ORICON NEWS
なぜサッポロは30年以上にわたって、『箱根駅伝』を支えているのか?
創設者は“いだてん”主人公 今年は開催から100年の節目
テレビでの放送を初めて手掛けたのは、実はテレビ東京だということを、知らない人も多いのではないだろうか。1979〜86年にかけて、テレ東は箱根駅伝のダイジェスト番組を放送。9区までを録画で、復路のゴールである10区を生中継で対応していたという。
1987年からは日本テレビが担当し、往路復路にわたって生中継を実現させた。とくに近年は、視聴率が右肩上がりで推移しており、昨年の平均視聴率は往路で30.7%、復路で32.1%を記録。歴代1位の高視聴率をたたき出している。
箱根駅伝は、これまでに数多くのドラマが生まれており、それぞれ“たすき”をつないできた。とくに往路のゴールである“山上りの5区”は、例年大きな注目を集めており、元祖「山の神」の今井正人(トヨタ自動車九州)、2代目の柏原竜二(富士通)、3代目の神野大地(セルソース)の走りには、日本中が感動に沸いた。
今年は令和が始まって最初の開催でもある。果たしてどこが初代王者となるのか、往路・復路とも目が離せない。
「前例のない大きなことに取り組みたい」という考えからスポンサーに
そもそもスポンサーになったきっかけについて、内藤氏はこう語る。「誰もやったことがない、前例のない大きなことに取り組みたいと考え、スポンサーを務めることになりました」
だが箱根駅伝は、あくまで関東学生陸上競技連盟に加盟している大学だけ出場できる大会だ。果たして全国に生中継しても盛り上がるのか、期待と不安が当時の社内にはあったのではないかと内藤氏は推測する。
「なぜビール会社なのに駅伝を応援するのか、アマチュアスポーツなのにどうしてと聞かれることが多々ありますが…。未来ある若者が仲間のためにたすきを繋ぐ懸命な姿って、弊社のものづくりの精神に通ずるところがあるんですよね。そんな選手たちのひたむきな姿に共感したため、長年、箱根駅伝の協賛を続けているのだと思います」
また筆頭スポンサーであるゆえに、苦しかった時期もあったという。
「いただいているCM枠の尺が多いので、正直きつかった時代もあったと思います。ただ年始に弊社のCMが流れると、『サッポロビールは箱根駅伝を応援している会社だ!』と改めて実感することができ、社員のモチベーションも高まるんですよね。最終的には売り上げ面に繋がれば幸いですが、多くの皆様と箱根駅伝話で盛り上がることができるのは、素晴らしいことだと考えています」
2011年からCMテイスト変更 今年は西野七瀬を起用した“ラブストーリー”に
「2008年までは、箱根駅伝=サッポロビールと認知してもらえるよう、『黒ラベル』などブランド商品のCMをそのまま放送していました。ただ09年ごろから、箱根駅伝の視聴率が20%台に上がってきまして。箱根駅伝=サッポロビールの認知はある程度広まったため、次の一手として、『ではなぜ、サッポロビールは箱根駅伝を応援しているのか』を、今度は視聴者の方に理解してもらいたいと思い、テイストを切り替えました」
同社は2011年の第87回大会から、“箱根駅伝オリジナルCM”というかたちで、駅伝中に新たなCMの放送を開始した。初年は、「それぞれの箱根駅伝物語」と題したシリーズCMを展開。往路の優勝校に贈られる寄木細工のトロフィーを制作する伝統工芸士の金指勝悦さんを取り上げるなど、箱根駅伝を陰で支える人たちの取り組みを紹介する内容に仕上げた。
また2019年は、ロックバンド・BUMP OF CHICKENの楽曲「ロストマン」を採用したCMを展開。SNS上では「サッポロビールのCM見て、泣いた。初めてCMで泣いた」「箱根駅伝、ロストマンがテーマソングなん。胸熱すぎた…」といったコメントが寄せられるなど、大きな注目が集まった。出演者には、箱根駅伝の経験者でもある設楽悠太(ホンダ)と大迫傑(ナイキ)を起用。彼らの歩みを振り返るとともに、東京五輪に向けて弾みをつけるような構成となっていた。
一方、今年のオリジナルCMは、従来とは異なり初の“ラブストーリー”要素を追加。主演には、俳優の清原翔と元乃木坂46で女優の西野七瀬を起用し、箱根駅伝をきっかけに前に進む男女の物語をドラマ仕立てで制作したという。
内藤氏は、「サッカーだったら『キリン』、オリンピックだったら『アサヒ』と認識される中で、箱根駅伝=サッポロビールも定着していると思います。その分、やりがいはありますが、(箱根駅伝の)CM制作費は額が大きいのも事実です。サッポロビールへの好感度を上げていくにはどうしたらいいのか、次の担当者に良い形で“たすきをつなぐ”ことができるよう、努めていきたいです」と語っている。