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吉本興業・大崎洋CEO、迅速な事業拡大の裏側「良くも悪くも大阪の吉本興業100年のDNA」

沖縄を世界に向けたエンタテインメント創出拠点とすべくスタートした『沖縄国際映画祭』(島ぜんぶでおーきな祭)が10周年を迎えた今年、エンタテインメントの専門学校を開校し、沖縄からの国産エンタテインメントプラットフォーム設立構想を発表。節目の年からプロジェクトを次のステップへと進める吉本興業・共同代表取締役 CEOの大崎洋氏に、これまでの沖縄への取り組みと、幅広いビジネス展開を仕掛ける“吉本DNA”について聞いた。

現場で肌で感じて学ぶ次の100年に必要なDNA

『島ぜんぶでおーきな祭 第10回沖縄国際映画祭』に参加した大崎洋CEO

『島ぜんぶでおーきな祭 第10回沖縄国際映画祭』レッドカーペットに参加した大崎洋CEOと宮川たま子

――15年からメインタイトルを『島ぜんぶでおーきな祭』とした『沖縄国際映画祭』がついに10年目を迎えました。振り返ってどう評価していますか?
大崎洋吉本興業の社員、芸人と無我夢中で走ってきて、ふと気がつけば10年経っていたという感じでしょうか。スタートしたときから、地元の人たちからも「どうして沖縄でこんなお祭りを?」とよく聞かれるんですけど、そのたびに「なんとなく」と(笑)。確かに毎年の費用はずっと持ち出しで、なにかの権利が得られるわけでもない。私自身、イベント開催にかかわる関係者たちを見て、なんでみんな一緒にやってくれているんだろうとずっと思っていました。ただ、まずコンセプトとしてあったのは、地元に愛されるお祭りにしようということでした。沖縄の人たちは、いろいろな社会状況のなかで若い世代でも世の中に居場所が見つけにくいところがある。一方で吉本興業は、世の中のシステムから落ちこぼれた人を集めてお笑いの興行で成り立たせている、学校のようなものです。沖縄で吉本興業のような学校や会社を作って、地元でエンタテインメント産業を創出することができれば、もっと明るく楽しい島になるんじゃないか。今も新しい芸能が生まれてくる島なので、エンタテインメントの仕事は島の人たちに向いていると思っていて。今年は学校を開校しましたが、次のステップとしてこれからまた10年、20年かけて、それを目指したいんです。

――ここ最近でも、国連とのSDGsの取り組み、ユヌス・よしもとソーシャルアクション設立など、社会貢献性の高い事業を打ち出されています。その発端が沖縄での取り組みとも思えるのですが。
大崎洋沖縄には多様な伝統芸能があって、欧米など海外でも積極的に公演していますが、国の補助金や援助金なしの純粋な興行としてはなかなか成立しないのが実情です。そこを吉本興業と一緒にやれば、自立できるかもしれないし、自立しないと本当の自由な表現は得られないと思っています。だからこそ、我々は粘って粘ってやっていかなければならないのです。そこに社員・芸人とともに全社をあげて取り組むことは、吉本興業の次の100年に必要なDNAだと思っています。1人ひとりが映画祭を通じていろいろな仕事をして、そこで肌で感じることを少しでも日常の心のなかに入れておかないと、次の100年が違う方向に行ってしまう。社長として社是とか理念を言葉にすることももちろん大事ですが、1人ひとりが実際にこういう仕事をやるなかで、悩んだり考えたり、発見することがいい。沖縄での経験を経て2011年から47都道府県「あなたの街に住みますプロジェクト」を始めたところ、これが各地で好評で、アジア版「住みますプロジェクト」も立ち上げて若い芸人をアジアに行かせました。まったく言葉もしゃべれず、それでもがんばっているうちに地元の人たちにかわいがられて、少しずつ仕事が決まり、現地メディアや大使館から呼ばれるようになる。若い芸人たちのパワーに感心しています。もちろん多くの芸人や社員は、東京の真っ只中で戦わなくてはならない。だけど、同じ家族のなかにそういう芸人たちがいる。これからの吉本興業の形として、そういうのがいいと思うんです。

――社是を掲げるよりも、沖縄をはじめ現地で活動し続けることをDNAとしていると。
大崎洋沖縄をきっかけに日本全国、そしてアジアまで広がりました。その意味では今回、沖縄に沖縄ラフ&ピース専門学校を作った際も、仕事を進めていくなかで不思議な出会いがたくさんありました。幸運が続いただけでもあるんですが、いろいろ手を上げたり、口に出したりしていくことが大事なんだとつくづく感じましたね。

