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「南アルプス天然水」西日本では売ってない? 地域で“山違い”販売元を直撃

東日本在住者にはおなじみの「サントリー 南アルプスの天然水」

東日本在住者にはおなじみの「サントリー 南アルプスの天然水」

「サントリー 南アルプスの天然水」と言えば、宇多田ヒカルのCMでもおなじみの人気ミネラルウォーターだが、実は現在、店舗や自販機で購入できるのは東日本だけ。西日本では販売されていないということを知っているだろうか? 1991年の発売当初は全国展開していた同飲料。発売から27年、圧倒的な知名度を誇るヒット飲料が、なぜ東日本以外では売られていないのか? 担当者を直撃した。

商品名もラベルデザインも異なる3種の「天然水」

  • 九州、西日本で売られているのは…。商品名に注目!

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 セーラー服姿の遠山景織子(当時14歳)が信州の山道を駆け抜ける、1990年代に放送された南アルプスの天然水のCMでは、爽やかな歌声にのせて「南アルプス天然水」を連呼していた。アラサー以上の世代にはこの歌の印象が強く、サントリーの天然水といえば南アルプスというイメージが強いことだろう。

 しかし、現在、同飲料を買えるのは中部以東。なんと、九州では「阿蘇の天然水」、西日本では「奥大山の天然水」が販売されている。

「インターネットサイトではどの種類も購入できますが、原則的には同一エリアに複数の商品を展開することはありません。南アルプス天然水が店舗や自販機で買えるのは東日本だけです」(サントリー食品インターナショナル・江藤雄資さん、以下同)。東日本在住者には西日本エリアで売られていない事実とともに、天然水に別シリーズがあったことも驚きだ。

「あまり知られていませんが、実はラベルデザインにも違いがあります。一見するとどれも同じように見えますが、それぞれの地域に合わせた山、花、鳥をデザインしています」(サントリー食品インターナショナル・江藤雄資さん、以下同)
  • 3種の天然水のラベル比較! それぞれの違いに気が付くだろうか!?

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 目を凝らすと雪化粧の山並み、可憐に咲く黄色い花、飛翔する青い鳥のそれぞれの違いに気付く。南アルプスは甲斐駒ヶ岳(山梨県・長野県)に、フクジュソウとルリビタキ、阿蘇は阿蘇山(熊本県)とユウスゲの花にオオルリ、奥大山は大山(鳥取)とダイセンスミレ、そしてオオルリを描いているという。

「まるで間違い探しのようですが(笑)、すべて“ナチュラルミネラルウォーター”への強いこだわりの表れです」

需要の拡大とともに水源地を新設、気になる味わいの違いは……

 一般にミネラルウォーターと呼ばれる飲料水は、処理方法の種類によってナチュラルミネラルウォーター、ナチュラルウォーター、ミネラルウォーター、ボトルドウォーターの4つに分類される。ナチュラルミネラルウォーターは特定の水源から採水された地下水で、自然な状態でミネラルが溶け込み、ろ過・沈澱・加熱殺菌以外の処理を施していないものを指す。つまり、最も自然でピュアな天然水だ。

「“ナチュラルミネラルウォーター”の南アルプスの天然水は、海水が蒸発して雨となり、森の地中に染みてボトリングできるまで約20年かかります。1991年の発売以降、売り上げが伸びるにつれて、未来を見据えた水源を探す必要があると考え、新たな採水地として阿蘇と奥大山を追加しました」

 つまり、南アルプスの天然水の需要拡大によって2003年に阿蘇、2008年に奥大山が発売され、それに伴い、現在は3つの採水地を中心に販売エリアが分けられている、というのが西日本で南アルプスの天然水が販売されていない理由だ。気になるのは味わいの違いだが…

 同社ホームページによると、硬度30の南アルプスは「キレがよく清涼感がある味わい」、硬度80の阿蘇は「口当たりがよくまろやかな味わい」、硬度20の奥大山は「水のおいしさを感じさせる甘い味わい」と記載がある。

 実際に飲み比べてみたところ、硬度が高い阿蘇はやや重みを感じたが、南アルプスと奥大山の違いはわからない。「軟水と硬水ほど違えば一般に舌で感じることができますが、このくらいの硬度差では、味の違いがわかりにくいかもしれないですね」と江藤さん。

「南ア」のネームバリューよりも水源への自信 大手サントリーの矜持

 それにしても、サントリーほどの大企業であれば、こうした3種の天然水を販売していることをもっと多くの人に周知することが可能なはずだ。知る人ぞ知るマメ知識となっているのはなぜだろうか。

「信じられる環境で水を育み、その近くのエリアで提供したい。そんな当たり前のことをしているだけなので、あえて広報活動はしていません。弊社の天然水はどれも、自然のおいしさを生かしたナチュラルミネラルウォーターです。それを伝える意味でも、水源地を名前にしたほうがわかりやすいと考えていますし、弊社では森を育てる取り組みも行っていて、“森の番人”ともいうべき職員が在中しています。こうしてこだわって作られたからこそ、水の採取地もひとつの価値なんです」

 阿蘇・奥大山シリーズについて意識的なPR活動は行っていないが、宇多田が登山するCM『#水の山行ってきた』では、南アルプス篇だけでなく奥大山篇も放映され、水源地の魅力を存分に伝えている。

 全国的に知名度のあった“南アルプス”のネームバリューを捨て水源地を記載する、それは自社ミネラルウォーターへの自信の表れであり、飲料業界を牽引してきたサントリーの矜持と言えるのかもしれない。

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