『dele』脚本は山田孝之、菅田将暉の当て書きだった Pが語るドラマの狙い
“何を消したいか”にその人の人生が色濃く出る
そもそも同作は、作家・金城一紀氏とKADOKAWAによる、作家と映像メディアを繋ぐプロジェクト『PAGE TURNER』を起点に、ベストセラー作家の本多孝好氏が原案を構想。さらに金城氏が信頼できるパートナーとして、ドラマ『BORDER 警視庁捜査一課殺人犯捜査第4係』でタッグを組んだ山田兼司プロデューサーに企画を託したところからプロジェクトがスタートした。
「デジタル遺品に着目したところが、まさに本多さんの慧眼です。死後に残したい想いをテーマにした作品は昔からたくさんありますが、スマホやSNSに膨大なプライバシーがデジタルデータとして蓄積される現代は、むしろ『何を消したいか』にその人の人生が色濃く出る。題材はデジタルなのに、物語の手触りはアナログで生々しい。これは必ずおもしろいドラマになると確信しました」
脚本の当て書きでキャラクターがより魅力的に
「企画を社内で通すためには、キャストを含む詳細な企画書が必要。そこで本多さんと理想のキャストを話し合ったところ、お互いに一致したのが山田さんと菅田さん。この2人に連続ドラマで共演してもらうのはハードルが高いだろうとダメ元でしたが、両者ともに企画を読んで意欲を見せてくれました。そこから脚本を2人に当て書きすることで、キャラクターや物語もより魅力的になっていきました」
キャスティングも常に新たな発明をしていくべき
「その役をもっともおもしろくしてくれる方をキャスティングした結果です。近年のドラマはゲストも含めて出演者がパターン化している傾向も強い。それはある種の安定化でもありますが、ドラマシーンを前に推し進めるためには、キャスティングで常に新たな発明をしていく必要もあるのではと思います」
なかでも第5話ゲストとして発表された柴咲コウには、視聴者のみならず関係者も驚かされたはずだ。
「主演の2人もゲストのみなさんもクリエイター陣も、普通だったら深夜ドラマに参加していただくのがあり得ない方ばかりですが、誰もが『この企画だったら』と快諾してくれました。近年は役者も含めて、第一線で活躍している方ほど、クリエイティブで新しいことができそうな作品を重視する傾向が高まっていると感じています」
ドラマ企画で大切なのは“ワクワクの連鎖”
「この循環は“ワクワクの連鎖”のようなもので、企画を手がける際に大切にしなければと思っています。本作はまさにワクワクの連鎖の集大成で、その連鎖が視聴者まで繋がっていくように、情報出しから宣伝の仕方も含めて、あらゆる面で新しい挑戦をしなければと思い、取り組んできました」
ドラマ発表に先駆けた5月には、山田と菅田による共同のSNSアカウント(Twitter、Instagram)が公開。世間をアッと驚かせるとともに「何かが始まる」という期待感がネットに充満し、放送前に10万以上のフォロワーを獲得している。
さらに第1話の放送前後には、渋谷駅構内で特別展を実施。ドラマにちなんで、一般公募や山田、菅田をはじめとする出演者の声で集めた376件の「自分の死後に消したいデータ」の展示のほか、山田と菅田のSNSで募集したオリジナルデザインのカプセルトイが販売され、夏休みも相まって連日大いに賑わった。ネットで形成されたコミュニティをリアルの場に連れていくことで熱が高まり、情報もさらに拡散=連鎖していく。まさに現代ならではのワクワクの連鎖が起きたと言えるだろう。
新聞などメディアのドラマ評や視聴者の満足度も高い。TVerやAbema TVでも配信されていることから、視聴率以上の熱が起きているのは確実。ドラマは全8話。付かず離れずのバディの人生が、終盤にかけてどのように交錯していくかも楽しみだ。
(文/児玉澄子)