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売り場からベンダーへ? 変わりゆくドラッグストア業界、“潜在ニーズ”に応える「マツキヨPB」ヒットの舞台裏
マツキヨPBが、ココカラファインとの統合の決め手に? 各方面で評される高品質
1990年代からPB商品の開発をスタートさせているマツモトキヨシ(以下、マツキヨ)も、当初は価格訴求が中心だったが、時代の流れに沿って、2006年には「高付加価値」も意識した『MKカスタマー』を発足させ、早々に本格的なPB展開に着手していた。
また、同社社員の管理栄養士や薬剤師などが監修し、より専門性の高い商品を扱う『matsukiyo LAB』ブランド、さらに高付加価値の頂点に位置する「独立型ブランド」を展開。こうしたPB商品とは別に、メーカーとの共同開発商品を「オリジナル商品」と定義し、現在、PB商品とオリジナル商品を合わせて、約1800の商品を販売している。
2021年にはココカラファインと経営統合し、マツキヨココカラ&カンパニーとして新スタートしたが、「ココカラファインがマツモトキヨシのPB商品に魅力を感じて『ぜひ扱いたい』と言ってくれた。それが統合を決める要素の一つになりました」と広報担当は明かす。PB商品が経営統合の要素の一つになるのはドラッグストア業界では稀なケースだそうだが、これはマツキヨPBの品質がいかに高く評価されているかを示す一つのエピソードと言えるだろう。
「NBとカニバる商品は作らない」ビッグデータから炙り出す独自のマーケティング戦略
「その間、品目数は微増で、劇的に増えているわけではありません。なぜなら数を目標にすると、一つひとつの商品作りが雑になることもあります。それは本質ではない。品目数が上がるのは結果論であり、あくまで品質の追求を第一に考えています」
「NBは商品認知のために広告に巨大投資をするので、なかなか失敗できないところがあります。当社はオウンドメディアも持っていますので、コストが抑えられます。またミニマムロットにして、場合によっては店舗数も絞りながらテスト的に販売することもできます」
たとえば、NBが参入するにはオーガニックシャンプーの市場規模はまだ小さかった際に、コアヒットを呼んだPB成功例が初代『アルジェラン』だ。ターゲットは広く、ロット数を多くせざるを得ないNBに対し、膨大な顧客データから潜在的ニーズを割り出し、時には挑戦的な商品開発もスピーディにできるのがPBならではの強みだ。
一つは、アプリ会員、カード会員、LINE、店舗、ECなど、マツキヨが90年以上の歴史で培ってきた1億3300万もの消費者との接点から得られるビッグデータ分析だ。全国の店舗から各商品の見込み客・売上が予測できるのは、メーカー側にとっても大きな利点となる。
もう一つの理由は、マツキヨココカラがNBのユーザーを奪うようなマーケティングをしていないからだ。
「NB商品とのカニバリが大きくなるような商品作りを避けるように意識しています。あくまでNB商品で捉えられていないニーズをビッグデータから割り出し、そのコアニーズに向けてPB商品を開発しています。そうしないと、NBのユーザーがPBにスライドしただけでは、売り場全体の売上アップにはなりませんから。NBとは異なる新たな価値をPBで生み出すことで、ユーザー、メーカー、売り場3者にとって、良い商品作りに繋がると考えています」
PB初のパーソナライズヘアケアブランドがヒット「客層は想定通り、売上は想定以上」
同商品は都内を中心とした一部のリアル店舗でも展開しており、実際に商品や香りを手に取りながら、その場でオンライン診断、購入までをスタッフがサポートすることもできる。オンライン診断+EC販売のみの商品だが、店舗経由で購入すると、販促を行った各店舗の売上に計上される。これは小売業界でまだ少ない試みである。
約35万通りの開発実績から厳選した処方を用いた『MQURE』には、自社のビッグデータやダイレクトマーケティングも活用している。
「『こういうお客様が購入するだろう』というターゲット層をビックデータから導き出し、その層に適したプロモーションを展開しています。ターゲットは3つ。『MQURE Scalp Care&Moist』は肌への意識が高い層、『MQURE Deep Moist&Repair』はSNSなど情報に敏感で、情報感度が高い層、『MQURE for U』は美容に対する追求度合いが高い層のお客様を狙っています」
「グループ全体の売上高は、2026年3月末に1.5兆円を目標にしています。現在、ドラッグストアの市場規模は約8.5兆円と言われていますが、2026年には他市場からのシェア獲得で15兆円まで伸びると想定しており、その10%のシェアを目指しております。その中で、PB売上比率の目標は15%。アジアNo.1の『美と健康』に特化した店を目指すべく、そのカギとなるPB商品開発に今後もますます注力していきたいです」
(取材・文=水野幸則)