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吉本興業が掲げた“国産プラットフォーム”構想の意義

芸人たちも登場した「沖縄ラフ&ピース専門学校」のワークショップ。地域の子どもたちも大勢参加した

芸人たちも登場した「沖縄ラフ&ピース専門学校」のワークショップ。地域の子どもたちも大勢参加した

 創業106年を超え、次の100年に向かって「地方」「アジア」「デジタル」をキーワードに多彩なプロジェクトをアグレッシブに立ち上げている吉本興業。その次なる一手となる、『沖縄アジアエンタテインメントプラットフォーム(仮)』構想を掘り下げてみたい。

沖縄10年間の取り組みから次のステップへと踏み出す

 同構想が吉本興業の大崎洋CEOから発表されたのは、今年10周年の節目を迎えた『島ぜんぶでおーきな祭 第10回沖縄国際映画祭』会期中の4月21日。これまで10年間、沖縄からアジア、そして世界へのエンタテインメント発信を掲げて取り組んできたなかから生まれた構想であり、近隣アジアからのメディアが集まるこのタイミングで、この地から発表することに意味があった。

 09年にスタートした沖縄国際映画祭は、さまざまな映像コンペティションやワークショップの実施や、離島を含めた沖縄全域において通年でライブやイベントを行うことで、日本だけでなく、距離的に近いアジア各国からも多くのコンテンツが集まり、この10年で沖縄を日本とアジアのコンテンツが集まるハブへと育ててきた。その一方で、沖縄発のエンタテインメント創出のための人材育成に特化した「沖縄ラフ&ピース専門学校」を今年4月に開校。そこから世界に通用する沖縄の人材を育成する。

「沖縄ラフ&ピース専門学校」で開催されたワークショップ。地域の子どもたちも大勢参加した

「沖縄ラフ&ピース専門学校」で開催されたワークショップ。地域の子どもたちも大勢参加した

 こうして、コンテンツが集まり、かつ新たに生み出すための仕組みがこれまでの取り組みから形になり、実を結び始めたところで、次のステップへと踏み出すのが、それを世界へ発信するためのメディアとなる『沖縄アジアエンタテインメントプラットフォーム(仮)』設立だ。

 そのコンセプトは、まずテーマとして、教育・観光・地域課題・健康・スポーツをメインとし、それらを映像、漫画・アニメ、AR・VR、ゲーム、SNS、ライブといった表現方法でコンテンツ化。プラットフォームから発信することで、定額課金、個別課金、投げ銭、広告、ファンディングなどによるマネタイズを図るビジネスモデルになる。これらのコンテンツは、吉本興業が芸人をはじめ専門学校で育成中のクリエイターやパフォーマーも含めた人材を供給し、自社で制作しながらプラットフォームを運営していく。

コンテンツホルダーのための「データの取得」「適正配分へ」

『沖縄アジアエンタテインメントプラットフォーム(仮)』構想発表会見に出席した登壇者。左端は吉本興業の大崎洋CEO

『沖縄アジアエンタテインメントプラットフォーム(仮)』構想発表会見に出席した登壇者。左端は吉本興業の大崎洋CEO

 吉本興業が目指すのは、NetflixやHulu、Amazonビデオなど外資の動画配信サービスが年々シェアを拡大し、一方で、中国では大手メディア企業がアニメやゲームを中心に日本コンテンツを活用し巨大市場で利益を上げているなか、日本が主導権を握る国産のプラットフォームで世界に勝負を仕掛けることだ。大崎氏は「ここで勝たなければ、日本が自国の優れたコンテンツを他国にコントロールされてしまうことになる」と会見で語った。

 プラットフォームの役割には、ユーザーに向けたコンテンツの発信だけでなく、世界のあらゆる場所での視聴数、視聴者層といった詳細データの取得がある。それが次のコンテンツ制作への貴重な資料になる。ところが、国産のプラットフォームでないとそれがままならないことも多い。また、世界中での売上からのコンテンツホルダーへの適正な収益配分の面でも同様だ。ブラックボックス化されたなかで、分配された収益を得られればいいのか。それとも、そこをしっかりと握ることで、未来のエンタテインメント産業の振興、発展に繋げるのか。まさにそこが、吉本興業の次の100年へのビジョンのなかで、いま踏み出すべき一歩だったのだろう。

 これまでにも、映画やテレビ番組などの映像コンテンツを国内向けに配信する日本のサービスはあるが、上述のようなエンタテインメントに限らず幅広いテーマをコンテンツ化し、世界に向けて発信するプラットフォームとしてのメディアは初めてのものになる。それは、既存のテレビや動画配信サービスなどの放送、通信メディアと競合することなく、むしろ協業する部分もありながら、日本コンテンツの世界発信、さらには発展に寄与していくことだろう。

 吉本興業では、そのための新会社を今年6月に設立。プラットフォームは早ければ夏以降にローンチ予定。自社以外のコンテンツホルダーやクリエイターなどとのシーンの活性化に向けた協業も幅広く想定している。日本エンタテインメントシーンにとって意義のある動きになるであろう今後に注目したい。
(文:編集部・武井保之)

提供元: コンフィデンス

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