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ドラッグストア業界4年連続No.1のウエルシア、PB注力の背景と戦略 「こだわりはネーミング」“改名”で売上5倍のヒット商品も
PB=NBの廉価版ではなく、こだわりの“尖った商品”を開発 年間100品、3日に1品
「2000年代前半までは、“NB(ナショナルブランド)の廉価版”というイメージでしたが、最近では、企業の考えや目的を表現するための商品がPBになってきています。お客様のニーズをしっかり捉え、そこに合った商品を作るのがPBのトレンドだと感じています。
NBは”万人受け”というか、誰もが使っても満足のいく商品を狙う必要がありますが、PBはロット数をコントロールできるので、特定のニーズに特化し、中身にこだわった”尖った商品”が開発しやすい長所があります」(ウエルシア薬局 商品企画部 部長・岡本貴さん/以下同)
「からだWelcia・くらしWelcia」の品目数は280品。初年度の68品から、年間100品ほど増やしており、つまり3日に1品というハイペースで商品が生み出されている。開発スタッフは10名。彼らが1人10件ほどの案件を同時進行で手掛けながら、品質にはとことんこだわり、中には提案から発売まで、9ヵ月かけた商品もあるという。
「我々、ネーミングにかける思いは本当に強いんです。その商品がどんな物かをネーミングで伝えようとしているので、長い名前になりますが、そこが良い所かなと思っています。PB人気商品の『とまらないアーモンド小魚』は、元々は普通に『小魚アーモンド』といった商品名でしたが、改名後、一時、生産が追いつかなくなったほど、売上が約5倍成長しました」
ユーザーの声を反映した商品開発で独自ニーズを吸い上げ、陳列は必ずNBの隣に配置
「やはりNBありきのPBだと思っていて、必ずお客様が(NBとPBを)比較して購入できる環境にすべきだと思っています。すべてがPBだと偏った商品ばかりになってしまい、逆にお客様が選びにくくなりますので。NBメーカーさんを立てつつ、そこに『こういう商品もありますよ』とPBを打ち出すのがベストかなと。売上の9割はNBですから、メーカーさんとお互いがウィンウィンになるように、常に調整しながら取り組んでいます」
「先述の『とまらないアーモンド小魚』は元々カップ入りでしたが、『大容量がほしい』というお声を受けて、大容量の袋入りを出したところ、そちらの方が売れました。最近では『オーガニックで、優しいリップがほしい』『柔らかいものがほしい』といった意見を汲み取って、『色も香りも楽しめるオーガニックなカラーリップ』を開発した結果、コスメ批評誌『LDK the Beauty』(2024年1月号)で2023年ベストコスメを受賞するなど、非常に良い評価をいただけました」
「ブランド初となる新商品の発表会も計画していますし、SNSでの告知も強化していきます。もう店頭だけで売れる時代ではなく、やはりSNSでの拡散は無視できませんから。ウエルシアのメインのお客様は、30〜50代の女性やファミリー層で、ここは大きくぶれませんが、さらに、Z世代・子育て世代・団塊世代に向けて、商品開発や販促を強化していこうと思います」
熾烈を極めるドラッグストア業界…4年連続1位の理由は? 今後は「冷凍食品」もPBで
「弊社モデルとして『調剤併設』『深夜営業』『介護』『カウンセリング』という大きな方針がありますが、そこをずっと変わらず取り組んでいるので、お客様から支持されているのかなと受け止めています。今後も頑張って継続したいです。また、ウエルシアポイントを使った”ウエル活”も、お店に来ていただく大きな理由になっていると思います。それと、他のドラッグストアに比べて品揃え豊富な点も、ウエルシアの特徴だと思います。特にドラッグストアの中では食品構成比が高く、グロサリー(加工食品)やお菓子、さらに日用雑貨、化粧品などの品揃えも多いと思います」
しかし、スーパーやコンビニ、ECでも薬や日用品が手軽に買えるようになった今、「ヘルス&ウエルネスに特化することをぶらさずに、かつ色々な新しい取り組みをやっていかないと生き残れない」と岡本さん。
今後は「からだWelcia」で冷凍食品カテゴリーも発売予定で、「地域ナンバーワン健康ステーション」になることを掲げている。「上記の4大モデルをしっかり続けていくこと、またPBを強化して、お客様の細分化したニーズにしっかりと応える商品を提供して行くことが我々の生き残る道だと考えます。一つでも欠けたらダメですから、総合的にしっかり取り組んでいきたいと思います」
(取材・文=水野幸則)