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『3年A組』は不気味な金八先生 “怖い教師ドラマ”系譜としても異色作に

 演技派俳優の菅田将暉がゴールデン・プライムタイムの連ドラで初の単独主演、さらに教師役に初挑戦しているドラマ『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系)。そんな話題性に加えて、学園ドラマにおけるユニークなテーマ設定や、地上波連ドラとは思えない生々しく熱いセッションのような演技合戦が、世の中をざわつかせ始めている。まだまだ謎の部分が多い同作だが、気になるポイントは多く、それらを掘り下げていきたい。

テーマ設定と青田買いキャスティングから漂う「おもしろそう」臭

 卒業まで残り10日となった学校で、3年A組担任の美術教師・柊一颯(菅田)はクラスの生徒29人全員を集めて、突然こう告げる。「今から皆さんは、僕の人質です」。生徒たちを監禁した教師の「最後の授業」は、数ヶ月前に自殺した生徒の死の真相と向き合うというものだ。

 菅田主演で、学園ミステリー。朝ドラ『半分、青い。』ヒロインとして演技力が高く評価された永野芽郁の出演、さらに物語の設定のユニークさなどからも、おもしろそうなニオイがプンプン漂ってくる。

 しかも、菅田×永野の『帝一の國』コンビや、菅田×川栄李奈の『au三太郎』コンビ、永野×川栄(+今田美桜)の『僕達がやりました』コンビ、鈴木仁×今田美桜の『花のち晴れ〜花男NextSeason〜』コンビ、神尾楓珠×富田望生の『シグナル』コンビ、『義母と娘のブルース』の上白石萌歌、『あなたには帰る家がある』『グッド・ドクター』の萩原利久、『中学聖日記』の若林時英など、ドラマや映画好きが反応してしまう旬の顔触れをキャスティングしているところにも、狙いが見える。

 菅田、永野、川栄など、すでに高評価を得ている役者を除くと、ほとんどがネクストブレイク候補生だ。菅田や山崎賢人、野村周平、高杉真宙、森川葵、松岡茉優などをキャスティングしていたことが後に再評価される『35歳の高校生』的な仕掛けだろう。

「怖い教師」ドラマの系譜からはみ出す人間的痛み

 放送開始前には『悪の教典』や『告白』、『バトルロワイアル』に近い内容が想像された。しかし、教師自らが悪者になり、生徒たちに「真の教育」をする内容は、むしろ映画『暗殺教室』や『女王の教室』、『黒の女教師』を思わせる。

 ただし、愛嬌たっぷりのまるいルックスで「来年3月までに自分を殺せなければ地球を破壊する」と宣言した謎の生物「殺せんせー」のようなユーモア溢れる怖さはない。また、黒ずくめの服にひっつめ髪、全く笑わない『女王の教室』の阿久津真矢のように、独裁的な「鬼教師」でもない。ロボットのように無表情で、時折不敵な笑みを浮かべる『黒の女教師』の生物教師・高倉夕子のように、冷たさを放っているわけでもない。

 菅田将暉の演じる柊は、線が細く地味で、生徒たちからは「ブッキー」と呼ばれて「雑魚キャラ」扱いされてきた教師だ。ところが、立てこもってからは冷酷かつ残忍な性格に「キャラ変」し、高い身体能力を駆使して攻撃してくる生徒を投げ飛ばしたり、校舎のいたるところに遠隔操作式の爆弾や監視カメラ、赤外線センサーを仕掛けたりする。

 この豹変ぶりは、むしろイジメられてきた生徒が突然にブチ切れたときのような爆発力に似ていて、「狂人」ではなく、人間としての痛みや膿が狂気に向かわせた恐ろしさを漂わせている。

提供元: コンフィデンス

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