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なぜ「女子の本音」を逃さないのか? 『乾燥さん』『サボリーノ』開発者が大切にする”自分ごと”の視点
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(株)スタイリングライフ・ホールディングス BCLカンパニー カンパニーエグゼクティブ 兼 企画本部 本部長 齊藤久美子さん
目次
PROFILE カンパニーエグゼクティブ 兼 企画本部 本部長 齊藤久美子さん
2012年BCL入社 。自身の生活実感を起点に『サボリーノ』や『乾燥さん』など数々のヒット商品をプロデュース 。2児の母として育児と両立しながら、25年に役員へ就任 。現在は「腸活」など新事業開発を牽引している 。
「女子の本音」をがっちり掴むヒットプランナーの着眼点
齊藤久美子さんが企画に携わってきた商品(一部)
朝は1分1秒でも寝ていたい。スキンケアもメイクもできればサボりたい──。コスメ会社としては、できれば目を瞑りたい女性たちの本音。しかしそれは齊藤さんにとっても、間違いなく「自分ごと」だった。
乾燥肌に徹底的に寄り添ったスキンケアブランド『乾燥さん』も、齊藤さんが開発した大ヒット商品の1つだ。
「コロナ禍のマスク生活で肌の乾燥に悩みながらも、市場に出回る無数の化粧下地の中から“本当に保湿力のある商品”を選ぶのに迷ってしまったんです。商品の性能は大前提ですが、さらに『保湿ならこれだよ』『乾燥に悩んだら思い出してね』といった“人に思い出してもらえる”というユーザーコミュニケーションも大切にしたくて開発したのが『乾燥さん』でした」
ヒットの要因には絶妙なネーミングも欠かせない。『乾燥さん』もさることながら、『サボリーノ』にもユーザーの複雑な思いへの細やかな配慮があった。
「スキンケアをサボることに罪悪感を抱く女性もいるかもしれません。だけどサボるのは決してマイナスではなく、"時短"や"行程の効率化”だという背中を押す思いを込めて、上向きなトーンの『リーノ』を付けました。発売から10年経った今、サボるという感覚が少しでもポジティブなものになっていたとしたら、こんなに嬉しいことはないです」
「役職にはこだわりがなかった」彼女の、会社とキャリアを動かした”舞台裏”
役員への昇進によって“人に任せる“ということも学んだという
「集まった時点ではほぼ初対面の5人でしたが、当時はみんな独身で同世代。会社へのちょっとした文句など(笑)、共通して盛り上がれる話題も多かっただけにすぐに打ち解けることができました。1つのテーマから話題がどんどん展開していく女性特有のコミュニケーションも、男性からは無駄話のように聞こえていたかもしれませんが、サボリーノの開発には奏功したように思います。当時は仕事終わりにチームで飲みに行くことも多かったですね」
同社では初の試みだった部署横断型プロジェクトも、サボリーノの成功をきっかけに会社のカルチャーとして定着するなど、開発チームが与えた影響は大きかった。さらに昨年、齊藤さんは同社で役員にも抜擢される。
「正直、役職にはあまりこだわりがあるほうではなかったのですが、むしろそのポジションを得た時にできる仕事の範囲や内容が広がることに対してはモチベーションを感じていました」
「私自身、やはり商品開発が好きですね。これまで外側をキレイにするコスメを手掛けてきたので、今度は『腸活』で体の内側からキレイにする納得の商品を生み出したいと考えています」
一方、役員としては組織を采配するという役割も担うことになったが、「正直、そちらはとても苦手なんです」と戸惑いを明かす。
役員就任から約1年、「1人1人がストレスなく能力を活かせる環境を作りたい」と齊藤さんは現在のポジションと自身の成長への抱負を語っている。
ヒット商品もキャリアも、「自分自身を観察すること」から生まれる
齊藤久美子さんのキャリア年表 ※Geminiで作成
「本当の意味でサボリーノのありがたみを実感したのは出産してからでした。開発中は仕事で忙しかったとは言え、子どもができるとこんなに朝バタバタするとは……。今ではもう手放せません。仕事の目線から改めて消費者の目線(=自分ごと)に立ち戻ることができたのも、プランナーとしての成長につながったのではないかと思います」
社会的なジェンダーロール差はなくなりつつあるが、それでも女性のライフステージとキャリアの関係は男性以上に密接だ。それだけに「働き方の正解」に迷う女性は多い。仕事と育児を両立する女性として、産休や育休、時短勤務などさまざまな働き方を経験してきた齊藤さんは今、どのようなキャリア観に立っているのだろうか。
「私が仕事をしていく上で大切にしているのは、『モヤモヤしたらモチベーションの動く方向へ進む』ことです。最近のモヤモヤ期は2024年頃のこと。『乾燥さん』を生み出したことでヒットプランナーになりたいという目標を達成してしまい、その先の自分を描けなくなってしまったんです。それを打破するために飛び込んだのが、これまで手掛けたことのないジャンルの商品開発でした」
モヤモヤの原因やモチベーションの動く方向。それは人には教えてもらえない。自分自身の内面を見つめなければ見えてこないものだ。
世間一般のセオリーである「昇進=キャリアアップ」という価値観は「もともとなかった」という齊藤さん。だからこそ自身のモチベーションに忠実に商品開発に邁進することもできたのだろう。また出産や育児でキャリアが一時中断することにも「自分の人生だから躊躇はなかった」と振り返る。
「子育てをしながら仕事に邁進しようとすると、どうしても『お子さんがいるから』とか『時短だから』といった枕詞がつきがちですよね。それもモヤモヤはしますが、反発して何かを諦めるよりは自分を観察してモチベーションが動く方向を探った方が建設的なのかなと思います。自分の信じるキャリアを進んでいけば、きっと満足できるゴールに辿り着くはず。私はいかにもバリキャリなタイプではないですが、後進の女性たちに『そんなキャリアの築き方もあるんだな』と知ってもらえたら、役員のポジションをいただいた意味もあったのかなと思いますね」