日本から世界へ発信する国産プラットフォームが必要

映画祭中に開催された、沖縄アジアエンタテインメントプラットフォーム構想発表会見の様子

映画祭中に開催された、沖縄アジアエンタテインメントプラットフォーム構想発表会見の様子

―今回の映画祭中に発表されました、沖縄発の国産のエンタテインメントプラットフォームを作るという、沖縄アジアエンタテインメントプラットフォーム構想は、沖縄で10年間続けてこられたなかで生まれた発想なのでしょうか。
大崎洋そうです。1つは沖縄から発信がしたい。沖縄全土をエンタテインメント産業創出の島にするためには、やはりメディアが必要です。お世話になってきた既存の放送局や新聞社と競合することなくメディアが持てれば、とずっと考えていました。今年、専門学校を開校しましたが、そこで沖縄から世界に通用するクリエイターやパフォーマーを育て、2年後には彼らが生み出すコンテンツをアジア、そして世界へ発信できるようにしたい。そのためには、その「出口」が必要ですし、離島も含めていたるところにある公民館、集会所をライブハウスとして活用することなども考えています。もう1つは、近年、たとえば日本の映画やアニメが中国でヒットすることがありますが、これらは自社のメディアプラットフォームを通じていないため、収益は中国サイドにかなり取られてしまいます。20世紀のハリウッドの世界制覇、21世紀の中国の進出、そしてネット上の動画配信におけるNetflixなどのシェア拡大――。それなのに、日本には世界に向けて発信する国産の動画プラットフォームがない。それでは日本は20世紀のように負けてしまいます。いままでは、日本市場だけで十分成立させることができたからそれでよかったけれど、いま人口減少のなかで外を向かなくてはいけない状況で、これまでと同じくアメリカや中国のコントロールのもとでやっていくのか。そうなってしまうと、物づくりをするクリエイターへの適正な配分ができません。芸人への配分割合が低い会社が言うのもなんですが(笑)。吉本興業が世界に通じるプラットフォームが作れるのかと問われれば、正直わからないですが、見よう見まねでチャレンジしようというところです。

――事業の主幹には確たる信念がありつつ、アクションは見よう見まねというのが吉本興業さんらしいですね。映画祭も同じかもしれませんが、それをしっかり力技で(?)形にされています。
大崎洋それはもう、思考を深掘りしていないどころか半分思考停止しているのと、とにかく根気強く継続していくことのみですね。

社会のインフラと同じ“笑顔” どこにでも行けるお笑いの強さ

――持ち出しで10年間継続されてこられたのは、投資としての側面もあるのでしょうか。
大崎洋投資と言ってしまうと、リターンは?となります。本来は事業計画を立てて、株主とそういう議論をしなくてはいけないんですけどね(笑)。もちろん継続をしていくということは、少なくともプラスマイナスゼロにならないといけないので、どこかでは利益を上げなくては、とは考えています。まあ、無理かな(笑)。

――沖縄アジアエンタテインメントプラットフォームが、これからその利益を上げていく事業の位置づけになるのですね。
大崎洋コンテンツは無料にしようとしているのでどうですかね……。沖縄では、たとえば東京の番組取材があっても東京からスタッフが来るため、地元のディレクターもカメラマンもかかわることがなく、ノウハウが蓄積されない。社会のあらゆる局面でその構造があります。時間はかかると思いますが、それを少しでも改善していくところが勝負です。そんな状況で、これだけ単体で儲けられるかというと、当面は持ち出しでも仕方ないとなります。まあ、それでも会社がつぶれなければいいかなと。たとえば大崎個人が100億円稼いだらそれはうれしいですが、スーツを買ったり、おもしろそうな本を大人買いしたりすることくらいで僕は十分。会社もそうじゃないかと思っています。勉強代として映画祭をなんとか続けていけば、その経験から賢い社員がなにか考えるんじゃないですかね。

――SDGsやユヌスさんとの取り組みのほかにも、eスポーツや今回のプラットフォーム構想など、吉本興業さんのフットワークの軽さ、ビジネスへのアグレッシブさは、エンタメシーンでも際立っています。
大崎洋芸人こそ最近は高学歴ですけど、僕の周囲の社員はそんなに高学歴じゃなくて、いろいろ深く考えていないからです(笑)。なんでもやってしまっている、いい感じでまっすぐなんですよ。良くも悪くも大阪の吉本興業100年のDNAです。外から見ると、ものすごく戦略があって、いろいろ会社を作っていると見られるかもしれないですけどね(笑)。

――いろいろな事業展開をされていますが、世間的にはやはり吉本興業さんは伝統ある興行会社。そこのビジネスの根幹は変わらない。
大崎洋そうですね。お笑いのマネージメント、エージェント会社であり、それが本業中の本業。そこは中核として未来永劫続けつつ、新しい事業展開をするために、まず水平事業展開としてスポーツ、eスポーツのマネージメントやエージェント、アート、音楽、漫画、ゲームなどに広げる。いまチャレンジしなくてはならない事業範囲です。さらに、時代とともにお笑いに求められること、やれること、立ち位置も変わっていくでしょうし、変わっていかなくてはいけない。でも、それを“笑顔”という言葉に変えると、どこの場にも行けます。ガス、水道、道路などのインフラと同じように、社会のいたるところに笑顔があるようになればいい。そういう意味でお笑いは強い。ただ、広げた事業範囲をどう回収していくのかは手探り状態です。
(取材:椎葉克宏、文:武井保之、写真:高橋良美)

芸人、アーティスト、俳優などオールエンディングの出演した全キャスト

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提供元: コンフィデンス

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