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「透明飲料」乱立する背景とは? 一方で“色付き飲料”へのノスタルジーも
透明化の源流は「フレーバーウォーター」、ミネラルウォーターの“清涼飲料水”化が始まる
しかし、2010年あたりから普通のミネラルウォーターにミカンやメロンなど、果物の味をつける「フレーバーウォーター(味のついた水)」が出回りはじめる。いわばミネラルウォーターの清涼飲料水化だ。その5年後、透明化したヨーグルト味の飲料がフレーバーウォーター市場最速のペースで、累計販売数量1,000万ケースの大ヒットとなると、続いてレモンティー、ミルクティー、カフェラテ、ノンアルコールビール、そしてコーラまでが透明化されていくのである。
「何色にも染まっていない」無色透明は“清廉性”の象徴
清涼飲料水市場は常に激戦であり、新商品を発売しても売れなければあっという間に消えていくのが通例。「○○なのに透明」というインパクトは、メーカー側としてもぜひとも欲しい強力なキャッチでもあるのだろう。
さらには、“無色透明”に対する日本人の感覚・感情も影響しているようだ。花嫁衣裳の白無垢に象徴されるように、「何色にも染まっていない」ことは美徳なのである。無色・透明であることは、“清く”、“汚れがなく”、“明るい光”であるというイメージから、透明飲料水への好感度を無意識レベルで引き上げているのかもしれない。
「メローイエロー」「ガラナ」…ドギツイ色付き飲料は「語り合える」魅力にあふれていた!?
その「ファンタ」に対抗していたのが「チェリオ」で、そのオレンジ・緑・紫などの色は、「ファンタ」よりも毒々しく妖しい光を放っていた。また、コーラの瓶が190mlであったのに対して、チェリオの瓶は320mlと大容量。おまけにお店に瓶を返せば、10円戻ってくるという“ワンウェイ瓶”だった。
また、瓶から缶への販売が主流になりはじめたころ、ペプシから販売された「マウンテンデュー」とコカ・コーラから販売された「メローイエロー」のライバル関係も勃発。キャッチフレーズは、「最初で最後の際どい味」(マウンテンデュー)と「とっても訳しきれない味」(メローイエロー)と、もはや美味しいのか不味いのかよくわからない表現になった。
それでも「マウンテンデュー」のどぎつい緑色(ジュースは黄色)と「メローイエロー」の黄色のイメージは強烈だったし、それからしばらくして両者とも見かけなくなったが(後に両者とも復刻)、あの色や味は脳と舌にいまだに刻まれていたりするのである。
コーラ自体、1993年に無色透明のコーラ「タブクリア」を発売するも日本ではいまひとつ定着せず、1年足らずで販売中止となった過去がある。今回の“透明化”ブームを横目に、ネット上では「四半世紀の時を超えリベンジ!?」、「今回のクリアコーラを見て、タブクリアを思い出すのは四十路オーバーと決定」など、“かつての透明化”を懐かしむ投稿が多く見られた。
コーラ系飲料で言えば、本家のコカ・コーラに対し「ドクターペッパー」はかなりクセのある味で、「ドクターペッパー好き=大人の味がわかる人」というイメージもあったし、さらには北海道の「ガラナ」のような、ドクターペッパーよりさらに強烈な味のご当地コーラなどもある。ちなみに1984年には、「コーラの前を横切るヤツ、冒険活劇飲料サスケ」なる糸井重里氏によるキャッチコピーがついた「サスケ」という炭酸飲料もあったが、これもあっさりと消えてしまった。
そして今まさに、空前の透明飲料水ブームに直面しているわけだ。見た目もクリアでキレイな透明飲料は、臆することもなくすんなりと飲めてしまうのだろうが、ドギツイ色つき飲料で育った世代にしてみれば、それらについて熱く語り合った思い出まで、「無色透明化」されないことを願うばかりである。