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ガンプラ│トップモデラーインタビュー(ガンダムプラモデル)

「なにこれ、欲しい」という声続出 旧キットを改修し、劇場版の“安彦ガンダム”を再現

旧キット(左)を改造し、劇場版『めぐりあい宇宙』の“安彦ガンダム”(右)を再現/画像提供:ヲパ (C)創通・サンライズ

旧キット(左)を改造し、劇場版『めぐりあい宇宙』の“安彦ガンダム”(右)を再現/画像提供:ヲパ (C)創通・サンライズ

 今年、40周年を迎えたガンプラの進化は著しいものがある。一方で、1980年代に発売された初代ガンプラシリーズ(旧キット)に愛着を持っているモデラーも多く、今回紹介するヲパ氏(@GunGunpla)もその一人だ。ガンプラブームの只中で公開された劇場版『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』に登場する“安彦ガンダム”への想いと、旧キット改造にこだわる理由を聞いた。

子どもの頃から「劇中のイメージ・プロポーション」を再現するのが夢

――ガンダムの中で一番好きな作品は?

【ヲパ】劇場版『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』(1982年公開)です。特に、冒頭のアムロ、カイ、セイラ、スレッガーの出撃シーンからドレン艦隊を全滅させるシーンがダントツに好きです。セリフ回しや演出はもちろん、BGMも絶妙のタイミングだと思います。

――今回紹介しているガンダムは『めぐりあい宇宙編』をイメージしたとお聞きしました。

【ヲパ】はい。作品名をつけるなら『劇場版ガンダム・最終決戦仕様』でしょうか。
  • 1980年に発売された「1/60 ガンダム」

    1980年に発売された「1/60 ガンダム」

――使用したキットを教えてください。

【ヲパ】40年前に発売された『1/60スケール ガンダム』です。

――いわゆるガンプラの初代シリーズ(旧キット)を改修されたわけですね。制作におけるコンセプトは?

【ヲパ】ガンプラを作るようになった昔から、変わらずテーマとしてあるのは「劇中のイメージ・プロポーションを再現したい」というものです。最近になって、1982年に発売された模型雑誌『HOW TO BUILD GUNDAM2』の表紙“ガンダムフルハッチオープン”を現代風にアレンジし、オラザク大賞を受賞したmatさん(@Matmat825)に刺激を貰って、自分は安彦良和さんが作画監督を務めた「劇場版」に登場するガンダムを作りたくなりました。
  • 『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』の最終決戦仕様を再現

    『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』の最終決戦仕様を再現

――制作でこだわった部分を教えてください。

【ヲパ】昨今の流行りであるディテールやデカールは使わずに、ともすれば単調になりがちな白や、玩具っぽくなりそうなトリコロールカラーを、リアルっぽく表現出来たらと思って塗装しました。あと、先に完成させていた1/60ゲルググ(これも劇中イメージで作成)と並べたいという意気込みで挑みました。

――設定したストーリーはありますか?

【ヲパ】1年戦争の最終決戦となったア・バオア・クー戦。劇場版ではバズーカを両腕に携えた“フル装備”のガンダムが出撃します。最終決戦だと覚悟を決めたアムロが搭乗するガンダムが、今まさにホワイトベースのカタパルトデッキから出撃する…そんなストーリーをイメージしました。

旧キット(左)を劇場版仕様に改修

旧キット(左)を劇場版仕様に改修

「欲しい機体が売っていないなら自分で作る」それがガンプラの魅力

――旧キットの魅力とは?

【ヲパ】先ずは値段です。僕が子どもの頃と同じ値段で買えるという奇跡。バンダイさんの企業努力の賜物だと思っています。次にシンプルな構成と構造。接着・合わせ目消し・やすりがけなど色々なスキルを学ぶことが出来ます。最後に素材としての魅力。小顔が主流となった最新キットに比べると牧歌的なフォルムですが、最近の充実したマテリアルを使えば、当時は出来なかった工作も躊躇なく出来て効果もバツグンです。

――ヲパさんが旧キット制作にハマった理由というのは?

【ヲパ】僕は、「安い・切った貼ったし易い・手をかけたぶん如実に良くなる」のが旧キットの魅力だと思っています。アクションポーズを取らせて遊ぶわけでは無いので、立ち姿がカッコ良ければそれで良いという考えです。また、発売当時に比べて思った通りに作れるようになったため、当時のリベンジ的な意味合いもあるような気がします。
――安彦さんが描くガンダム(安彦ガンダム)のプロポーション再現度が高いですね。

【ヲパ】劇中で見たプロポーション・ボリューム加減にこだわっています。あとは、対比となるパイロットフィギュアなどを添える事でMSの大きさの表現も意識しています。塗装も劇中を強くイメージしていて、エアブラシと筆塗りを使い分けて再現しました。最近は筆塗りで表現する塗装の表情に魅力を感じています。

――安彦ガンダムを制作するにあたって、何か影響を受けておりますか?

【ヲパ】直近ではmatさんの“フルハッチオープン”を見て「僕も作りたい!」と創作意欲を掻き立てられました。そして、プロモデラーのMAX渡辺さんの作品集『MAX WORKS』の表紙にもなった、“原点回帰”として作成されたガンダムの影響もあります。何より一番は「安彦良和さんの描いたガンダムを再現したい」という思いです。

――安彦さんが描くガンダムは、人間っぽさというか“キャラクター性”が備わっています。大好きな映画『めぐりあい宇宙』で活躍する安彦ガンダムを再現したかったわけですね。

【ヲパ】この40年間、RX-78ガンダム自体は何度も立体化されてきました。でもなぜか、カッコ良さの追求はされてきたのに、“劇中イメージの再現”となると、現時点でも皆無に等しいのではないでしょうか。

――欲しいキットが売っていないなら、自分で理想のガンプラを作ってしまおうと。

【ヲパ】まさにそれがガンプラの良さであり楽しさですね。シンプルながらも美しい線で紡がれた、“映画館で見たガンダム”を表現したかったんです。

――おっしゃる通り、劇場版ガンダムを彷彿とさせる美しいプロポーションです。

【ヲパ】安彦ガンダムと呼ばれる顔は特にこだわりました。何度も何度も映画を見なおし、原画を見てバランスを決めました。ガンダムのカメラアイが、ヒサシの具合で下からのあおりなら優しく、俯瞰からなら鋭く見えるように留意しました。

――安彦ガンダムらしく見えるのは、そうした“匠の技術”の結果なんですね。

【ヲパ】顔だけではなく全体的に“人型らしさ”を意識しています。胸のラインは緩やかなアーチを作り、ダクトは外に向かって下がる様に気をつけて作り直しました。それと、1年戦争の最終局面ですが、使い込まれた機体ながらもしっかりメンテナンスは受けていただろうと推測し、派手な汚しは避けました。

――ガンダム、ゲルググ以外の劇中登場作品もぜひ再現してほしいです。最後に、ヲパさんにとってガンプラとは?

【ヲパ】ガンプラ、とりわけ旧キット制作に関しては、子どもの頃に思った様に作れなかった充足感の補完をしている様な気がしています。尊敬する方からの受け売りですが「青春の落ち穂拾い」ですね。

(C)創通・サンライズ

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