趣里、“段取りオンナ”が活きた『ブラックペアン』の役作り
セリフが少ない分、何を考えているのかということを大事に表現した
趣里 このような賞をいただけるなんて思ってもみなかったのでビックリしました。これまでも賞を頂くことがあまりなかったので、このような立派な賞をいただくことができ、とても嬉しいです。
――『コンフィデンスアワード・ドラマ賞』では、これまでも『リバース』(TBS系/17年)での村井香織役、『この声をきみに』(NHK総合/17年)の熊川絵里役でも候補に挙がり、高い評価を得ていましたし、趣里さんはいつ獲ってもおかしくない存在でした。
趣里 本当ですか? そんなふうに評価していただいて嬉しいです。今回はセリフが少ない分、何を考えているのかということを大事に表現したいと思いました。また、猫田麻里は仕事のできる看護師なので、やはり意思をしっかり持っていないといけないとは考えていました。
趣里 今回、オペ室の看護師ということで、多くの監修の先生たちにもたくさんアドバイスをいただきました。撮影後に、医療指導の先生や共演者の方たちと食事に行ったのですが、その時に、実際にオペ看として仕事をしている方から、「私たちから見てもオペ看に見えるし、この仕事にスポットが当たってくれたのもとても嬉しい」と仰っていただけことも、頑張ってよかったと思いました。
手術シーンで段々と渡海先生と呼吸が合っていくのを感じられた
趣里 手術では、先生が次にどう動くかを読んでオペ看が次々と器具を渡す必要があり、物理的にも覚える量が多かったというのはありました。ただ、私って段取りオンナなんです(笑)。舞台をやっているからというのもありますが、段取りをキチンと覚えて進めたいタイプですし、そうやって段取り良くやるのが好きなんです。こういう性格もこの役では活きたかな、と思います。
――そのなかでも、二宮和也さん演じる渡海征司郎との関係性は印象的でした。
趣里 2人ですごく話し合ったわけではないですが、手術シーンで段々と呼吸が合っていくのは感じていました。また手術シーンは必ずマスクをしていますから、目で何を考えているのかを表現できるように、現場では皆で話し合っていました。猫田という看護師は手術の現場でも“この医者はダメだな”と思いながら渡海先生の登場を待っているといったように、常に描かれていること以外に余韻がありましたから、その点は演じていてやりがいがありました。
人の命を救うことに誠実であるということはしっかり表現したかった
趣里 「はい」というセリフが一番多かったのではないでしょうか(笑)。後半は葵わかなさんが演じた花房美和に詰め寄るシーンもありましたが、基本的には「はい」と「……」でしたし、そこは難しかったです。
――寝ているシーンも多かったですね。
趣里 渡海先生が指示しているのにソファで寝ようとするとか(笑)。それでも仕事ができるからクビにならないんだということは意識していました。ダラダラした印象で説明を聞いているような子ですが、師長さんが「アンタ辞めなさい」と言わないのは猫田が病院にとって必要な存在だから。そこはしっかりと表現しないといけない。あとは人の命を救うことに誠実であるということ。ここはしっかり持っていたいと心がけました。
お芝居での空間把握ではバレエの経験が活きているのかも
趣里 両方ともそれぞれの良さがあります。私自身、舞台が好きなので、年に2本はやりたいと思っています。ただ、テレビドラマ独特の瞬発力というか、初めてお会いした方と撮影の現場で反応し合っていく感じが今はとても面白いです。こうした現場の熱を視聴者の方にも楽しんでもらえたのかなと、『ブラックペアン』の公式Twitterに寄せられた声なども見ながら感じていました。ドラマの力って凄いなと改めて思いました。
趣里 たまにその質問をいただくのですが、やっぱり初心を大事にしたい。怪我をしてしまいバレエを辞めなくてはいけなくなって苦しんでいた時に、映画や舞台、ドラマを見て、こういう世界があるんだと知って救われたんです。現実逃避ではないですが、映画を観て泣いたり笑ったりする、そういう時間って人生においてとても大切です。私もお芝居を通じて、そういう時間を届けていきたいし、救われたと思ってもらいたいと思いながらやってきました。そこは絶対に崩さずにやっていきたいです。
――キャリア的にも年齢的にも、次のステージに進むタイミングのようにも思います。
趣里 昔は若く見られがちでしたが、最近は実年齢より上に見られることもあって。確かにそういうタイミングなのかも。今、舞台とドラマの撮影でとても忙しくて…、1つに集中したいと悩んでしまったこともありましたが、こういう状況も楽しむしかないと考えてみたら、毎日が結構楽しくて。このお仕事ってやっぱり一期一会だから、コミュニケーションを大事にして楽しくやりたいなと思っています。
――群像劇のなかで趣里さんの存在感が際立つのも、コミュニケーションを大事にしながら、自分の位置を見つけているからもしれませんね。
趣里 そうかもしれません。最初は監督や主演の方、周りの人の出方を見ながら考えていき、あとは“どう思われようと私の役割はコレだから!”と決めます。おそらくこういう空間把握能力って、バレエの経験が活きているのかも。バレエこそセリフがないまま空間のなかで表現していくものですし、そういう感覚はバレエを通じて芽生えたのかもしれません。
――最後に『ブラックペアン』の視聴者に向けてひと言いただけますか。
趣里 皆さんに評価していただいて、ものすごく嬉しいですし、明日からも頑張ろうと励みになりました。自分だけじゃなく、スタッフや共演者の皆さんがいて、猫田というキャラクターができました。今は皆さんにありがとうと言いたいです。『ブラックペアン』はDVDも発売になります!メイキングも入っていて、チームで頑張った様子が収録されていますし、本編では観られなかった部分も楽しめると思います。今回の賞を励みに、これからもお仕事を楽しめたらと思います。