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超絶技巧で芯削る“鉛筆彫刻家”が語る信条「必要なのは折れない心」

 身近な文房具のひとつである鉛筆やシャープペンシルなどの芯に彫刻する日本初の鉛筆彫刻家・山崎利幸さん。作品が石原さとみ主演のドラマ『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』(日本テレビ系/2016年)の広告に使われたこともある。鉛筆を削った芯の先に施された彫刻は、まるで3D。文字や精巧なチェーンなど、鉛筆の芯に施されているとは思えない作品に目が釘づけになること間違いなし。今回は、鉛筆彫刻の魅力などについて本人に聞いた。

制作は複数の作品を同時に行う「ひとつ折れてもショックが少ないからです(笑)」

――鉛筆彫刻をはじめたきっかけは?
山崎利幸「フジテレビの番組『奇跡体験!アンビリバボー』で、アメリカの鉛筆彫刻家 ダルトン・ゲッティ氏の鉛筆の芯のアートを知り、驚きました。その後、家の掃除をしているとき、未使用の鉛筆が出てきたので、この機に削ってみようかなと、気軽な気持ちではじめました」

――最初に彫った文字を覚えていますか?
山崎利幸「最初に作った文字はアルファベットの“L”です。これを選んだのは、文字の中で一番簡単そうに思ったからです。簡単だと思いましたが、当時は30分ほどかかったと思います。今なら10分ほどで削れます。最初の頃は、彫刻前の鉛筆の芯を削り出す段階で折ってしまうなどということも多々ありました(笑)」
――道具はどんなものを使っていますか?
山崎利幸「道具は基本的には誰でも手に入れられるものです。カッターやミニドリル、ヤスリ、電動ルーター、やすり、定規が主な道具ですね。やっていくうちに、もっときれいに削りたい、細かい部分を削りたいなど、やりたいことが増えてきて、それに合わせてカッターナイフもいろいろ揃えていった感じです」

――とてもこまかい作業ですが、制作時間は1作品にどれくらいかかりますか?
山崎利幸「文字によって制作時間は異なります。おおまかですが、アルファベットだと10〜20分ほど。カタカナは20〜30分、ひらがなは30〜60分、漢字だと30〜180分ぐらいです」

――ひと月のにどのくらいの数の作品を制作しているのでしょうか?
山崎利幸「0本の月もあれば10本以上の月もあります。仕事との兼ね合いや、依頼内容によっていろいろです」

――「これはきつかった…」など忘れられない失敗談はありますか?
山崎利幸「アルファベット26文字の作品を製作中に、23文字目の「X」を削っているときに折れてしまったことです。このときは頭の中が真っ白になってしばらく呆然としていました」

――それは、ショックが大きそうですね……。細かい作業なので、根気勝負なのかなと思いますが、制作中のモチベーションの保ち方はありますか?
山崎利幸「イライラすることもあるんですけど、やはりイライラすると折れる確率が高いんです(笑)。折れてしまうと一気にテンションが下がるので、制作中は平常心を心がけています。制作は、ひとつの作品に集中するのではなく、複数の作品を同時に進めることで、折れたことへのショックを最小限に抑えています」

お気に入りの“チェーン”でギネス記録に挑戦したことも「実は申請はハードルが高い」

――これまで数多くの作品を制作されていますが、とくにお気に入りの作品はありますか?
山崎利幸「お気に入りはチェーンです。本物のチェーンと同じように作ってあるので、ゆらゆら揺れるところを見るのが好きですね。彫っていても楽しいです。ひと続きの芯から掘り出していきます。チェーンは、ホームセンターでさまざまなタイプのチェーンを見て、構造を確認し、削ってみました。チェーンはこれまで、特にたくさん失敗してきました。今でもチェーンを制作するときはドキドキしながら削っていますよ」

――チェーンもすごいですけど、なんでも1本の鉛筆にアルファベット26文字を彫刻して、ギネス登録を考えたことがあるそうですが…
山崎利幸「ギネスに挑戦したいとは思っていますが、挑戦できていません。実は、チェーンの輪、26個でギネスに申請できるというので、2017年に27個の輪を完成させるなど記録は更新しています。でも、ギネスの申請は、制作過程をすべて記録しなくてはいけません。また記録だけでなく、証人も必要なので、ギネスの申請はとてもハードルが高いのです。いまはそのハードルを超える方法を模索中です」
――作品の依頼も受けているとのことですが、依頼では、どんなものを制作することが多いですか?
山崎利幸「依頼は人物名や会社名等など名前の依頼が多いですね。また、ドラマ『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』での宣伝用の作品は、とくに難しかった依頼のひとつです。校閲が設定のドラマだったので、作品は赤鉛筆を削って制作したのですが、色鉛筆というのは芯が柔らかく折れやすいんです。漢字を削るときにはかなり苦労しました」

――制作したあとの達成感や、見る人に驚きを与えるなど、その魅力はいろいろありそうですが、山崎さんが考える鉛筆彫刻の魅力とはどんなものですか?
山崎利幸「2〜3mmの鉛筆の芯に無限の可能性が広がっていることです。彫刻ができるだけでなく、たとえば、地元甲府市の書道家さんとのコラボレーションなど、いろんな人や事とのつながりを楽しめるのも魅力ですね」

――見る人には、どんな部分を見て欲しい、どんな風に楽しんで欲しいですか? 作り手としての思いがあれば聞かせてください。
山崎利幸「本当は手に取って間近で見てもらいたいのですが、折れてしまう可能性がある
のでおすすめできません。折れないように注意しながら、近寄って見ていただきたいです」

――山崎さん自身、最初は気軽に鉛筆彫刻を始められたようですが、初心者が挑戦するとしたら、アドバイスはありますか?
山崎利幸「鉛筆の芯を削って形にしていくだけなので、制作自体は難しくありません。一番気をつけることは折らないことです。折れてしまっては作品にならないので。ただ、芯は普通に文字を書いていても折れてしまうくらい折れやすいので、削ったら折れるのは当たり前のこと。折れたからって、そこで嫌にならず、“芯は折っても心は折らずの精神”で削り続けていただければ、きっと楽しいと思います」

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