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ドロドロで味不明の『カオスープ』“透明飲料ブーム”と逆行のワケ
もはや何味? あえて“わかりにくい”商品名を採用
「最初は“わからなすぎる”って商品名について社内で議論になりましたけどね(笑)」と笑いを交えつつ、当時の思い出を語る弦田さん。そんな“カオス”な商品名にはこんな意図が隠されていた。
「今回、私たちがつくりたかったのは中食を意識した“スープ”。味が想像しやすい名前にすると、普通の清涼飲料水の域から出られないと思ったし、開けてびっくり玉手箱みたいに実際に商品を口にして、お客様自身にその味を確かめてほしかった。あの素材の味がする、あの味が顔出してきたぞ!なんていう、素材を探しながら味わう時間を楽しんでほしかったのです。だから、あえて素材がわからないような商品名にしたんです」(弦田さん)
『カオスープ』は、働く現代女性がメインターゲット。忙しいと食事を楽しむ時間を削ってしまいがちな自身の経験から、ゆっくり食事をとりにくいシチュエーションでも、手軽に素材を味わう時間を設けてほしいという思いが込められた名前のようだ。
また、若い女性の間ではもはや“SNS映え”として、変わった商品を手にしたらSNS上で披露するのが当たり前のようになっている。『カオスープ』という商品名もまさにその流れに乗り、注目を集めているようだ。
「マーケティング的にはSNSで話題になることを見越していたわけじゃなくて、商品名を考えているときに“カオスだけど美味しいよね”っていう感想を私達なりに純粋に表現したものなんです。とはいえ、実は『トマトと桃とクリームチーズとミントの冷製スープ』というわかりやすい名前と最後まで迷ったんですよ(笑)。でも、『カオスープ』ってキャッチーだし、インパクトの強さを大事にして、まずは名前を覚えてもらいたいなって」(弦田さん)
透明飲料の清廉性と逆行する、アナログ思考な“カオスープ”
「『カオスープ』は、着想して商品化するまでは2年ぐらいかかりました。通常の商品で約10ヶ月、『世界のKitchenから』シリーズでは約1年半が開発期間の目安なので、だいぶ長くかかっちゃいました(笑)。まずは海外での現地取材でインスピレーションをもらいに行くことが多いですね。その国の一般のご家庭にお邪魔させてもらって、本当の家庭の味を体験させてもらうんです。しかしその味をそのまま商品化するのではなく、持ち帰るのは現地の“知恵”。今回はベトナムの“五味五彩二香”という知恵をベースにしています」(弦田さん)
五味五彩二香とは、ベトナム流のおいしさの作り方のことなんだそう。5つの味、5つの色彩、2つの香り、これらの要素が一皿にふんだんに盛り込まれていることが、ベトナム人が考える理想の料理おいしさなんだとか。前述した現代の“透明飲料ブーム”とは逆行している、赤紫色のびっくりする見た目には、そのような知恵が隠されていた。
「おどろおどろしく見えてしまう方もいらっしゃるけれど、素材の色をそのまま活かしているからこその色。これはあくまで個人的な意見ですが、飲み物が透明になることで“清廉性”が表現されたり、“面白い!”と、喜ばれる一方で、食材のもともとの色ではないのが不自然な気もしていて。技術の進化によって可能となった、まさに“イマドキ”な飲み物だと思います。しかし、私達の提供する飲み物は、“食=食素材から調理して作られるもの”でありたいなと。たとえるなら透明飲料はデジタルで、『カオスープ』はアナログ。技術の進化でビックリさせるよりも、“こんな食の楽しみ方ってあるんだ”という台所のおもしろさを伝えたい。現代の閉塞感に苛まれている人達がその次に求めるのって、温もりを感じられるアナログなものだと思うんです。ブームの裏に隠れた、小さな違和感や気持ちを汲み取って、波を起こしていくのが私達の役目。流行や目新しさとはまた違った価値を提供できればと思います」(弦田さん)
SNSも毎日チェック「“かゆいところに手が届く”ような存在に」
SNSでは、「スープ系のペットボトル商品増えないかな」という声も見られる。今後の『カオスープ』の展開はどのように考えているのか聞いてみると、「これで終わらせる気はないです」ときっぱり。
「“ペットボトルでスープを飲む“という新しい体験について、反響があるのはすごく嬉しいことですね。『カオスープ』はあくまでその第一弾。今後は第二弾、第三弾と展開して、『今日はどの味にしようかな』と選べるようにしたいんです」(弦田さん)
たしかに、次のスープがどんな味になるのか、第二弾、第三弾の行方までも気になってくるのは、その名称と、怖いもの見たさ心をくすぐる見た目のせいなのかもしれない。今後の展開に期待したい。
(文/Kanako Kondo)