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“イントロからサビまで”を演出 エンタメ企業×研究者×歴史系YouTuberが挑む「歴史×地域PR」の最前線

 急速な少子高齢化および東京圏への人口流入により、地方の衰退が大きな問題となっている。地域活性化において「何を軸に人を呼び込むか」は長年にわたる課題だ。そのなかで近年、改めて注目を集めているのが“歴史”という、いわば資源。そこに目を付けたのが、1966年の設立以来、常に時代性のあるエンターテインメント事業を展開し、数々のヒットコンテンツを生み出してきたポニーキャニオンだ。同社は10年前から地域活性化事業を展開し、昨今歴史コンテンツと映像・SNSを掛け合わせることで、新たな地域PRの形を提示している。その仕掛け人である同社のシニアゼネラルディレクター 村多正俊氏と歴史学者の平山優氏、歴史系YouTuberのミスター武士道氏に、その可能性と現在地を聞いた。

最近発見された戦国期古文書を解読する3人

最近発見された戦国期古文書を解読する3人

人を呼ぶポイントは、地域の「物語性」

 「地域活性化事業を10年ほど続けてきて、はっきりと感じたのは“ストーリーのある事業は強い”ということでした」

 こう語るのは、「エンターテインメントの力で地域を、 ニッポンを元気に!」を合言葉に、ポニーキャニオンで地域活性化事業を担っている村多正俊氏。観光資源そのものも魅力だが、地域の「物語性」が人を引き寄せる鍵になるという実感があると語る。

 「これまでに50案件ほど歴史関連の事業を手がけてきたのですが、確実に効果があると実感しています。最新の知見を有する歴史学者や、動画を通して発信するインフルエンサーを稼働させたイベントは、動員が確実に見込め、その後の再訪にもつながるんです。それはなぜだろうと考えた時、歴史イベントには”物語性“があるからだと思いいたりました」(村多氏)
  • ポニーキャニオン シニアゼネラルディレクター 村多正俊氏

    ポニーキャニオン シニアゼネラルディレクター 村多正俊氏

 なかでも特に大きな起爆剤となるのが、大河ドラマだ。

 「大河ドラマは、ドラマの背景や登場人物などを企画展示する“大河ドラマ館”を、作品の舞台となるご当地に設けます。ドラマの舞台となる地域は複数あります。たとえば、今年の大河ドラマ『豊臣兄弟!』は、奈良県大和郡山市と滋賀県長浜市、そして愛知県名古屋市に“大河ドラマ館”をオープンしています。その“大河ドラマ館”目当てにご当地を訪ねた人は、歴史上の人物が拠点とした城跡やその人が作った城下町も散策するわけです。つまり、大河ドラマは“人が動く前提”がすでにあるコンテンツなんですよね。広域的な波及効果が期待できます」(村多氏)

 とりわけ戦国〜織豊期(しょくほうき)は人気が高く、ご当地の来訪者数の伸びも顕著だ。2023年に放送された大河ドラマ『どうする家康』では、ドラマの舞台となった静岡県への経済効果が約408億円(しんきん経済研究所)という試算もある。
 「まず、織田信長や豊臣秀吉は歴史のヒーローとして多くの人たちに刷り込まれているところがあると思います。それも歴代大河ドラマはもちろん、司馬遼太郎先生や新田次郎先生など歴史小説の影響も大きかったのでしょう。しかも、自治体側も一度大河ドラマの舞台となって『聖地巡礼』する観光客が増えるという成功体験を得ると、“また呼びたい”という意識が強くなる。大河ドラマは単なる放送コンテンツを超えた、強力な“地域カンフル剤”なんです」(村多氏)

 こうした背景のもと、村多氏は、歴史学者で大河ドラマの歴史考証を担当してきた平山優氏や、独学で歴史解説や情報発信をしてきた歴史系YouTuberのミスター武士道氏、戎光祥出版等の歴史専門メディアと連携し、企画・制作・発信を一体化した体制を構築。同社がエンターテインメント事業を展開する中で培ってきたコンテンツの制作力やネットワーク、そして情報発信力と専門的な知見を掛け合わせることで、ワンストップで地域の課題解決にアプローチできるようになった、と自信を見せる。

 「大河ドラマは、一年かけて一人の人物と時代を描きます。そのスケールは他にはありません。深くも広くも表現できる、非常に優れたコンテンツです。僕は大河ドラマ「どうする家康(2023年)」や「真田丸(2016年)」の時代考証を担当しているので、大河ドラマが地域にもたらす恩恵を実感しています」(平山氏)

