出会ったのも、野球とアナウンサーという関係で始まっているんだから、それぞれの立場でやりましょうよ」と言ってくれたんですよ。彼のその言葉が凄い支えになって、放送する、しないは置いておいて、伝えるだけではなく被災地の方々の話を聞く、というのも大事だなと思って、各地を回っていました。

――震災から9年、報道で取り上げる頻度も少なくなってきますが、今後の東日本大震災についての報道はどのようにあるべきだと思われますか。

山田理震災報道に既視感を覚えている人たちがいる、というのが課題ですね。もしかすると、被災地の人でも「もういいよ」と思っている人たちもいて、そういう方たちにも見てもらえる報道を作っていくということですね。どうしても映像は同じ繰り返しになってしまうんですけど、視点を変えるのか、見方を変えるのか、例えば地域を変えて、南海トラフ地震の想定を岩手で取り上げて比較するとか。工夫を重ねながら、決して忘れてはいけない、伝え続けていかければいけないと思っています。

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