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電子コミック戦国時代、「どこも同じ」大量生産に無料利用…“スナックコンテンツ化”にどう挑む? コミックシーモアの20年

  • ケータイ時代の電子コミックのイメージ(『北斗の拳』)

    ケータイ時代の電子コミックのイメージ(『北斗の拳』)

 日本のマンガ市場が、4年連続で過去最高を更新することがわかった。その7割を占める電子コミックが、今や確実にマンガ業界の成長エンジンとなっている。サービスも国産から外国産まで無数に存在し、今まさに電子コミック戦国時代。競争の激化は電子コミック発のヒット作を次々と生み出す一方で、作品の陳腐化や無課金利用の増加といった懸念をはらむのも事実だ。電子コミック配信サービスを世界に先駆けて展開し、今年で20周年を迎えるコミックシーモアに電子コミックの未来について聞いた。

ケータイからスマホへ…、あらゆる業界が参入する電子コミック市場に「どこも同じ」課題感

  • 当時の「コミックi」のケータイ画面(写真提供:コミックシーモア)

    当時の「コミックi」のケータイ画面(写真提供:コミックシーモア)

 個人所有のデバイスでマンガを読むという、今や当たり前のライフスタイルを開拓したコミックシーモアが今年で20周年を迎えた。前身であるコミックiが世界に先駆けて電子コミック配信サービスを開始したのは、スマホが登場する前のケータイ時代のこと。「ガラケーの小さい画面でどうやってマンガを読むの?」といぶかしむ人もいるかもしれないが、そこにはマンガ愛に溢れる工夫があった。

 「コミックiではガラケーの画面に合わせて、コマを切り分けて1コマずつマンガを見せる形で配信していました。とはいえ、ただマンガのコマをカットしていたのではなく、コミックシーモア内に専門の職人がいて、1コマずつでもマンガの面白さを損ねないよう、むしろ1コマずつだからこそ楽しめるようこだわりながら、手作業でコマを切り分けていました。デジタル事業ながら、現場では極めてアナログな作業をしていましたね」(コミックシーモア・多田知子さん)

 そうしたマンガ愛は読者にも伝わり、サービス開始から2年後には5000万ダウンロード、5年後には5億ダウンロードを達成する。コミックiの公式サイトは、iモードは82ヵ月連続1位、EZwebは302週連続1位と、名実ともに他の追随を許さぬサービスとして隆盛を極めた。

 「ところが、時代はやがてケータイからスマホにシフト。それまで大手3キャリアが抑えていたコンテンツ配信もオープンな世界になり、電子コミック配信サービスにもあらゆる業界が参入するようになりました。一方、それまでコミックiではコマの切り分けにこだわっていた分、スマホ対応にやや出遅れたのも事実です。ただそれ以上に課題に感じていたのが、『どこの電子コミック配信サービスにも同じ作品ばかり並んでいる』ということでした」(コミックシーモア・奥田茂さん)

『家政夫のナギサさん』ドラマ化で大ヒット、なぜメディア化される?

 そもそもコミックシーモアは電子書店であり、出版社から配信許諾を得たマンガを電子コミックとして販売するのがその業態だ。これは多くの電子コミック配信サービスも同様であり、同じ作品が並ぶのは必然となる。

 「あまたのサービスから選んでいただくためには、独自性を打ち出す必要がある。そうした考えから力を入れているようになったのがオリジナルコミックの制作です。つまり、書店に加えて、オリジナルコミックを電子で創出する機能も持つようになったわけです」(奥田さん)

 2011年にはオリジナルのデジタルコミック誌『オヤジズム』を立ち上げ。同レーベルで連載された『家政夫のナギサさん』がドラマ化され大ヒットするなど、一大ムーブメントを起こした。その後もオリジナルの制作と共にメディアミックスにもたゆまず力を入れており、2023年には実に13作品がメディア化。これは電子コミック業界でもトップクラスだ。

 「コミックシーモアはユーザーの7割が女性であり、オリジナル作品も女性に喜ばれる作品がメイン。それも電子コミックらしく、エッジが効きつつも最後はハッピーな気分になれる作風にこだわっています。女性向け風俗を描いた『買われた男』やBLの『体感予報』など、一般的にはセクシャルさを想起させるテーマも、しっかりと読み応えのあるストーリー性にこだわってきたことがメディア化にも繋がっているのではないかと自負しています」(多田さん)
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