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『3年A組』『向かいのバズる家族』 “SNS”の出現と普及によって変遷を遂げるドラマコンテンツ

 SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を発端とした問題が急増する昨今。これをテーマに扱うドラマも増加傾向にある。今年放送された、菅田将暉主演のドラマ『3年A組 −今から皆さんは、人質です−』(日本テレビ系)では、“SNSの誹謗中傷”をテーマにしていたことが記憶に新しい。さらに、今期放送の『向かいのバズる家族』(読売テレビ・日本テレビ系)『デジタル・タトゥー』(NHK総合)でも、Twitter、ネット掲示板を取り扱った作品となっている。本記事では、SNSの出現と普及によるドラマの変遷を辿る。

急増する“SNS”に軸を置いたドラマたち

 「SNSリテラシーを問う」という時代性をとらえヒットした『3年A組』。SNS上で横行する問題に、菅田将暉演じる柊一颯は「自分の言動に責任を持てよ!」と、アンチテーゼを提示した。一方、『向かいのバズる家族』では、“バズった”ことによって、自分を見失ってしまう姿や、ネガティブにバズった人間に及ぶ被害などをコミカルに描くことで、視聴者がSNSの怖さを疑似体験する形に。さらに、5月18日にスタートした『デジタル・タトゥー』では、瀬戸康史がSNS上に転がる悪意に立ち向かう。

このように、SNS問題を軸に置いたドラマが増えたのは、SNS問題がワイドショーで連日のように報じられ、テレビメディアがコアターゲットとする中年層にも認識が広まったからだろう。

平成30年の歴史に見るドラマの”軸”の変遷

 『東京ラブストーリー』(フジテレビ系)や『すてきな片思い』(フジテレビ系)など、”すれ違い”を演出の軸においた恋愛ドラマが多く存在した90年初頭。「待ち合わせ場所で会えない」など、今見返せば“現実ではありえない展開”も、携帯電話が無いその時代には、“自分ゴト化”しやすく、視聴者に受け入れられていた。だが、携帯電話の普及に伴い、それらは非現実的なコンテンツに。人間関係が手の中に集約できることになったことで、ストーリーはもちろん、画としても物足りなく感じられることから、こういったドラマ自体が減少していった。

 そんな状況下、SNSが急速に普及を遂げた00年以降、”SNS”を演出の軸に置いたドラマづくりが見かけられるように。2005年『電車男』(フジテレビ系)は、匿名掲示板・2ちゃんねるの住人たちが、伊藤淳史に告白する勇気を与え、2010年『素直になれなくて』(フジテレビ系)は、Twitterが上野樹里と瑛太を出逢わせる。2013年『最高の離婚』(フジテレビ系)では瑛太・尾野真千子夫婦の心理戦がFacebookを通じて繰り広げられ、2018年『anone』(日本テレビ系)では、広瀬すずの恋が匿名チャットで展開するなど、人間ドラマだけでなく恋愛ドラマにおいてもSNSを演出の軸に置くことが基本の時代となっていった。

ドラマは時代の写し鏡。今後どうなる?

 普及当初は主人公の出会いのきっかけや物語を展開するツールとして登場していたSNSだったが、昨今は前述したようにそのSNSを通じて起きる問題点を多く取り扱うスタイルへと変化を遂げた。利便性だけに注目し急速に普及してしまったが、本来先に考えるべきだった負担の代償を、個人がはっきりと認識すべき時代だ、ということがドラマにも反映されている。

 最近に至っては2018年『家売るオンナの逆襲』(日本テレビ系)が、SNSで挑発的な動画を繰り返し投稿する炎上系YouTuberを取り扱った半年後、渋谷スクランブル交差点にベッドを運んだYouTuberが書類送検されるなど、ドラマの内容が現実社会で起こるケースも散見されることから、いまの社会問題が解決に向かうまで、SNS問題に軸を置いたドラマが増えることも予想される。いずれにせよ、今後の社会傾向によりドラマコンテンツの軸や内容が大きく左右されることは間違いなさそうだ。

(文/向井美帆)

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