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(更新: ORICON NEWS

ビールCMに異変? プレモルCMに人気声優を起用したワケ

 サントリービール『ザ・プレミアム・モルツ<香る>エール』のCM「夏の神泡(ラバーズ)」篇が、ネット上で注目を集めている。女優の石原さとみや、男性2人組ユニット・スキマスイッチ(大橋卓弥、常田真太郎)らが出演する中、声優の花澤香菜の起用に対し、SNS上では「ざーさんがプレモルCM出てる!」、「プレモルのCMに見覚えのある顔だなと思ってたら、ざーさんでした」といったコメントが相次いでいる。ビールCMといえば人気俳優・女優を起用するのが常だが、なぜ声優を起用するに至ったのか? 同社マーケティング本部の小浦昌子さんに聞いた。

“プレミアムの象徴”として矢沢永吉を起用、ビール事業参入45年で初の黒字に

 『ザ・プレミアム・モルツ』は、2003年に販売を開始した。ただ当時の日本は、デフレ真っただ中。ビールに近い味わいながら、低価格で楽しむことができる“第三のビール”と呼ばれる「新ジャンル」が出始めたタイミングでもあった。商品や製品の安価が進む中、同社はあえて高級路線をたどることを決めたという。

「プレモルは、天然水醸造など厳選された素材やこだわりの製法でつくられています。ただその分、手間暇がかかるため、『プレミアムビール』として、付加価値を高めたプレミアム戦略に挑戦しました」(小浦氏)
 発売当初は伸び悩んでいたが、3年目となる05年、潮目が変わる。世界的な飲食料品の品評会「モンドセレクション」のビール部門で、国産ビール製品初の最高金賞を受賞すると、注目度が上昇。また同年、初めてCMも展開。歌手の矢沢永吉を起用し、「最高金賞のビールで最高の週末を」というキャッチフレーズとともに打ち出した。矢沢を起用した理由について、小浦氏はこう振り返る。

「矢沢さんは、“プレミアムの象徴”のような方だと思うんです。自叙伝の『成り上がり』という言葉に代表される通り、ご自身で今の地位を築き上げられた方。嘘がなく、メッセージ性が強い方なので、起用させていただきました。CM初期から現在まで、出演していただいております」(小浦氏)
 その後、07年まで3年連続で「モンドセレクション」の最高金賞を受賞すると、認知度は大きく拡大。08年には、同社のビール事業において、初の黒字化を達成した。

「当社がビール事業に参入して、45年後に初めて、黒字になりました。プレモルを発売した当時は、メディアに『サントリーはビール事業で天文学的赤字』と書かれるぐらい、苦悩の時代は長かったんです。07年に新ジャンルの『金麦』、10年にはノンアルコールビールの『オールフリー』を発売しておりますが、これらはプレモルで、お客様の支持が得られたからこそ実現できたこと。プレモルのヒットが、サントリービールのイメージを変えるきっかけになり、当社のビール事業の礎ができました」(小浦氏)

30代のタイミングで、石原さとみ起用 「大人な魅力あふれる今こそ出演していただいた」

 プレモルが大事にしているのは、「上質感」だ。缶の黄金色を際立たせる演出など、CM上でも「上質感」は描かれてきたが、テーマソングにもこだわりがあるという。「これまでプレモルのテーマソングは、ミュージカル『王様と私』の『Shall We Dance?』や、ザ・ビートルズの『Hey Jude』など、高揚感や華やかさを表現する楽曲を中心に選んできました」(小浦氏)

 なかでも2017年から現在も採用されている「I wanna be loved by you」は、プレモルとマッチしている選曲と話題だ。同曲は、マリリン・モンロー主演の映画「お熱いのがお好き」の挿入歌だが、SNS上では「もはや曲聴いて、プレモルしか出てこない!」、「モンローの曲のイメージだったのに、CMを見ててプレモルが脳内に現れるようになった」といった声が寄せられている。同曲を採用した理由について、小浦氏はこう語る。
「以前までは高級感や贅沢感、最高のビールということをCMでも伝えてきましたが、これからは“一番愛されるビールになりたい”と考え、2017年に大きくリニューアルしました。キャッチコピーも『惚れたっ。』に変え、楽曲も変更しました。『惚れた』という言葉と、『I wanna be loved by you』は親和性が高いですし。CM楽曲を変更するのは、商品のイメージを塗り替えることになるので、実は挑戦でもあるのですが…。『I wanna…』のメロディーが聴こえると『あっプレモル』と認識してもらえているのは、とてもうれしいですね」(小浦氏)

