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ORICON NEWS
『ブラックサンダー』30周年、当初は全く売れず1年で終売…奇跡の復活劇を遂げるも「バレンタイン特需は今もない」
コンビニに置いてもらえず…「大学生協」に着目、英語→カタカナにパケ変更も契機に
「『チョコナッツスリー』はナッツとパフとチョコという組み合わせでしたが、『ブラックサンダー』はプレーンビスケットとココアクッキーという異なる2種類の食感を組み合わせています。プレーンビスケットをゴロッと入れる成型の技術や、それを高速で作る技術も必要でしたが、何度も試作を重ねて、“ザクザク食感”を実現しました」(有楽製菓・嶋田真亜子さん/以下同)
「ところが、営業担当が『九州地区では売れ行きが良いので、もうちょっと売らせてほしい』と会社に熱く掛け合ったそうです。会社も『そこまで言うなら、残っている包装材の分だけでも売ってみようか』という流れで、1996年に再販になりました」
かくして復活を遂げるも、「再販して10年くらいは、そんなに売上が伸びたわけでもなかった」と、しばらくは低迷を続けていた。そんな『ブラックサンダー』がヒット商品への道を歩み始めるのは、2000年代中頃のことだ。
2005年に『生協の白石さん』のブログで取り上げられ、さらに認知度を上げると、徐々に全国のコンビニでも置いてもらえるようになった。
「また、当初はパッケージの商品名が英語表記だったので、お子さんには伝わりにくかったのかもしれません。2003年にカタカナ表記に変更したことで、幅広い世代の方に認知していただけたように思います」
30年で値上げは一度きり、「男性も手に取りやすいチョコ菓子」独自ニーズを確立
しかし、2020年以降は、コロナ禍で在宅勤務が定着し、仕事の合間のコンビニ利用は激減。また、おうち時間を楽しみたいというプチ贅沢志向が強まった。コンビニやスーパーでも高価格帯の菓子やスイーツが売れるようになった中、「30円」の『ブラックサンダー』はどう闘ったのだろうか。
「原材料の価格が常に上昇し続けていましたが、その中でも何とか30円で提供したいという思いがありました。設備投資をして生産性を向上させたり、包装を見直したり、原料の内製化を進めてコストダウンを図るなどしてきましたが、やはり努力でカバーできないほどの物価高騰があり、初めての値上げに踏み切りました。再度サイズを縮小することも考えましたが、これ以上小さくすると、『ブラックサンダー』としてのちょうど良いボリューム感が得られないため、苦渋の決断でした」
プロモーション注力し続け10年…『ブラックサンダー』だけバレンタイン商機なし?
「チョコメーカーにとってバレンタインは絶好の商機なのに、『有楽製菓は何もやっていないよね』という議論がありまして、そこから取り組みを始めたのですが…、今のところ、バレンタインに突出して売上が上がるほどには至っておりません。義理チョコの在り方も変わってきているので、2021年からは自由に楽しむバレンタインを伝える施策にシフトしています」
「“あげる”にちなんで、揚げたてのブラックサンダーの天ぷらを1日300名様限定で販売します。そのレシピや動画は特設サイトでも公開します。また、“同じ血液型の人”、“おなかが空いてそうな人”など、誰にあげたらいいかをご提案する50種類のくじが入ったガチャもご用意しています」
(取材・文=水野幸則)