 「大河ドラマは、楽しみながら歴史を学べるコンテンツです。ただの娯楽ではなく、知識を得ている実感がある。“教養性”も大きな魅力だと思います」(ミスター武士道氏)

“何もない”地域はない

  • 歴史学者 平山優氏

    歴史学者 平山優氏

 歴史を軸にした地域活性化について、平山氏は次のように語る。

 「地域を盛り上げるコンテンツの核は、歴史と食の二つ。ところが、さまざまな地域を訪れるたびに、地元のみなさんが口をそろえて“うちには何もない”と言うんです。僕から見たら、昔から口づてで受け継がれてきた昔話や注目されなくなってしまった史跡が数多く眠っていてネタの宝庫なのですが、地元の方は身近すぎて気づかないんですよね。しかも、古代史もあれば鎌倉時代、室町時代、戦国時代、江戸時代、近代と、いくらでも切り口はあります」

 そんな伝承や史跡を拾い上げ、ひとつの物語として再構成することが重要だと訴える。

 「歴史は“時間”と“物語”を結びつけたもの。人物と地域をどう結び、どう伝えるか。そこが勝負所だと感じています」(平山氏)
 平山氏は、歴史学者として研究はもちろん、フィールドワークも大事にしている。現地を歩くことで、初めて見えてくる導線があるという。

 「どう案内すれば伝わるのか、どこに立てば風景が生きるのか。現場で得た感覚をもとに、自治体や観光協会と一緒に形にしていきます」(平山氏)

 大河ドラマの舞台となることで、地域に眠っていた資料が再発見されるケースも多い。

 「全国から注目が集まると、“うちにも何かあったはずだ”と探し始めるし、博物館も“そういえば収蔵庫の中に何かあったような気がするな”と調べるわけです。そこで、未発表の資料が見つかることも多々あります」(平山氏)

 こうした動きは研究の進展だけでなく、地域の誇りの醸成にもつながる。そして何より重要なのは、住民自身の意識の変化だ。

 「当たり前だと思っていた風景に意味があると知ったとき、人は初めて価値に気づく。そこから“自分が語り手になる”という意識が生まれるんです」(平山氏)

大和郡山市 豊臣秀長副読本 大和大納言秀長さん〜もう一人の天下人〜

大和郡山市 豊臣秀長副読本 大和大納言秀長さん〜もう一人の天下人〜

 平山氏は、同プロジェクトにおいて市民ガイドの育成や、小中学生向けの副読本制作など、教育面にも力を入れている。

 「子どもが興味を持てば、親も動く。地域全体を巻き込む流れが生まれます。地域活性化はいわば“種まき”なんですよね。やれることを積み重ねていけばどんな芽が出るかはわからないけれども、必ず芽が出ます」(平山氏)

 その種が芽吹くとき、地域は単なる観光地ではなく、“物語を持つ場所”として人を惹きつける存在になるのだ。

小田原市観光協会『戦国北条フェスティバル』より(2025)

小田原市観光協会『戦国北条フェスティバル』より(2025)

動画で興味を惹きつけ、リアルイベントで人を呼ぶ

  • YouTuber ミスター武士道氏

    YouTuber ミスター武士道氏

 年間100冊以上の歴史に関する学術書や論文を読み、独学で歴史解説や情報発信をしてきたYouTuberミスター武士道氏もまた、現地に足を運ぶことの重要性を強調する。

 「平山先生がおっしゃったように、僕の故郷・三重県四日市市には城跡があるのに、その価値を知らずに育ちました。通学路のすぐ裏に、采女城(うねめじょう)跡があったんです。でも、『この城にはこんな歴史があるんだよ』と教えてくれる人はいませんでしたし、むしろ『危ないからそこ(城跡)には入っちゃだめよ』と言われていました。大人になって訪れた時に、鎌倉時代に築かれたとされる城で、城を落としたのは織田信長だと知ったんです。『なんてもったいないことになっているんだ!』と気づきました」

 ミスター武士道氏が取り組むYouTubeでの発信は、単なる知識の紹介ではない。現地で得た体験を伴うことで、説得力が増す。

 「本だけではわからないこともありますよね。実際に見て、感じて、それをYouTubeなどのネットメディアを通じて伝えることで届くものがありますし、采女城(うねめじょう)のように埋もれている歴史資源を掘り起こすことは、YouTubeにはもってこいだと思います」(ミスター武士道氏)
 一方で、ネットメディアならではの難しさも痛感していると言う。