 プレモルのCMキャストも、近年は「上質感+愛される人柄」を意識して起用しているという。18年からは、『ザ・プレミアム・モルツ<香る>エール』のCMに、女優の石原さとみを起用。あえて30代に入ったタイミングでオファーをかけたと、小浦氏は話す。
「30歳になり、より大人な魅力あふれる今こそ、石原さんに出演していただきたいと思い、お願いしました。また石原さんは、意外とビールがお好きでして。飲みっぷりが良い方なのもあり、起用させていただきました。『<香る>エール』はプレミアムビールでありながら、フルーティーな味わいと爽やかな香りが特長の商品です。国民的女優でありながら、お茶目でチャーミングなところがある石原さんこそ、ふさわしいと考えております」(小浦氏)

声優の花澤香菜を通して、今まで振り向いてもらえなかったアニメファンに訴求

 今夏から放送されている『ザ・プレミアム・モルツ<香る>エール』の「夏の神泡(ラバーズ)」篇の出演陣も豪華だ。石原とスキマスイッチを始め、元プロ野球選手の新井貴浩や声優の花澤香菜、近年、若者たちから人気を集めているバンド・Nulbarich(ナルバリッチ)のボーカルJQらが出演している。同メンバーを起用した決め手について、小浦氏は「今、話題のある方で、ファンを動かす力のある方を選出した」と明言する。
 なかでもSNS上でザワついているのが、花澤の起用だ。「プレモルのCMにざーさん起用は最高すぎる」、「ざーさんのプレモルCMかわいすぎ」と話題となっている。花澤の起用理由について、小浦氏はこう語る。

「声優は、アニメファンとのつながりが強く、情報の起爆力や拡散力も強い方々だと思います。またファン側は支持する動きが大きく、SNS上で話題にしてくださる方々が多いなと感じております。一方、アニメファンは、これまでのプレモル宣伝でなかなか振り向いてもらえなかった層でもあるのではと見ています。そこで、今一番人気のある声優の花澤さんを起用しました。最終的には、ファンの皆さんに商品を買っていただきたいですが、まずは『花澤香菜がプレモルCMに出演している』という情報を起爆させ、拡散してもらい、プレモルに目を向けてもらうことに重点を置いています。その上で、商品を手にしてもらえたら、万々歳ですね」(小浦氏)
 同社の公式YouTubeアカウントで配信している「#花澤香菜の6秒日記」も、ファンの間で注目が集まっている。さまざまな声色で同商品を堪能する花澤を垣間見ることができ、SNS上では「恋愛サーキュレーションが始まるかと思ったわw」、「開幕撫子で途中に七々子いるの面白すぎる」といったコメントが寄せられている。小浦氏は「アニメファンは20〜40代の男性が多いですが、最近では若い女性ファンも大勢いらっしゃいます。花澤さんを通して、今までのプレモルでは振り向いていただけなかった新たな層に訴求していきたい」と話す。

ビール市場縮小の中、プレミアムビールは拡大中

 一方、ビール市場は下降の一途をたどっている。人口減少や若者の“ビール離れ”の影響で、消費量は14年連続で縮小している。だがプレミアムビール市場は、拡大傾向にあると小浦氏は見解を示す。

「プレモルの販売数量は、発売当初50万ケースほどでしたが、2016年には1700万ケースにまで伸ばすことができました。とくに今年は好調で、2019年上半期だけで過去最高の出荷数量を達成しています。“神泡”活動が成果を出しているのだと思います」(小浦氏)

 近年、同社はプレモルの「泡」に焦点を当てたキャンペーンを展開している。プレモルの注ぎ方によって実現するクリーミーな泡を“神泡”と称し、“神泡”を家庭でも楽しめるようホーム用サーバーの開発に注力してきた。今年は、超音波によって振動する「新型電動式神泡サーバー」を開発。プレモルを12缶以上購入すると、もれなく付いてくるという。
「“神泡”で飲むと、ビールが苦手な方でも『ビールってこんなにおいしかったんだ』と言っていただけることが多いんです。ビールは、泡がない状態で飲むよりも、泡を作って飲む方がまろやかになり、ビール本来のおいしさを楽しんでいただけるんですよ」(小浦氏)

 プレモル発売から15年以上経ち、小浦氏は「やっとビール会社として認められた」と胸をなで下ろす。

「プレモルが発売されるまで、世間では“サントリーはウイスキーの会社”と思われていた。『ウイスキー工場の片隅で、ビールを作っているんじゃないの?』と疑われたぐらい。ただプレモルが発売されて、お客様の支持を得ることができ、やっとビール会社として認められた気がしますね。何よりお客様だけでなく当社の人間も、プレモルが売れたことで自信がつきました。今後もCMや“神泡”活動を通して、プレモルのおいしさを伝えていければと思います」(小浦氏)

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