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ビールCMに異変? プレモルCMに人気声優を起用したワケ
“プレミアムの象徴”として矢沢永吉を起用、ビール事業参入45年で初の黒字に
「プレモルは、天然水醸造など厳選された素材やこだわりの製法でつくられています。ただその分、手間暇がかかるため、『プレミアムビール』として、付加価値を高めたプレミアム戦略に挑戦しました」(小浦氏)
「矢沢さんは、“プレミアムの象徴”のような方だと思うんです。自叙伝の『成り上がり』という言葉に代表される通り、ご自身で今の地位を築き上げられた方。嘘がなく、メッセージ性が強い方なので、起用させていただきました。CM初期から現在まで、出演していただいております」(小浦氏)
「当社がビール事業に参入して、45年後に初めて、黒字になりました。プレモルを発売した当時は、メディアに『サントリーはビール事業で天文学的赤字』と書かれるぐらい、苦悩の時代は長かったんです。07年に新ジャンルの『金麦』、10年にはノンアルコールビールの『オールフリー』を発売しておりますが、これらはプレモルで、お客様の支持が得られたからこそ実現できたこと。プレモルのヒットが、サントリービールのイメージを変えるきっかけになり、当社のビール事業の礎ができました」(小浦氏)
30代のタイミングで、石原さとみ起用 「大人な魅力あふれる今こそ出演していただいた」
なかでも2017年から現在も採用されている「I wanna be loved by you」は、プレモルとマッチしている選曲と話題だ。同曲は、マリリン・モンロー主演の映画「お熱いのがお好き」の挿入歌だが、SNS上では「もはや曲聴いて、プレモルしか出てこない!」、「モンローの曲のイメージだったのに、CMを見ててプレモルが脳内に現れるようになった」といった声が寄せられている。同曲を採用した理由について、小浦氏はこう語る。
プレモルのCMキャストも、近年は「上質感+愛される人柄」を意識して起用しているという。18年からは、『ザ・プレミアム・モルツ<香る>エール』のCMに、女優の石原さとみを起用。あえて30代に入ったタイミングでオファーをかけたと、小浦氏は話す。
声優の花澤香菜を通して、今まで振り向いてもらえなかったアニメファンに訴求
「声優は、アニメファンとのつながりが強く、情報の起爆力や拡散力も強い方々だと思います。またファン側は支持する動きが大きく、SNS上で話題にしてくださる方々が多いなと感じております。一方、アニメファンは、これまでのプレモル宣伝でなかなか振り向いてもらえなかった層でもあるのではと見ています。そこで、今一番人気のある声優の花澤さんを起用しました。最終的には、ファンの皆さんに商品を買っていただきたいですが、まずは『花澤香菜がプレモルCMに出演している』という情報を起爆させ、拡散してもらい、プレモルに目を向けてもらうことに重点を置いています。その上で、商品を手にしてもらえたら、万々歳ですね」(小浦氏)
ビール市場縮小の中、プレミアムビールは拡大中
「プレモルの販売数量は、発売当初50万ケースほどでしたが、2016年には1700万ケースにまで伸ばすことができました。とくに今年は好調で、2019年上半期だけで過去最高の出荷数量を達成しています。“神泡”活動が成果を出しているのだと思います」(小浦氏)
近年、同社はプレモルの「泡」に焦点を当てたキャンペーンを展開している。プレモルの注ぎ方によって実現するクリーミーな泡を“神泡”と称し、“神泡”を家庭でも楽しめるようホーム用サーバーの開発に注力してきた。今年は、超音波によって振動する「新型電動式神泡サーバー」を開発。プレモルを12缶以上購入すると、もれなく付いてくるという。
プレモル発売から15年以上経ち、小浦氏は「やっとビール会社として認められた」と胸をなで下ろす。
「プレモルが発売されるまで、世間では“サントリーはウイスキーの会社”と思われていた。『ウイスキー工場の片隅で、ビールを作っているんじゃないの?』と疑われたぐらい。ただプレモルが発売されて、お客様の支持を得ることができ、やっとビール会社として認められた気がしますね。何よりお客様だけでなく当社の人間も、プレモルが売れたことで自信がつきました。今後もCMや“神泡”活動を通して、プレモルのおいしさを伝えていければと思います」(小浦氏)