 「ネットメディアは専門家と一般の人が同じ土俵で議論できる場となっています。僕がアップした動画に対して、にわか知識や曖昧な情報をもとに、攻撃的なコメントが来ることも少なくありません。『学術論文をひとつも書いていないのに、歴史を語るな!』と噛みつかれたこともありました。それが悔しくて、猛勉強して今年4月から慶應義塾大学の文学部に入学したんです。史学科に進んで、戦国時代について研究して、論文を書く予定です!」(ミスター武士道氏)

 ネットメディア上で受ける攻撃に関しては、平山氏も正面から応じる姿勢を崩さない。

 「還暦を過ぎているのですが、血の気が多いんです(笑)。それはさておき、誤った理解には、きちんとした史料と研究に基づいて説明する。それが研究者としての責任だと思っています」

 今年の大河ドラマは、豊臣秀吉の弟・秀長が主人公の『豊臣兄弟!』。秀長に光を当てた取り組みはすでに本格的に始動している。
 「昨年、弊社のコーディネートのもと、平山が大和郡山市の歴史アンバサダーに就任しまして、大河ドラマを見据えたコンテンツ制作やPR事業を複数展開してきました。その展開にミスター武士道にもチームに加わってもらい、よりハイスペックのコンテンツを提供しています」(村多氏)

 その中には、トークイベントの開催に加え、事前の動画配信なども含まれる。ミスター武士道氏が担う動画で興味を喚起し、平山氏が登壇するリアルイベントへとつなげる導線を設計することで、認知から体験までを一貫してプロデュースしている。

 「いわば“イントロからサビまで”を弊社でワンストップのフロウを構築するイメージですね。コンテンツの入り口から盛り上がりのピークまでをトータルで作れるのが、我々の強みだと思っています」(村多氏)

 多層的な仕掛けによって、単発に終わらない持続的な集客と、地域への関心の深化を目指しているポニーキャニオンのサステナブルビジネス。同社が“戦う歴史学者”と“歴史系YouTuber”とともにアグレッシブに手がける取り組みは、これからの地域活性化のひとつのモデルケースとなり得るはずだ。歴史が持つ力を、いかに“今”に接続するか。その挑戦は、まだ始まったばかりである。

取材・文:森中要子

(左より)村多正俊氏、平山優氏、ミスター武士道氏

(左より)村多正俊氏、平山優氏、ミスター武士道氏

【プロフィール】
■村多 正俊
ポニーキャニオン シニアゼネラルディレクター
ふるさと回帰・移住交流推進機構(JOIN-FURUSATO)理事
旧白洲邸 武相荘/(株)こうげい クリエイティブディレクター
京都府舞鶴市 広報アンバサダー
音楽制作ディレクター、プロデューサーとして原盤制作、レーベル運営、アーティストプロモーション、イベント制作、映像制作等を15年にわたり主導。手がけたパッケージは300タイトル以上におよぶ。2015年、それらの経験値をもとにエンタメ業界初の地域、自治体との地域活性化事業をローンチし、現職。それらの知見によった地域プロモーションやSDGsに関する講演、自治体研修講師、大学における講義等を積極的に行っている。

■平山 優
健康科学大学 特任教授/歴史学者
立教大学大学院文学研究科博士前期課程史学専攻(日本史)修了
山梨県埋蔵文化財センター、山梨県史編纂室、山梨県立博物館、山梨県立中央高等学校を経て、山梨大学、放送大学非常勤講師を歴任。現在、健康科学大学特任教授、甲州市文化財審議委員、南アルプス市文化財審議委員等をつとめている。
著書『戦国大名領国の基礎構造』で第24回野口賞受賞(2000年)。『武田信玄』(吉川弘文館)、『山本勘助』(講談社現代新書)などでNHK地域放送文化賞受賞(2007年)。
1988年NHK大河ドラマ『武田信玄』時代考証の資料提供
2016年NHK大河ドラマ『真田丸』時代考証
2021年映画『信虎』武田家考証
2023年NHK大河ドラマ『どうする家康』時代考証を担当。

■ミスター武士道
1990年、三重県四日市市生まれ。独学で歴史解説や情報発信をするYouTuber。2019年に歴史解説チャンネル『戦国BANASHI』を開設。戦国時代を中心に、日本史や大河ドラマ解説などが話題となり、登録者20万人を超える人気チャンネルに。歴史解説のほか、城跡や世界遺産などを巡るロケ動画、専門家との対談などにも力を入れている。

『名護屋城大茶会&出張!お城EXPO』(2025年)より

『名護屋城大茶会&出張!お城EXPO』(2025年)より

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