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健康ブームで芸能界の“デブキャラ”崩壊?
相次ぐ芸人たちの“激やせ”でキャラが崩壊?
健康上の理由、番組やCMの企画として、美を追求して…と理由は多種多様だが、次々と芸人・タレントがスリム化している。中でも芸人は、“デブキャラ”としても定着している人が痩せる事例が増加しているようだ。その背景にあるものは何だろうか。
健康企画のまん延が、芸人の“ヘルシー化”を後押し
「こうした流れは、現在のテレビの視聴者の多くが中高年であることと無関係ではない」と分析するのはメディア研究家の衣輪晋一氏。一方で、松村邦洋、エドはるみなど、ライザップのCMでの芸人の激やせパフォーマンスも世に衝撃を持って受け入れられたことも指摘し、「現在はダイエットブームも加速しており、広告代理店や芸能事務所が、タレントを激やせさせることが話題作りに有効であると気づいた。その背景には、“デブキャラ”が飽和状態で枠が埋まってしまっているため、新たな展開を模索したい芸能事務所側の昨今の思惑もあるのでは」と解説する。
また、松村邦洋は2009年に東京マラソンへ出場した際、100キロ越えの体重で心臓に負担がかかり急性心筋梗塞を起こして心肺停止状態で救急搬送されたことがあった。松村本人がCMの記者会見で「命あってのものまね」と語っていた通り、この危険な体験がダイエット企画に踏み込んだ理由とも想像される。このように、健康面が危惧されても“デブキャラ”を貫いていた芸人も、今や“ヘルシー化”の流れの中にいる。
ビジネス故の巨漢キャラのはずが…イメージ乖離の恐れも?
また、巨漢キャラ・伊集院光は1997年に、出演のラジオ番組『伊集院光深夜の馬鹿力』(TBSラジオ系)の中で、ダイエット企画によって半年で50キロ落としたものの、故・伊丹十三監督からクレームが入ったことを告白。1997年公開の映画『マルタイの女』に出演が決まっていたが、台本には役柄について“著しく太ったデブ”との記述が。「ダイエット前の体重に戻るまで撮影が一時中断されたそうで、伊集院さんは“伊丹十三をデブ待ちさせた男”と誇らしげにこのエピソードを披露した。さらには、痩せることで視聴者の間で“重病説”が囁かれることもあったと話されていました」(衣輪氏)
つまり“デブキャラ”が定着してしまうと、安易には痩せられない。イメージを持続するために太っておかなければならず、それが“ビジネスデブ”と呼ばれる所以なのだ。
タレントのヘルシー化とは裏腹に“ふくよか”だからこその好感度はいまだ絶大
「彦麻呂さんやホンジャマカの石塚英彦さんなどグルメリポーターが太っているのは、“美味しいものをよく食べている”という説得力にもつながります。日本テレビの水卜麻美アナウンサーのように“微笑ましい”と人気が上がることもある。また出川哲朗さんは、あのころりとしたかわいらしい体型でなければ笑いは半減するかもしれないし、ロバート秋山竜次さんの“体型モノマネ”もあの恵体あってのもの。マツコ・デラックスさんはあのゆるキャラのようなシルエットが一つのアイコンになっており、もしこの方々が痩せてしまえば、見慣れたキャラが変貌することで寂しささえ覚えるでしょう」(同氏)
さらに言ってしまえば、「キャラが崩壊した後、今の人気は果たして持続できるのか」と、要らぬ心配をしてしまう視聴者も少なくないはず。「“激やせ芸人”には是非、話題優先ではないことを証明するため、2018年をその真価を見せる一年にして欲しい」と衣輪氏は語る。
かつて上方落語の雄・初代桂春団治は、芸のために思うがままに生き、歌謡曲『浪花恋しぐれ』でその人生を謳われるほどの伝説となった。こうした破滅型天才の芸能人ではほかには横山やすしが有名で、芸人に限らなければ、藤山寛美、松田優作、やしきたかじんもこの部類に入る。彼らは破天荒に生きたが、滅茶苦茶に思える人生もその振る舞いも、当時から憎まれることなく、寧ろ共感を持って迎え入れられていた。今の“ヘルシー化”と風向きは真逆で、“生き急いで”見えた人々だった。
とはいえ、当時と今とでは事情が違う。先述の伊集院光もTBSラジオ『伊集院光とらじおと』内で3年かけて健康的に痩せるという企画を実施中。芸人に求められるものも時代と共に変わりつつある。だが芸人である以上、すべての行動はやはり芸のためだ。健康のために痩せるにしろ、“痩せる仕事”にしろ、すべて“芸の肥やし”とし、芸人としての矜持を持って、2018年もお茶の間へさらなる笑いを届けてもらいたい。
(文/中野ナガ)